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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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夜の庭

 フォンはグレタ婆さんと部屋に戻っていった。


 婆さんの無責任な大らかさに救われたというか……ありがたいけど、あんなのありなのか?

 商業ギルドのメンバーは今ごろ、頭を抱えているだろう。


 特大の商機を掘り当てて、さあこれからって時に「実は夜這いグッズでした」なんて。

 令嬢向けじゃなく、大人の遊びをする人たち向けに路線変更すればいけるかもしれない。

 ただ、国や領の産業としては、イメージが……難しいよな。



 俺とオルドは、ベンチに腰掛けた。

 何となく、話がありそうな雰囲気を感じる。



「あのサークレットを外すのに、時間がかかるかもしれない」

 オルドは真面目な口調で、そう言った。

 なにか難しい状況が発覚したのだろうか。


 フォンの前では平気な顔をしていたのに……。


「妖精族の魔法が使われているので、解析が難しい。

 長期間に渡り、脳に近いところにあった。そこから洗脳されているから、ペンダントや腕輪より影響力は強いと考えられる。

 その影響がどれくらいのものか、判別つかない」


「結構、深刻な事態――ということなのでしょうか?」

 魔法や魔導具の仕組みは、どの種族にも共通するものと独自のものがあると聞いている。


「それすらわからんのだ」

 オルドは闇に沈む林に目をやった。ホーと梟のような声がする。


「あまり時間がかかるようだと……私も冒険者パーティーから呼び出しを受ける可能性が出てくる」


 ああ、そうか。「光牙の道標」は冒険者だもんな。

 いつ次の依頼を受けるかは、状況次第だろう。


「そうですよね」

 後輩みたいに面倒を見てくれるから、厚意に甘えすぎてた。



「妖精族の国から技術者を呼ぶというなら、また、話は違ってくるがな」

 オルドがニヤッと笑う。


「どういうことですか?」


「もし、妖精族も新興宗教の扱いに困っていたら、この件に協力したいと言い出すかもしれない。

 あまり積極的に他国と関わろうとしない彼らの魔法を見られるなら、パーティーを抜けてもいい」


 えええ? この人、マッドサイエンティスト系か?

 そんなにあっさりパーティーからの離脱をほのめかさないでほしい。

 仲間とか絆とか、大切じゃないのかよ。



「君たちも、どうしたいか考えておくといい。

 次々と状況が変わる中で、芯になる部分を押さえておかないと流される。

 王侯貴族たちにいいように振り回され、利用されるぞ」


 オルドは忠告してくれているのだ。


「オルドさんも、振り回されたことがあるんですか?」

 先ほどの言い方に、苦い後悔が混じっている気がした。


「私は貴族として生まれて、いろいろあって冒険者になった。

 連中が何か提案してくるときには、何通りもの対策と、何十もの罠を仕掛けた後だと考えろ」


「えええ、怖い。なんだそれ」

 本音が漏れた。


「おそらく、フォンも貴族として教育を受けたことがあると思うぞ」


「そういえば、乳母とか言うことがあった――。

 あれ?

 その人たちを乳母と言ったり、養い親と言ったりしてて……話によっては親と同僚みたいな時もあった。

 なんだろう、日によって違う人の話みたいだった」


「それは『設定』があいまいということだろうな。

 つまり、植え付けられた『記憶』だ」


「ひどい……」


「そういうことを平気でやる連中なんだよ」


 何が本当かわからないって、怖いな……。

 フォンはもっと怖い思いをしているのか。大丈夫かな。

 ルナとサァラになら任せられるけど、グレタ婆さんは……なんとなく不安になった。


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