番外編というか何というか『高身長親友は見守る』
今回はあの友人の一人称〜。
朝七時。大体、いつもこの時間に起床する。駅までは近いし、一駅進むだけだし、更にはそこから学校まで三十分かからないし。のんびりさえしなけりゃ遅刻なんてしない。
「和くん、ご飯出来たよー。まだ寝てる?」
「お、和泉おはよう。いつもサンキュ、もう行くよ」
「着替えてからねー」
「分かってるって」
妹の頭を撫でて、さっさと着替えを始める。俺は高一だけど、中二の妹に飯は頼んでる。毎日親いないし、俺は作れないから。
だからすっごく感謝してる。和泉のお陰で、俺は今日もあのアホな友人達と笑えるんだ。
「和くんさ、最近楽しいことでもあった? 何かにこにこしてるなって」
登校中、和泉が変なことを訊いて来る。俺、そんな笑ってるか?
「んー、特に変わりはないけど、最近クラスに転入生が来たんだよな」
「へぇ、転入生? 女の子?」
「うん、赤い髪が特徴的な、凄い美人なコだよ。何かハナシュンと幼馴染みらしいんだけど、俺は聞いたこともなかったんだよなぁ」
「え、花菱先輩って彼女いるでしょ? ほら、あの灰色の髪の毛した、何処かのお嬢様」
「矢吹な。転入生とはそんな関係じゃないってさ」
「ふーん、怪しいなぁ」
和泉はどうしても疑うみたいだ。ハナシュンが言うなら、嘘だってことはない筈だけど。アイツは隠し事が苦手でバカ正直だし。
そんなアイツだからこそ、瀬川さんのことに違和感を覚えるのだが。
「さて、到着っと。お、サッカー部もう練習してんのな。相変わらず朝強いねアイツら」
「あ、本当だ。遠くから見ても分かりやすい。あの人が転入生でしょ?」
「あー、いるんだ瀬川さん。そりゃまぁそうか? ハナシュンにべったりなイメージあるし。妹くらいにしか見られてないだろうけど」
ハナシュンに矢吹、滅多に来ないけど谷田崖とは教室で会える。その他はクラスや学年が違うから、基本挨拶しない。
あ、梅原さんは別だな。あの人一応俺とも幼馴染みだし。
──三年前、いきなり入院したって聞いて、更には記憶を失ったって告げられた時は他の全部忘れてビビった。そして真っ先に、ハナシュンの顔を窺った。
「あんな顔はもうしてほしくねーな……」
「和くん! おーい生きてる?」
「ん? あ、悪い何?」
「何? じゃないよもうっ」
和泉は自分のバッグから、風呂敷で包まれた俺用の弁当を取り出した。
「ああそっか、和泉と俺校舎違うんだった。サンキュ、また帰りな」
「しっかりしてよ? またね和くん! ──あ、りり! おはよーりり〜!」
「ゲッ、コタケ妹」
和泉は、今登校して来たハナシュンの妹、花菱李々華の元へ駆けて行く。明らかに鬱陶しそうにされてんのに、全くダメージを受けない俺の妹メンタル怪物か。ハナシュンと相性悪いんだろうなぁ。
にしても俺らって、兄は兄と、妹は妹と仲良いって凄いよな。本当助かる。
「あっ、ヤスダ。今登校か? いつもより遅いじゃん」
「コタケ、おはっス。いやさ、祭りの写真現像してたら朝方で、急いで寝たらこのザマだよ」
「アホだなお前。始める時間考えろよ」
ヤスダは、中学からの友人だ。独りでゲームばかりしていたコイツに、俺とハナシュンで声をかけたことがきっかけで、仲良くなった。
ま、声かけようって言い出したのはハナシュンだけど。
ハナシュンは凄い奴だよ。好きなもののためなら一生懸命に貫き通せるし、どんな目に遭っても挫けない。常に人と一線を置いてる俺とは大違いだ。
昔からサッカーバカで、洪水する程の大雨の日でも練習を続けてた。お陰で風邪引いたのは、笑い話だけど。
でも、それだけ一途に取り組めるってことだろ? 勿論邪念や煩悩がない訳じゃないけど、それ以上に好きなものを大事にしてる。
だからさ、
「あっ、コタケ君とヤスダ君。お、おはよう。こんなとこで立ち止まってどうしたの?」
「あ、矢吹。おはよう。部活始まってんよ?」
「……僕いつも遅刻だから」
「あはは、確かに。んじゃあ早く行ってやりな? ハナシュンが待ってると思うから」
「うーん、花菱君はサッカーしてると、僕のことなんて眼中になくなるからなぁ」
「そんなことないって。それにこれ以上遅刻したら、梅原さん怖そうだろ?」
「う、確かに……」
「はい、行った行った! てことでまたな! ハナシュンは絶対矢吹のこと忘れたりしないから、気にしない方がいいよ。俺が保証する」
「それは、心強いね」
──ハナシュンは絶対に、矢吹を幸せに出来る。ちゃっかり自分まで幸せになる。そういう奴だ。
「あの二人、死ぬまで上手く行くといいよな」
さっきまでビビって口も開けなかったヤスダが、ボソッと言う。思うことは同じみたいだ。
「上手く行くよ、絶対。後悔なんてしないさ、あの二人なら」
だから俺は、最後まで見守るだけだ。




