第二話 飯でも食いにいかんか?
今日も今日とて、俺はリョウミの護衛にあたる。まだまだ初対面同然みたいなもんやから、何話してええかさっぱりわからん。しかも、なんでこんなへんぴな草原なんかに来たんや。動物さんでもおるんか。
秋の風が心地よく頬を撫でて通り過ぎた。煙草の先から昇っていく煙が、その風に邪魔されて横へ飛んでいく。そして、俺の横にいたリョウミの顔にかかった。そして、彼女は盛大にむせた。
「ごはっ……げふっ………。……おい!煙たいぞ!」
「知らんがな。俺はいつも吸っとるんや。隣にいたお前さんの方が悪いやろ。」
いかに護衛対象といえども、俺の趣味嗜好まで気を遣ってやる必要はない。俺は俺の好きなようにやるんや。……せやから、前線から外されたんかもしれんな。
俺は四龍将の中でも、実力と殲滅力だけでいえばトップだろう。龍化改造手術への適合率も、ずば抜けて高い。だが、任務ではことあるごとに自己判断で敵をぶっ潰しに行っていた。俺の中では、合理的な判断によって。
「ふつう護衛対象が隣にいる時に煙草など咥えるか?誠意が足りないんじゃないの?」
「ちょっと前に言ったやろ。礼儀はないだのなんだの、お前さんが。」
俺は軽く笑って、煙草を口から離した。まだ四分の一も火が回っていない。指先にほんのり感じる熱と、それを掻き消すようなリョウミからの不服そうな気が、さらに面白おかしく感じさせた。
「まあまあ、そない怒ることはあらへん。ちょっとした冗談や。……イラついたやろ?」
「当然だな。私は今かな〜り腹を立てている。」
そうリョウミが言った瞬間、腹の虫がなった。おそらく、二人ともの。一瞬で場の空気が停止した。リョウミも俺も、多分真面目な表情になっていると思う。
「………。」
「………。」
そして、目だけを動かし、太陽が真上に登っていることを確認すると、俺は話を切り出した。
「……飯行かんか?お昼時やし。」
「…賛成だ。どこへいく。」
腹が減っては戦はできぬ、とは言うが、俺にとっては毎日が戦や。なら腹を減らすのは自殺行為に等しい。そして俺は飯を食うのが好きや。美味いもんは美味いからな。飯を食えば大体解決する。それが世の理や。
そうして、俺はどこで昼食を取るか、リョウミと真剣に議論しながら、街に戻っていった。結局、なぜ草原にいたのかはわからなかった。また後で聞いておこう。気になるし。




