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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十一章 王都へ

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一日目 ため息の昼食

 またしばらく馬車を走らせ、昼食を取るために宿場町に寄った。


 昼食は二交代制で取ることになったが、俺たち花猫風月の四人は同じ回にまとめてもらえた。初めての護衛の旅で、緊張しているだろうという配慮だ。なんてありがたい。


 俺たちは同じテーブルに着いて、一斉に大きなため息を吐いた。

 ルナとサァラは、ぬいぐるみが積んである荷馬車の護衛だ。午前中はルナが荷馬車に乗り、サァラが荷馬車の周囲を警戒。午後はその逆になる。


 ルナは精神的に疲れたと言う。

「ベルーフさんが奇襲を受けた時の対処を教えてくれるんだけど、えげつなくて人間不信になりそうだ」

 サァラは自分の話より、俺と雪豹獣人ラティーアの話を聞きたがった。

 槍術士メルティナは、エルフだけあって走るのが速いらしい――ということしかわからなかった。


 運ばれてきた定食は、みんな同じ料理だった。ここはまだトゥルメル領内なので、時間をずらして同じ物を食べてもいいと判断したらしい。

 領の外に出たら、その土地の温かい料理を食べられるグループと持参した携帯食を食べるグループに分けられる。



 フォンは商隊用の荷馬車担当で、重戦士のダルグと組んでいる。

「盾役との連携の仕方を教えてもらったわ。魔法を詠唱している間の身の守り方を、もっと考えなきゃいけなかったのね」


 温かいスープで、緊張がほぐれた気がする。

「俺はラティーアさんに、護衛との距離感を教えてもらった。モンスターとの戦い方とはかなり違うな」

 白いパンをちぎりながら、教わったことを説明した。

「そうそう。一歩よけるとか、半歩で反撃とかにゃ」

 サァラが休憩時間の練習を嬉しそうに語る。


 微笑ましく思いながら、ソテーされた肉にナイフを入れた。この後の日程では、こんなゆとりのある食事を取れるかわからない。しっかり味わおう。



「ここのテーブルは楽しそうでいいね」

 カップを持ったエリオットが背後に立っていた。


 トゥランがさっと椅子を持ってきて、エリオットが俺たちのテーブルに着いた。

 目を丸くして眺めているうちに……なんでだ? 貴族って、こんなに平民にフレンドリーに接してこないだろう、普通。

 また緊張の時間が始まったぞ。


「今夜は隣の領主のお招きを受けているから、私は晩餐に出席しないといけないんだ」

 領主の孫として、領主同士のお付き合いも仕事のうちなのだろう。

 エリオットは同情を引くように大げさにため息を吐き、ちらちらと女性陣を見る。


 だが、三人とも「大変ですね」などと相槌を打たない。

 なんて返したらいいか、わからないのだろう。俺もわからない。


「気が進まないなぁ。……君たちはその間、なにしているの?」

 誘い水に乗らないと気づき、質問に変えてきた。


「おそらく、宿で待機かと」

 ルナが代表して答えた。


「足さばきの練習とか、しているんだろうね。

 腹の探り合いをしながら食べたって、美味しくないんだよ」


 また返答に困ることを言う……。


「その間に、ぬいぐるみを強奪しようとするご令嬢がいるかもしれないから、気をつけてね」

 指先でテーブルをトンと叩いてから席を立った。

 それを言いに来たのか!


 エリオットは次のテーブルに移り、また雑談をしている。

 ――ように見えるが、実際は仕事の話をしているのかもしれない。俺たちのテーブルで話したように。

 親しみのある笑顔をしているが、油断ならない貴族社会で生きている人なのだ。


「あー、気を抜くなとカツを入れられたんだろうか」

 ルナが少しへこんでいる。


「いえ、起こる前に注意してもらったんだもの。これを生かせばいいのよ」

 フォンが自分に言い聞かせるように言った。


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