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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十五章 王都の冒険者

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モンスター

「ん。岩モグラの気配がします」

 オンが夕食後、談話室でそう言った。

「どっち方面かわかるか? 今いるクランハウスはここだ」

 俺は壁に貼ってある地図まで歩いて行き、指差した。オンはその後ろをついてきて、山脈をなぞった。

「この一帯ですね」


 あっという間に人だかりができた。

「岩モグラの討伐ランクって、いくつだ?」

「Aランクでしょ。爪が凶暴だし、すぐに地下に潜られるから土の魔法使いが必要だし」

「この国で出るのは珍しくないか?」

 身近にいないモンスターなのに、皆よく知っているなと感心する。このクランは意識が高い人が多いよな。

「この山脈、レスタール王国と獣人国にかかってるじゃん」

「獣人国から逃げてこっちに来ようとしてるってこと?」

 その場合、さらに高ランクのモンスターが背後にいるかもしれない。


「妖精族の動物使いの支配下にいますね。このクランがターゲットの可能性を感じます」

 オンは口調を変えずに、そう言った。


 そ、それは一大事だぞ?

 狙いはフォンか?

「バスラさんに報告しないと!」

 そう言って、一人の冒険者が談話室を飛び出していった。


「岩モグラはそんなに早く動けませんけど」

 もう見えなくなった男に向けるように、オンは入り口を見ながらのんびりと呟いた。



 走って出ていった男が戻ってきて、数人を呼び出した。急遽会議を開くという。

 もちろんオンが指名され、アーデンと数人のAランク冒険者。そして、なぜか俺も呼ばれた。

 ルナが微かに眉をひそめている。心配しないでというつもりで肩を叩いたが、あまり効果はなかったかもしれない。

「あの、フォンがターゲットなら、同じパーティーのメンバーとしてルナとサァラも出席できませんか?」

 緊迫した雰囲気を乱すように、俺は声を上げた。

「……それも、そうね。たぶん、いいと思うわ」

 Aランクの冒険者がそう言って、サァラに手を差し出した。心細そうに眉を寄せていたサァラが手を乗せる。

 手を繋いで行くのかと思いきや、ぐいっと引っ張って、サァラを横抱きにした。


「ぎにゃー、何するんにゃ!」

 サァラが怒る。

「ふわふわ、もふもふ。会議室まで運んであげるから」

 サァラに頬ずりしそうな勢いだ。

 ルナが冒険者の後ろに回り、膝裏を軽く蹴る。カクンと体勢を崩したところ、俺がサァラの腕を引っ張って、奪還する。

 膝をついたAランク冒険者に、ルナが冷たい視線を向けた。

「女性同士でも同意がない濃厚接触は許されませんよ」

「やだ、ちょっとした冗談なのに」

 そう言い訳する女性に向けて、サァラが断言した。

「あたいはアンタなんか大嫌いにゃ」


「そ、そんなぁ」

 と手を伸ばす冒険者を無視して、俺たちは会議室に急いだ。


 アーデンがぼそっと呟いた。

「高ランク冒険者は頭のネジが飛んでいる奴が多いからな」

 ――これから、高ランク冒険者たちを集めた会議ですよね?


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