第1章 新しい家族
産科婦人科の病室へ続く廊下を勢いよく駆ける可愛らしい足音が響く。
バタン!病室のドアが開き
「ママー!」
「亮!」
「赤ちゃんおめでとー!」
「亮ちゃん、ありがとう。今日からお兄ちゃんだね」
「うんっ!僕、赤ちゃんのこと大事にする!」
「偉いぞ亮。さすが男の子だ」
「うんっ、パパ」
「亮ちゃん見てごらん。赤ちゃんの手、小さいでしょう」
「うんっ、すっごい小さいのに爪がある!
足も小さい!お口も小さい!可愛い!」
湯川家に第二子となる女児が誕生した。
好きな事を何でも挑戦させてくれる父親と常に笑顔で優しい母。
両親の愛を一杯に注がれ湯川亮は育った。
男の子は赤ちゃん返りをすると聞くが亮は
妹が出来た事が嬉しくて堪らない様子だった。
「亮、赤ちゃんのミルクの時間なの。飲ませてみる?」
母乳の出が悪い母親は粉ミルクの入った哺乳瓶を亮に向けた。
「うんっ!いいの?僕があげてもいいの?」
「大丈夫よ」
「ママ、僕やってみる!ちゃんと飲んでくれるかなぁ」
「亮、お兄ちゃん仕事第一弾だな」
父親が目を細める。
「赤ちゃん、はいどうぞ」
母親に抱かれた赤ん坊の口元へそっと哺乳瓶を当てた。
「うわぁぁぁぁ!」
「赤ちゃん、目を瞑ったままなのにちゃんと飲んでくれてるよー!」
「亮が上手にあげてくれたからよ」
ゴクゴクとミルクを飲む赤ちゃんを見て亮は目が輝いた。
「赤ちゃん、かわいーなぁー!」
「亮も生まれたばっかりの頃は、こうだったんだぞ。可愛い赤ちゃんだった。今はカッコいいお兄ちゃんだな」
「パパ」
誇らしげに鼻の下を伸ばす亮の表情は子供独特の可愛いらしい表情だった。
赤ちゃんを愛でる様に見つめ
久しぶりに会った母親にそっと甘え
暖かい空気が病室を包んでいた。
しばらくして父親が
「亮、赤ちゃんのお昼寝時間だ。ママも疲れてるから横になって貰おう」
「うん、パパ」
「また明日来るよ。何か必要な物は?」
「大丈夫よアナタ。有難う」
「ママ、僕、明日またパパと来るねっ!」
「待ってるわ」
父親と病室を出た。
「パパー」
「んー?」
「僕、ママと赤ちゃんにお手紙書きたい」
「家に帰ったら書こうか」
「うんっ、何色のクレヨンがいいなかぁ」
「そうだなあ」
「赤ちゃんの名前は何になるの?」
「亮はどんな名前がいい?」
「んーーー!赤ちゃん!」
「あはは、湯川赤ちゃんかあ」
「お家帰ったらパパと一緒に考えようか」
「うんっ」
手を繋ぎ歩く父息子の後ろ姿は
何処にでもある幸せの姿だった。




