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【ポーション製作】第三十四話あと

ヒルダの発案で徹夜でポーション製作中

=====



「そういえば、ルカは回復魔法も使えるのですか?」


 師匠の思いつき……もとい、作戦に従って、僕とエリファスはすり替え用のポーション作りに勤しんでいる。

 彼女の作業部屋には僕も出入を許されており、それほど昔のことではないはずだが、妙に懐かしい気分だ。


「一応……、ではあるが。正直、得意ではないな。どんなに調子がよくとも中級ポーションのレベルか。……師匠は下級レベルだろうし。魔力をそちらに回さずに済むなら、そうしたいのが本音だ。光の魔法はそもそも使えない」


 だから今回僕は、調合役にまわる。

 水の回復魔法を施すポーションの元は、水薬。


 薬草学の権威でもある師匠の作業部屋には、乾燥させた様々な薬草が部屋を飾る。

 最近仕入れたであろう紐に吊るされたものや、細かく砕かれたものまでさまざまだ。


 作業台には薬研(やげん)や、(はかり)

 薬草を煮出す魔道具に、空の瓶。乳鉢。

 

 それらを使って僕が水薬をつくり、エリファスが魔法を付与する。

 分業、というわけだ。


「なるほど」

全属性(マスター)を生かすのであれば、マジックポーションをつくる方が僕は向いているな。ポーションも……以前のストックがまだあるし……、特に必要はないか。そう言われると、……確かに機会がないな?」

「ナニナニー? なんの話?」


 黙って部屋を見回していたヴァルハイトが話に入ってきた。


「お前が怪我をする気配がないから、回復魔法の修行ができないという話だ」

「ぇ、えー!? い、イイこと……なのでは……?」

「ぐっ」


 それは、まぁ……そうなのだ。


 セネル達とのパーティーではリーベもいたし、ソロだったとしてもその辺の魔物や盗賊程度なら土魔法での索敵もありなんてことはない。


 回復術師(ヒーラー)のいないパーティーと組む中で、修行の機会はすぐにあるだろうと思っていたのだが……。


 僕自身怪我をしないというのもあるし。

 たまたま次に組んだのが、チャラいながらも戦闘では手のかからない男というのは……。


「はぁ……」

「あ、ため息。シアワセ逃げるよー?」

「誰のせいだ」

「そんなー」

「ヴァルハイト、あとは私たちに任せてあなたは先に寝なさい」

「なんか、わるいな~」

「気にすることはない。……明日、しっかりと働いてもらうぞ?」

「な、なんかコワー」


 火の単属性(シングル)であるヴァルハイトには、ポーション作りには参加できないだろう。

 その分、本番とやらでは役立ってもらわねば。


「んじゃ、お先に。オヤスミー♪」

「あぁ」

「おやすみなさい」



 ………………

 …………

 ……



「──エリファス、聞いてもいいか?」

「なんでしょう?」


 互いに黙々と作業を行う。

 静寂を破ったのは、他ならぬ僕だ。


「その、……光の魔法とは、どのように会得するのだろうか」


 率直に、聞いてみる。

 旅の目的のひとつであるそれは、中々に使い手と出会うことがない。

 その中でも有能と見受けられる魔術師に尋ねる機会を、逃したくはない。


「そうですねぇ、こればかりは各々の経験に基づくでしょうし。……私の場合は、ヒルダらと旅していた頃のパーティーの都合で、前衛でありながら回復もしていたので」

「な、なんというか。師匠を見ていれば想像がつくな……」


 師匠を見る限り……連携、というよりは各個撃破なイメージを持つのも無理はない。


「ふふ、ヒルダは昔から回復魔法が苦手でしたね」

「ふむ。僕は……闇の魔法は、得意なのだがな」

「……そうなのですか。これは想像ですけれど、ヒルダに鍛えられたルカでしたら、世間一般でいうと弟子をとっていてもおかしくはないレベルの魔術師だと思います……。光の魔法に、なにか思い入れが?」


 もっともな疑問だ。

 ある程度の域に達した魔術師の求めるものは、よほどその道を追求しない限り『職』の確保だろう。

 王宮魔術師、国や貴族への士官。

 あるいは冒険者として、固定パーティーを探す……といったところか。


「特段、深い意味はない。魔法に関することは、すべて興味の対象だ……。だが……」

「だが?」

「…………彼女が」

「え?」

「し……師匠は、調合は得意だ。だからっ、その。ど、どうせなら……し、師匠ができないことを、出来た方が……っ」

「! あぁ、なるほど。ヒルダも幸せ者ですねぇ」


 顔が、熱を持つのを感じる。

 違う、そんなんじゃない。


 師匠には大きな恩があるし、借りを返すという意味でだな……!


「ごっ、誤解しないでくれ。僕は魔法の組み合わせを考えるのが好きなんだ! 旅で、色んな組み合わせを──」

「なるほどなるほど、あれほど手のつけられなかったヒルダも成長したのですねぇ。感慨深いものです」

「……昔の師匠は今以上だったのか……?」


 現役時代の師匠は、いったいどれほどのものだったのか。

 ……どこか恐くて聞けないが。


「しかし彼女は、防御系の光の魔法は使えますからね。ふむ。……回復に、浄化……ですか」

「ひ、一つの要因に……すぎない。……わ、忘れてくれ」

「照れ屋さんなのですね」


 まさか、ヴァルハイトと同じことを言われるとは、心外だ。


「まぁ、私の場合は元々ひとり旅を想定していたもので。回復も得意であったのはちょうど良かったですね」

「……エリファスも、相当なのではないか……?」


 やはり先人というのは、偉大である。



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