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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十四章 クランでの生活

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久しぶりに冒険したい

 クランという新しい環境に、戸惑うことは多かった。

 集団生活なので決まった時間内に食堂へ行き、事務職がいて「○○は、やりましたか?」と教えてくれたりする。人間関係の煩わしさと組織の便利さ、両方がある。


「久しぶりに依頼を受けたいな」

 朝食の場で、思い切って言ってみた。

 つい先日まで、フォンの繭の側で魔法使いが変なことをしないか、あるいは妖精族に繭ごと誘拐されないか見張っていた。


 だけど、段々そこまで警戒しなくてもいいかと思えるようになってきた。

 魔法使いたちは「後は時間が解決するでしょう」と言って、通ってこなくなった。クランの建物は入り口で不審をチェックしているし、使用人たちもおかしな動きはしていない。



 その一方で、クランには毎月会費を収めないといけない。建物の維持費や使用人の給料は、そこから出る。つまり、稼がないといけない。


「そうだにゃ。このままだと体がなまっちゃう」

 サァラが目をキラリと輝かせた。

「うん。じゃあ、今日は冒険者ギルドに依頼の掲示板を見に行こうか」

 ルナはそう言って、目玉焼きをパンに載せた。


 そこにすっと近寄ってくる人がいた。年配の魔法使いで、フォンの繭の調査に協力してくれていた妖精族だ。

「よければ私が同行しよう」


「え、なんで?」

 サァラが疑問をぶつけた。久しぶりにパーティーメンバーで依頼を受けるのに、水を差されてムッとしているようだ。


「トーマ君の護衛のために、誰かが付いていく必要がある。

 フォンさんが不在で魔法使いがいないのだから、私は適任だと思うがね」


 言っていることはもっともだが、逃がさないという圧を感じる。これが嫌なんだよな。


 ルナを見ると腕を組んで考えていた。

「……それはクランの総意?」

 少し圧のある声で、魔法使いに問いかける。


「半分はそうだな。君たちが三人で行動するなら護衛を付けるのは、総意だ。誰がつくかまでは決まっていないから、今、立候補している」

 魔法使いは、椅子を引いてテーブルについた。


 こんなふうに保護対象と言われると、一人前として扱われていないと思い知らされる。


 俺たちは顔を見合わせた。なんとなく気が乗らない。なんでだろう?

 フォンの穴埋めを妖精族がする――そこに引っかかりを覚えた。まるで後釜を狙っているみたいじゃないか。 


「それだったら、うちの合同討伐に参加しない? 盗賊のスキル持ちがいるから、狙われたらすぐに気がつく。返り討ちできるよ」

 別の冒険者が会話に混ざってきた。討伐対象の情報や参加するメンバーのアピールを、一気にまくし立てられる。残念だけど、耳を滑って頭に入ってこない。


「それなら、護衛任務に慣れている俺たちの方がいいんじゃないか?」

 新たな参戦者が現れた。

「護衛で王都を出たら、何日かかるのさ。問題外でしょ」

「だから、護衛をするなんて一言も言ってないだろ。近郊の依頼だって、王都の外壁の外だろうがよ」

 と、言い争いが始まった。


 ええ~、依頼を受けたいって話しただけなのに、面倒くさいことになったぞ。


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