魔力過多症の治療
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「リリ、体調はどう?」
「平気よ。今日は朝から、すごく元気で食欲もあるのよ。」
リリの額に手を当てる。熱は下がったようだ。マリアに聞くと、朝食も完食出来たと言っていた。
「ユーリの顔の傷も綺麗になってるね。よかった。」
リリが僕の頬に手を伸ばし、傷があった場所を撫でる。
「ちょっと、掠っただけだから、心配ないって言ったでしょ。」
あの日、魔法に目覚めてから、リリの体は溢れてくる魔力に耐えきれず、体調を崩し発熱を繰り返していた。
改めて、治癒師に診てもらったが、診断はやはり魔力過多症で、このままでは成長と共に増える魔力に耐えきれず、命に関わると言われた。
今は、定期的に治癒師に来てもらい、溢れた魔力を外に排出してもらっている。
それから、リリは魔法の勉強を始めることになった。普通は5歳で始めていくが、魔力過多症のこともあるし、既に無意識に魔法を使った経緯もある。魔力制御を早めに覚えた方がいいと判断してのことだ。
ついでに、僕も剣術を始める許可をもらった。リリが魔法を始めるなら、僕は剣を習いたいと訴えると、あっさりと許可が出た。
「ユーリは、これから剣の稽古?」
「そうだよ。リリは、魔法の時間だろ?そろそろ、リック兄様が来る頃じゃないか」
リリの魔法の先生は、なんとお母様の弟、ヘンリック・ビッガートルで、魔法師団の副団長だ。
リリ程ではないが、叔父も魔力が多く、学生の頃から、魔法では負け知らずだとか。
学園を卒業後に、魔法師団に入団し、若くして副団長になった実力者だ。
リリの事情を聞いて、忙しい中時間を作り週に2回程、魔法を教えに来てくれる。
「リリアーベル様、ヘンリック様がいらっしゃいました。」
コンコンとノックの後に、マリアの声が聞こえ、扉が開く。
「やぁ、リリご機嫌よう。あれ?ユーリもいたのか。」
「こんにちは。リック叔父様。今日もよろしくお願いします。」
「ちょっとリリ、叔父様は止めてって言っただろ。名前で呼ぶか、せめてお兄様って呼んでよ。」
「フフ、そうだった。リックお兄様、今日もよろしくお願いします。」
リック兄様は、まだ21歳になったばかりで、叔父様と呼ばれるのが嫌みたい。
前世の僕も大学生だったから、叔父さん呼びが嫌な気持ちはわかる。甥や姪がいたら、僕もお兄ちゃんと呼ばせていただろう。
「それじゃあ、僕はもう行くね。リック兄様、リリのことよろしくお願いします。」
「ああ、任せてくれ。あっ、お土産にスイーツ買ってきたから、ユーリも後で一緒に食べよう。」
「本当ですか!じゃあ、剣の稽古頑張らなきゃ」
僕は、リック兄様にリリを任せて、訓練場へと向かった。
♢♢♢♢♢♢
「はぁぁ、練習の後の甘いものは最高だね。」
「そうね。特にこのケーキが美味しくて最高よ。」
「君たち二人とも、甘いものが本当に大好きだよね。美味しそうに食べてくれるから、俺も嬉しいよ。」
練習が終わって、リック兄様とリリと庭で小さなお茶会を開催中。
「しばらく外に出られなくて、悲しかったから、今日は久しぶりの外で嬉しいわ」
「そうだね。晴れててよかったよ。僕もリリと一緒に、お茶会ができて嬉しいよ」
リリの体調は、しばらく不安定で部屋から出ることが許されなかった。
でも、治癒師の治療と魔法の練習が始まって、だいぶ体調も安定してきたから、今日は久しぶりの外だ。
リリの嬉しそうな天使の笑顔を見ることができて、生きててよかったと感謝する。
あの日直後は、リリが死ぬかもしれないと不安で仕方なかった。
魔力過多症は、すぐに完治は難しい病だ。成長と共に魔力が増えるから、体が耐えられないと、症状はどんどん悪くなる。
体の成長と共に症状が落ち着くこともあるが、個人差があるので、いつまで続くか分からない。
僕が、リリの魔力の半分でも肩代わりできればよかったのにな。
「そういえば、今度うちの領地に遊びにおいでと父上達から伝言だよ」
少し物思いに耽っていると、リック兄様から、領地へのお誘いを受けた。
ビッガートル侯爵の領地は、王都からも近いし、リリの療養も兼ねて良いかもしれない。お父様達に、今度話してみよう。
あの従姉から離れる意味でも、少しの間王都から離れたい。
あれから、お祖父様に対応を任せていたが、アンナマリーが癇癪を起こして大変だったらしい。
その上で伯父も伯母も、自分の娘可愛さに最悪の選択をしてきた。
まさかの僕との婚約を打診してきたのだ。絶対に有り得ないだろ!
お祖父様もお父様もそれには激怒。お母様は、余りの怒りに僕たちを守るために実家に帰ると言い出して、お父様が引き留めるのに大変だった。
お父様は、自分の家族を守るために頑張ったと思う。
伯父との話し合いでは…
「兄さんは好きな人と結婚すると言い、私に家督を譲って出ていったのに、ユーリには、嫌いな女性との結婚を強要するのですか!」
これを言われると、叔父は何も言えないよな。もちろん婚約はなしだ。
アンナマリーは、納得してないようだが、僕は絶対に嫌だ。もし、強要されたら貴族を辞めて、平民になる。
その事を伝えたら、両親もお祖父様もショックを受けていたが、あいつだけは絶対にない!
ついでに貴族の結婚観についても探りを入れてみたが、この世界は、前世とあまり変わらないのかもしれない。
どうやら、貴族でも恋愛結婚は珍しくもなく、それなりに有るらしい。
さすがに王族は、幼い頃に婚約者が決まるってことも多いらしいが、貴族間では大体、学園時代に相手を見つけることが多く、卒業までに婚約する人が多いとか。
リリと僕の婚約者の件も確認したかったので、政略や無理やりの婚約が無さそうでホッとした。
「わたし、ビッガートルのお祖父様達に会いたいわ。お父様にお願いしてみる。」
リリの可愛い弾んだ声に、現実に戻される。
「父上達も喜ぶよ。俺からも姉さん達には話しておくから、リリの体調がもう少し良くなったら行こうか。俺も休暇申請しておくから一緒に行こう。」
リック兄様が、一緒なら安心だ。きっと両親も了承してくれるだろう。
リリがこんなに喜んでるんだから、行く以外の選択肢はないな。
さすがに、立て続けにイベントなんて起こらないだろう。純粋に体も心も休めたい。
なんて、呑気に考えていた僕は、まだまだ乙女ゲームや小説のことをわかってなかった。
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