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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十四章 クランでの生活

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デッドフロッグの後始末

 眠ったデッドフロッグは、攻撃の練習に使わせてもらった。

 まず、デッドフロッグの足に縄を付けて、小山から引きずり下ろす。七体のデッドフロッグは間隔を開けて転がし、甲殻類や他のモンスターは小山のままにしておく。


「おい、トーマ。それで、どうするんだ?」

 アーデンが仁王立ちで、ニヤニヤとしている。


「一人一体、好きなように攻撃してみてください。

 例えば、サァラは蹴りの手応えが薄かっただろ? 足場にした盾の材質や大きさの問題か、狙う場所を変えたらいいのか試してみてくれ。

 ルナは半月刀で斬るのと突き刺すのとどっちがいいか。デッドフロッグ相手なら槍を使った方がいい……とか」

 一番厄介な粘膜が乾いているから、本当の練習にはならない。けれど、このぶにゃっとした質感に慣れておくのはいいと思う。


「僕の分もあるのか」

 エドガーが目を大きく開けた。

「ボウガンの練習にちょうどいいと思いませんか? 目印をつけたら、精度をあげる練習にもなりますよ。どれくらいで体液が噴き出すか、体感しておくのも役に立ちます」


「あたしが二体でしょうか?」

 とオンが尋ねた。

「えーと、護衛の人も体を動かしたいだろうから、一体です」

 正直に言えばオンにはやらせたくないけど、そうも言っていられないからな。


「ルナとサァラは終わったら、警戒を護衛の人と交替してくれるか?」

 少し離れたところにいる二人に声をかけたら、二人とも手をあげて応えてくれた。どのデッドフロッグにするか決めるために、見比べている最中だった。


「なるほどなぁ」

 アーデンが腕組みを解き、頭をかいた。

「いやさぁ、ガルドたちがお前と組んでから飛躍的に強くなったじゃないか。年齢的に開花したのかと思ったが、実力の底上げをしてたんだなって」

 これは褒められているのだろうか。

「まあ、十代の後半でしたから、伸び盛りですよね」

 割と普通のことだろう。


「俺が知っている『冒険者』は、雑にデッドフロッグの息の根を止めて、さっさと帰還する。

 次に活かす反省なんかしないで、一刻も早く酒を飲みたいって連中だ」

 あ~、なるほど。そういうことね。

「依頼達成すればいいという観点からは、間違ってないですけどね。

 憧れの冒険者が『仕事』になったとき、疲れる『日常』に変わるか、楽しみを見つけるかの違いですかね」

 俺はすんなり冒険者になれたわけじゃないから、憧れが強いんだと思う。


 アーデンは納得いかないような雰囲気で、肩をすくめた。

「じゃあ、俺も楽しんでくるか」

 そう言って、背中を向ける。


 あー、できたらオンの付き添いを一緒にやって欲しかったんだが……。仕方ない、覚悟を決めよう。


「オンは、魔法が中心なんだよな? 物理攻撃はやらないタイプか?」

 そういえば、何が得意とか質問していなかったな。

「殴ったり、爪で裂いたり、相手の体を引きちぎったりできますよ」

 ニコニコとオンが答えた。

「……体を引きちぎるって、素手で?」

「もちろんです」


 ……『もちろん』じゃねぇ! 獣人でも引きちぎるまでは、しないわ。――しないよな?


「せっかく人里離れた場所にいるんだから、街中ではできない練習をしよう。

 風魔法で真っ二つに斬ることはできるか?」

 たぶんウィンドカッターを出すと思うが、複数の刃ではなく一枚だけ出せるなら、戦術に組み込める。

「やってみます!」

 わくわくを隠さない、元気な返事だ。


「ちょっと待って。威力が強かった場合に、被害が出ない向きを考える」

「はい!」

 素直に待っていてくれる。こういう姿を見ていると、怖い魔族というイメージはないんだけどな。



 ――オンの風魔法は、デッドフロッグをみじん切りにした。


「討伐部位の舌も散りましたね」

 なぜか敬語になってしまった。


「あ、あう~。粘膜がなければただのカエルですから、柔らかすぎたのだと……。

 粘膜でつやつやの、生きのいいのを倒すならちょうどいいかもしれません」

 取り繕うように、オンがいろいろと並べ立てる。

「……それは、また次の機会に」

 規格外すぎる。ぷるんぷるんで元気なデッドフロッグでも、オーバーキルになるだろう。


「……はい」

 オンは素直にうなずいた。


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