第百九話 「選抜」
「入って良いのは五十名のみ、武器の持ち込みは許可するとの事。そして五十名の中には必ず"剣竜"劉士元を同行させる様にと、狼王様より御命令だ。」
「あ"あ"ぁ!?テメェ……。この場で斬り殺してやっても良いんだぜ?さっさと翔の所まで、案内しやがれ!!」
「ひいぃぃぃぃぃ……。」
怒りを露にし、門番の首に剣を突き付ける黄牙。
「待って黄牙さん、ここは大人しく指示に従いましょう。」
「あ"あ"ぁ!?」
制止する優駿を、黄牙は睨み付ける。
ここで暴れると不味い、そうなれば必ず司馬晋は軍を動かしてくるに違いない。……そしてそうなれば必然、公孫翔の身が危険に晒される事になってしまう。
司馬晋は、公孫翔にも匹敵する程の知略を持っているのだ。こちらに二万の軍が居るとしても、軍同士が衝突すれば劣勢に追い込まれてしまう危険性があった。
それよりも、このまま少数精鋭で近接戦闘に持ち込んだ方が遥かに戦いやすいだろう。
狼国兵の正確な数は分からないものの……。狼国には優秀な将軍など、ほとんど存在しない筈である。
狼国軍で注意するのは、恐らく司馬晋と楽勝の二人だけだろう。それに対し、こちらには刹那、黄牙、士龍、張翼。……そして大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"劉士元が居るのである。
少数精鋭で白兵戦に持ち込んだ方が、遥かに優勢である事は誰の目にも明らかだった。……知略に優れる司馬晋に頭脳戦を挑むより、遥かに効率が良いと考えられるだろう。
……そして優駿には、もう一つ理由があった。それは優駿がまだ、心の何処かで司馬晋の事を信じていたからである。
そしてこれは何かの間違いだと、優駿は司馬晋の口から聞きたかったのだ。
司馬晋の答えを聞く為にも、優駿はすぐに突入する五十人の精鋭を選抜していく。特に朧の団時代から居る精鋭達と幹部は、必ず必要になると考えた。しかし───。
「俺は残るぜ。」
「俺も念の為、外で待機してるよ。優駿。」
何故か士龍と張翼の二人は、外に残ると言い出した。
「えっ!?どうして?」
二人が残ると言い出した事に疑問が過る優駿。二人は貴重な戦力なのである。それは優駿でなくとも、不思議に思う事だろう。
「気の所為かも知れないけど……。何かこう、言葉では言い表せない様な嫌な予感がするんだ。何か取り返しのつかない事態になってしまう様な……。だから誰か一人でも残っておくべきだと、俺は思うんだ。」
「俺も同感だ。二万も兵が居るんだ。最低でも一人は、軍を指揮出来る人間が残っておくべきだろう。」
士龍と張翼の二人が口を揃えて言う嫌な予感に、拭いきれない不安を感じる優駿。長年に渡る戦場を戦い抜いた、二人の勘が言っているのだ……。この先には本当に、何か恐ろしい罠が待ち受けているのかも知れない。
「…………。」
二人の言葉に恐怖を煽られ、不安に駈られる優駿。
「黄牙……。」
妹である公孫礼も涙目で怯え、小さな体を震わせながら、必死に黄牙の腕を掴んでいた。
「…………。」
果たして自分が下した決断が正しかったのかと、拭いきれない不安と恐怖を感じる優駿……。
だが───。
「この俺が居る。何一つ、問題など有りはしない。」
何も怒りを覚えているのは、黄牙一人と言う訳ではない。
大陸最強の暗殺者一族"剣竜"劉士元は落ち着きながらも、静かに怒りに震えていた。……いや、それは少し違っていた。
刹那や黄牙の様に、ある程度武に長けている人物なら、それは容易に理解出来るのである。
"剣竜"劉士元の体からは、今まで以上の怒りと凄まじい迄の殺気が溢れ出ている事を───。
「この俺に、全て任せておけ……。すぐに終わらせる。」
「おおよ、死んでも翔は取り返す!俺達が居るんだ、何も心配いらねぇよ。」
「士元さん、黄牙さん……。」
二人の存在が頼もしかった。
劉士元、黄牙、そして刹那。こんなにも頼もしい仲間達が居るのだ、何も心配する必要など無かったのである。
底知れない不安を感じつつも、頼もしい仲間達に背を押され……。優駿は狼国城の中へと進んでいった。
武将紹介
『翔国』
「優駿」
武力 47
知力 87
主人公 オーラがあまり無い。
一応これでも主人公。
亡き国、優国の王子。
生き別れの妹を探している。
祖国の復讐の為、蛇国と戦う決意をすが。諦めて物乞いや盗みを働いている。
頭は悪く無いのだが、使い方を知らない。
こんな治安の悪い、しかも圧政に苦しむ翔国に来た事を少し後悔している。
「刹那」
武力 89
知力 54
髪型 95 かなり気合い入れてる。
村の自警団の一員。
剣の腕は相当な物で、盗賊百人を平気で蹴散らす実力を持つ。この大陸でも屈指の実力を誇ると言えるだろう……。
でも頭の方は、お察し。
綺麗な長髪の黒髪が特徴。毎朝一体何時間掛けているんだ?って位に気合いが入っている。
「公孫翔」
武力 92
知力 99
髪型 98 美容院通ってるの!?
朧の団の若きリーダー。義賊。これでもかって程、髪型に気合いを入れている。え?毎日、美容院通ってる?ってレベルに気合いが入っている。後、仲の良い妹が一人居る。
「黄牙」
武力 96
知力 77
自称 最強剣士。
公孫翔の相棒。非常に腕の立つ剣士。最強を自負しているのだが、実際は……。
「劉士元」
武力 97
知力 67
暗殺 最強の一族
大陸最強の暗殺者一族、"剣竜"。
「張翼」
武力 94
知力 87
自分 大好き
翔国、臥龍配下の部隊長。その実力から、将来を有望視される人物。野心家で、自信過剰な所がある。
「士龍」
武力 88
知力 67
努力 家
志願兵の一人。刹那にその実力が認められ、一隊を任せられる。槍の使い手で、実力はそこそこ。割と勘が冴える所もある。
「周衛」
武力 92
知力 78
忠誠 100
今は亡き優国、最強の将。九年の時を経て再び優駿と再会を果たす。猫より犬派。
『宗国』
「徐栄」
武力 パナイ
知力 ヤバい
連合 軍総大将
"天覇十傑"に名を連ね、"三英傑"に匹敵する実力を持つと言われている。宗、龍、恭、三国連合軍では、龍大聖を押し退けて総大将を務める程の大将軍である。
割りと若く、まだ二十代。……かなりの甘党。
「陸閃」
武力 化け物らしい
知力 普通
連合 軍の切り札
宗国の将軍。"天覇十傑"ではないものの最強の将、王禅を討つ切り札と呼ばれる少年。年は十六才。まだ若いが武の才は本物で、天賦の才を持つ。
『恭国』
「朱真」
武力 97
知力 90
騎馬 隊が強くて有名
恭国筆頭将軍。朱真将軍率いる騎兵団は大陸最強と名高く、よく帝国王禅将軍の騎馬隊とどちらが強いのかと噂される程である。
"天覇十傑"の一人で、常に冷静な猛将である。常に近寄りがたい雰囲気を醸し出しているが、部下の面倒見は良い。年齢は、割りと若い。
「鄭羽」
武力 99
知力 74
性格 寡黙
"天覇十傑"の一人。恭国一の猛将で、王禅と互角に渡り合う程の実力を持つ将軍である。性格は物静かで寡黙。
「夏侯炎」
武力 98
知力 67
極力 戦いたくない
"天覇十傑"の一人。戦より、女と金と酒と博打が好き。人間味臭い性格である。しかし性格は良い為、友人も多く、部下からはかなり慕われている。
『龍国』
「諸葛麟」
武力 非力
知力 割りと高い
祖父 が最強
龍国丞相を務めている。
"三英傑"の一人、龍大聖の孫娘。ちなみに祖父は相国。
祖父である龍大聖程では無いが、かなり知略に長けている。どちらかと言うとほのぼの思考で、戦争はあまり好きなタイプでは無い。
餡蜜大好き。甘露大好き。食べるの大好き。でも太るのがちょっぴり怖い、お年頃……。
「諸葛龍」
武力 秘密
知力 100
超絶 カッコいいお爺ちゃん
龍大聖と呼ばれる龍国の英雄。祖国を救った英雄であり、大陸一の天才軍師と言われている。三国連合軍の副将を務め、二十万を超える大軍勢の指揮を一手に担っている。
『狼国』
「司馬晋」
武力 95
知力 97
糸目 開眼しないタイプの糸目。
掴み所の無い、何考えて居るのか良く分からない糸目。……その糸目が、開眼する事は無い。
「楽勝」
武力 93
知力 89
相当 ヤバい奴
狼国の副隊長。司馬晋の配下である。元盗賊の頭で、残忍な性格をしている。司馬晋に実力を認められ、配下になった経緯がある。




