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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十一章 王都へ

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四日目 昼時

 ピリピリとした雰囲気のまま、昼食を取る予定の宿場町に駆け込んだ。

 安全地帯に入り、肩の力が抜ける。


 襲撃の報告を受けて、宿場町の冒険者ギルドは騒然となった。

 この宿場町は警備担当の部署がないため、冒険者が依頼を受けて警備をするとのことだった。


 俺の足首はポーションで治ったはずなのに、ジンジンと違和感が残っていた。

 ルナもさりげなく腹に手を当てている。


 いつもは宿場で一番いい食堂に行くエリオットが、屋台の串焼きを食べている。

 領主用の馬車に乗るときの狭いタラップに腰掛け、その前に騎士のトゥラン、商隊長のロイ、冒険者のダルグが立っている。

 それぞれ、何かを食べながら相談しているようだ。


「お前たちも手早く食べて、動いてくれ」

 と、兵士に声をかけられた。

 屋台に買いに行く者と携帯食を食べる者、それぞれが食べながら仕事をした。


 まず、馬車の点検だ。これは兵士たちがメインでやってくれる。

 次に、ポーションの買い足し。魔法使いのオルドが中心になり、宿場の薬屋と冒険者ギルドに向かった。


 ポーションを使った怪我人は体を休めていいと言われ、俺とルナは怪我人の一団に交じって昼食を食べた。

「ポーションで強引に怪我を治すと、頭がそれを認識できずに違和感が出る。そういうときは体を動かさない方がいいんだ」

 一人の兵士がそう教えてくれた。


「冒険者の間ではあまり聞かない気がするな……」

 ルナが言う。


「兵士は交替要員も計算に入れて行動するから可能なんだ。冒険者はギリギリの人数で動くから、そんな悠長なことを言っていられないんじゃないか?」

 と、兵士が答えた。

 なるほどな。勉強になるわ。俺たちは役割がダブらないようにパーティーを組むのが、常識だもんな。



 宿場町の役人から、襲撃現場に行く冒険者が決まったと声がかかる。

 今朝増員した、この国の冒険者パーティーから一人が案内に出る。爬虫類系の獣人だ。馬にまたがると、馬が少しよろめいた。がっちりした体格だから、重たいのか。


 これで、増員した冒険者パーティーが三名抜けることになる。現地で待機している二人と、今、出発した爬虫類系の一人。


 あ、待機している二人は携帯食を持っているだろうか?

 サァラに声をかけ、俺の予備の携帯食を爬虫類系の獣人に渡してもらった。


「すごく喜んでくれたよ」

 サァラがにこにこ顔で報告してきた。

 ……もしかしたら、俺が渡すより喜ばれたんじゃないだろうか。猫耳の可愛さには誰も敵わないよな。



 減員により、午後の配置計画を見直さなければいけない。

 エリオットたちは、今の戦力のまま領境まで行くか、この宿場町の冒険者を雇うかを協議している。増員するのは心強いが、その人がスパイではないという確証はない。



「今日の午後にはこの領を出られる。

 増員はなし。トーマをダルグから離さないようにして、領境まで突っ走ろう」

 エリオットは苦悩の末に、そう言った。


「え?」

 少し離れていたが声は聞こえていたので、そちらに顔を向ける。


 手招きされたので、相談している首脳陣のところに歩いて行った。

 実は、立ち上がった瞬間、足首に痛みが走った。それを気付かれないよう、顔の筋肉を固定する。余裕の表情だぞ。


 ダルグが俺の顔を見た。

「あの獣人、お前を殺さずに生け捕りにしようとしていた。

 俺たちの荷馬車を狙ってきたフルプレートアーマーの騎士は、レスタール王国の奴じゃないか?」


「すみません。騎士なんて縁がなかったから、わかりません」

 このファルガン共和国に来て、なぜかギルドマスターと頻繁に顔を合わせたり、Cランクに上がったりしているけれど――。

 レスタール王国では、田舎育ちのDランク冒険者だった。ギルドマスターですら、見かけたことはあっても会話したことはない。

 騎士なんて、噂話で聞くような存在だった。俺が働くホテルのレストランに来ていたかもしれないけれど、私服では判別がつかない。


「アーデンがワイバーン討伐に成功したときに、凱旋パレードをしただろう。同じ村出身なのに、近くで見物できなかったのか?」

 ダルグが眉をひそめる。


「パレードどころか現地に放置されて、村長の息子が迎えに行ったんですよ」

 ホテルで出迎えたときの、ボロボロの姿を思い出すと胸が痛む。


 ダルグから殺気が溢れた。

「なんだと?」


 エリオットが手のひらをダルグに向けて、制止した。

「そういうことをしゃべられたら困る人物がいるということだ。すぐに出発しよう」


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