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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十章 変わるもの

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顔合わせ(前編)

 冒険者ギルドの広い会議室で、顔合わせだ。会議机も椅子も普通のもので、ホッとした。今回は俺たちも座っていいらしい。


 商業ギルドの担当者が口火を切った。

「僭越ながら、私がこの商隊の責任者をさせていただきます。商業ギルドで被服担当をしております、ロイと申します。

 ぬいぐるみという新商品を二十体、王都の商業ギルドに搬入します」

 ロイは緊張を紛らわせるように、一度息を吐いた。


「本来ならそれだけの話なのですが、このぬいぐるみを巡って騒動が起きています。

 購入希望者が殺到し、それを整理するために国が臨時受付の部署を作るほどです。

 運搬途中に強奪しようとしたり、貴族や大商人から横槍を入れられたりする恐れがあります」


 領主の孫が、その言葉を受けてうなずいた。


「それを防ぎ、無事にお届けできるよう、皆様のご協力を賜りたく存じます」

 この商隊の代表者の言葉が終わると、拍手が起きた。


「商業ギルドからは、私の他に会計担当、荷物係、縫製担当、ぬいぐるみ原案者が参加します。計五名、よろしくお願いします」

 紹介された人が頭を下げたり、手で自分だと示したりしている。

 その中にはグレタばあさんがいた。俺たちを見て、ウィンクしてきた。こんな場でも緊張していないみたいだ。


 次に、領主の孫が挨拶をした。

「私は国王に献上する場と貴族の横やりを防ぐために同行する。領主の孫、エリオット・トゥルメル、二十五歳だ。気軽にエリオットと呼んで……」

 そこで、騎士が咳払いをした。

「そんな呼び方を許したら、私が騎士団長にお叱りを受けます」

「では何と呼んでもらえばいいのだ。御曹司などと呼ばせたら、後継者争いに繋がりかねんぞ」


 しばし、二人が睨み合い、空気がピリッとした。

 ええー、後継者問題でもめてるの? 大変だなぁ。


「『エリオット様』でよろしいのでは? 敬称をつければ問題ないかと」

 ロイが間に入って、話を進める。


「こほん。失礼した。私は領主軍に所属しているトゥラン・マーロウと申す。

 領主軍からは騎士が二名、兵士が六名だ。騎馬と徒歩で参加するので、荷物等は相談したい」

 この会議に出席したのは、同行する騎士の中で一番偉い人みたいだ。

「はい、もちろんです。馬車や荷物については、後ほど時間を取って話し合いましょう」

 司会役のロイは、にこやかに請け負った。


「俺たちは『光牙(こうが)道標(みちしるべ)』という冒険者パーティーだ。

 俺はダルグ。ご覧の通り犬系獣人で重戦士。

 ダークエルフの槍術士、人間の魔法使い、このドワーフは索敵に強い。

 礼儀には目を瞑ってもらって、うまく連携を取っていきたいと思っている。よろしく」

 ダルグの太い声は、信頼できそうな安定感がある。


「あ、『光牙の道標』さんはAランクパーティーで、護衛任務に定評があります」

 ロイが付け加えた。

 騎士が、「ほう」と興味深いと言いたげな視線を送っている。


 次に傭兵が一堂を見回してから、自己紹介をした。

「私は傭兵ギルドに所属しているラティーアと申します。

 雪豹獣人です。以前、王宮で護衛をしていた関係もあり、お声がけいただいたのかと思います。よろしくお願いいたします」


 サァラが嬉しそうに、傭兵の女性を見ている。

 昨日、サァラから豹獣人との違いを聞かされた。あまり人里に下りてこなくて、クールで無駄な争いを嫌う人たちで、カッコイイと興奮していた。



 ルナが少し緊張した声で話し出した。

「あたしたちは『花猫風月』というCランクのパーティーです。

 あたしは剣士でルナ。

 風の魔法使い、格闘家と……短剣使い?の四名です」


「なんで疑問形だよ」

 とダルグに笑われた。


 ルナは俺の職能についての説明に困って、口ごもったんだ。

 戦闘スキルじゃない「下ごしらえ」なんて、この場にそぐわないもんな。いつものことだけど、地味にへこむ。


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