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『下ごしらえ』で冒険者を目指す ~地味スキルなのに、なぜかモテる件~  作者: 紡里
第十章 変わるもの

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古道具屋の外で野営

「古道具屋は鑑定品を山ほど抱えてるから、優先してもらえるよう冒険者ギルドの依頼書を持って行け。お前、書いてやってくれるか」

 ギルドマスターが職員に話しかけた。


「もちろんです。少々、お待ちくださいね」

 職員は俺たちに断りを入れてから、すごい早さで書類を書き始めた。


「……すごいにゃ」



 

 古道具屋は何軒かあるが、一番ダンジョンに近い店を紹介された。街中ではないので、往復に時間がかかる。

 馬を借りて急ぐか、明日改めて行くか。

 鑑定に時間がかかるかもしれないので、野宿できる準備を整えて翌朝立つことにした。



 街からダンジョンへ向かう途中に、その店はあった。


「装飾品なら婆さんの方がいいな。おーい」

「はいはい、なんですか」

 奥から作業着の婆さんが出てきた。


 事情を簡単に説明し、サークレットを装着したまま見てほしいと依頼する。

 フォンを椅子に座らせて、婆さんは立ってサークレットを観察した。


「この魔石の止め方は妖精族っぽいね」

 婆さんは腰を叩きながら言った。

「この魔道具の機能と安全性の確認ということでいいかい? 装着したままだと完全な鑑定はできないから、緊急性があるかどうか観るだけだよ」


 俺たちは了承するしかない。


「じゃ、こっちの遮断部屋に入って。

 ここなら魔法も魔道具の効果も外に出ないからね」

 そういう婆さんに、少しだけ不安げなフォンがついていった。



 残された俺たちは、野営の準備をした。

 テントを張り終わったので、三人で組み手をやったり、ダンジョンの反省会をやったりしていた。



 店から若い男が走ってきた。

「あの姉さんの具合が悪くなった。来てくれ」


 駆けつけると、フォンがぐったりとしている。吐いてしまったようだ。


「悪かった。魔道具を装着したままってのは難しいね」


「だい、じょうぶ、なので……」

 フォンは婆さんの腕にすがろうとした。


「いや、明日、改めた方がいい。この辺りには宿がないけど、何とかなるかい?」

 婆さんは俺たちに問いかけた。


「鑑定が長引いたときに備えて、野営の準備をしている」

 ルナがフォンの肩を支えながら返事をした。


「さすがだね。じゃあ、気をつけて運んでおやり」


 呼びに来てくれた青年が手伝ってくれて、大きな板に乗せて運ぶ。

「おんぶすると、また気持ち悪くなりそうだったから、助かった」

 俺がお礼を言うと、青年は気にするなと手を振った。


「いや、養い親に変な物を装着させられていたなんて、精神的なショックもあるだろうさ。お大事にな」

 そう同情して、戻っていった。


 そういえば、そういう観点が抜けていたな。

 テントにフォンを寝かして、背中をさする。

「人がいない方がいいなら、テントの外にいるけど」


「――さすっていてほしい。人肌がきもちいいわ」

 小さな声でフォンが言う。

 丸まって横になっているフォン。なんだかとても儚く見える。



 しばらくしたら、サァラが交替すると言ってくれた。

 そっとテントの外に出る。


 ルナが半月刀の手入れをしていた。


「親がどうとか言われても、ピンと来ないよなぁ」

 とルナがぽつりと言う。


 そういえば、俺たちはあまり子ども時代の話をしないな。


「ああ、あたしは孤児院で育ったんだ。

 そこから冒険者に向いている子を師匠が引き取って、鍛えるんだよ。

 食事の量だけは確保されるから、みんな選ばれたくて頑張った」


 そういえば、師匠から独り立ちするときにビキニアーマーを贈られたと言っていたな。


「多分、『親だから愛があるはず』って説教しないから、トーマは一緒にいて警戒しないですむんだ」


 この話はどこに向かっているんだろう?


「フォンもさ、『養い親がそんなことするはずない』とか『事情があるはず』とか下手な気休めを言われなくて、よかったと思うよ」


「古道具屋で、何か言われたと思ってるのか?」


「ん~、職人ってさ。派手な親子げんかしても、結局のところ技の継承で『いつかわかりあえる』ってのがあるんじゃない? よくわからないけど」


 確かに、「親の愛」というものを前提に世の中を見る人と、感じることができずに育った人では、話が通じないことがある。悲しいことに、俺たちは後者だということか。




「こんなとこで何してんの?」

 ちょっとシリアスな雰囲気を壊すように、顔見知りの冒険者に声をかけられた。


「古道具屋で鑑定してもらうの、待ってんの」

 ルナが明るい顔に戻って、返事をした。


「何? いい物がドロップしたわけ?」

 探るような声だ。最新情報の交換はとても大切だからな。


「いい物かどうか、わかんない。鑑定待ち」


「あはは、そっか。あたしたちは今からダンジョンに潜ってくるよ」


「気をつけて行ってきな」

 ルナが親指を立てた。


「おう!」

 手を振って、冒険者たちは去っていった。



「……夕飯、何にしようか」

 気まずさを振り払うように口を開いたら、やっぱり食べ物の話になってしまった。


「フォンはあっさり目のものが好きだよね」

 ルナはすぐに答えてくれる。


「魚系か。でも干物じゃないとここまで運べないだろ。弱った体にはしょっぱいかな」

 ちょっと考えてしまう。


「ひとっ走り行って、買ってこようか」

 ルナが立ち上がった。


「線香一本分(約二時間)はかかるだろ」


「でも、ほら、暇だし」


「……喜ぶかもな」

 俺たちは目を合わせて、ニッと笑った。


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