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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十二章 王城

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落ち着かない朝食

 翌日の朝食は、昨日の夕食と同じ部屋に用意されていた。

 エリオットが話し合いをしたいからと、城の使用人たちを下がらせた。

 わざわざ給仕してもらわなくても食事できるしな。


 俺たちは護衛任務を終えているため、遠慮なく大皿の料理に手を伸ばす。


「どれを食べようかにゃ。フォンはどうするん?」

 サァラがそう気遣っている。

 どうやら一晩では回復していないようだ。


 フォンは果物を選んでいる。

 食欲が湧かないのだろう。

 ルナがさっとスープをよそって、フォンの前に置いた。


 兵士たちはいくつかのグループに分かれて、同じ物を食べないように騎士のトゥランに指示されている。

 これで数人が動けなくなっても、残りは戦える状態を確保するそうだ。



「食べながらでいいので、聞いてくれ」

 エリオットが話し始めた。


「君たちの働きで、昨日、無事にぬいぐるみの納品ができた。

 トラブルがあったけれど、誰ひとり欠けることなく任務を遂行できたことは喜ばしい。

 報酬という形で、働きに報いたいと思う」


 わっと喜びのさざめきが起きる。ベルーフがヒューッと口笛を吹いた。



「国から、数名はこのまま王城に滞在してほしいという要請があった。

 マーガレットさん、トーマは他国に住んでいた頃の情報提供を求められている。

 フォンは魔塔と協力して、魔導具の解析を進めたいだろう。

 それぞれが持っている情報は、機密性が高く誘拐の危険性もある。我が領主邸と行き来するより、ここの方が安全だという提案だ」


 エリオットは俺たち三人の顔を順に見る。

 俺はパンを片手に持ったまま、見つめ返した。うなずいて了承していいのか、迷ってしまった。

 拒否はできないだろうが、冒険者パーティーの仲間に相談せずに答えたくない。


 エリオットは声を潜めて、

「王城内でも、拉致や食べ物に警戒は必要なんだけどね」

 と苦笑いする。


「三人がいつ解放されるか、現時点では不明だ。

 商業ギルドの面々は、数日、滞在してほしいとのこと。

 ぬいぐるみの今後の話し合いを、早急に詰めたいそうだ。担当部署が殺気立っていたよ」


「嬉しいような、怖ろしいような状況ですね」

 商業ギルドを代表してロイが答えた。


「一段落したら、領主邸に来るといいよ。

 馴染みの薄い商業ギルドの王都支部より、うちの方が居心地がいいだろう」


「そうですね。

 田舎者だと馬鹿にされるのはいつものことですが――強引に取引を迫る人がいそうで、ギルドの宿泊施設は別の意味で安心できないかもしれません。

 遠慮なくうかがいます」



 そんな話が進む中、サァラの顔から笑顔が消えた。猫耳が少し伏せている。

 ルナは眉間にしわを寄せ、エリオットをじっと見ている。



「私たちは昼前に領主邸に移る。それまでは迎賓館の庭園などを楽しんでいいそうだ。

 せっかくの機会だから、楽しんでくれたまえ」

 エリオットはそう結ぶと、自分も食べ始めた。



「あたいたちも残ったらいけないのかにゃ?」

 サァラが意を決したように、大きめの声で言った。


 エリオットはスープ皿から顔を上げる。

「うーん、同じ冒険者パーティーとして心配ということかな?

 残念ながら、それは難しいね。

 滞在する理由がつけられないし、その場合は念入りに武装解除される」


「そっか……」

 サァラがシュンとなった。


「私もできるだけ王城に顔を出すようにする。

 領主邸に滞在するなら、私が連絡役を務められるよ」


「お屋敷に行っていいの?」

 サァラが恐る恐る訊く。Cランクの冒険者が領主の屋敷に滞在することなど、普通はない。


「君たちがよければ、どうぞ」

 ただの善意とは思えない、どこか胡散臭い微笑みが返された。


 サァラとルナは顔を見合わせた。

 どうする?――と言葉にしないまま。


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