まさかのラスボスルート?
補足です。
テオドール(双子父)
クリスティーナ(双子母)
仲良し夫婦で、お互いテオ、ティナと呼んでいます。
「お母様、リリは大丈夫?」
「今は落ち着いて眠っているわ。お医者様も今のところ心配ないと仰っているから、安心してね。」
あれから、直ぐに医者を呼んで診てもらったが、命に別状はないようだ。
あれだけの魔力で、初めての魔法を使って、本当に体に影響はないのか不安になってしまう。
お母様も、僕には笑顔で「安心してね。」なんて言うけれど、僕から視線を外すと、難しい顔をしている。
そもそも、4歳で魔法を使うことが普通ではないのだから、これからのリリの事を考えると不安しかない。
1階のホールに戻ると、使用人達が総出で片付けをしていた。
お祖父様や伯父や従姉は見当たらない。何処にいるのかメイドに尋ねると、お祖父様の指示で、馬車に乗せられ帰されたらしい。
一応、医者に診せて問題なかったようだし、お祖父様も一緒みたいだから大丈夫だろう。
あちらから抗議が来ても、勝手に来て、勝手な振る舞いをしたのは従姉の方だ。文句を言われる筋合いはない。
何か言われても、きっと、お父様が僕たちを守ってくれるだろう。
♢♢♢♢♢♢
「ティナ、今帰ったよ。遅くなって、すまない。子供達は?リリは大丈夫かい?」
いつもより早い時間に、お父様が帰宅した。事情を聞いて、早退してきたようだ。
お父様の帰宅に、お母様が安堵の表情を一瞬だけ見せたが、直ぐに表情が曇る。
「テオ、おかえりなさい。私が居ながら、こんなことになって、ごめんなさい。」
お母様の表情が暗い。ずっと辛そうな表情だ。
「ティナが謝ることは、何もないだろう。」
お父様が、優しくお母様を抱き寄せる。
そうだ、お母様が謝ることはない。全部、あの非常識な従姉が悪いんだから、お母様が責任を感じることはない。
「お母様は、僕とリリを守ってくれました。だから、お母様は悪くないよ。」
お母様の悲しい顔は見たくない。僕もお母様を抱きしめる。
「二人とも、ありがとう。」
お母様が、お父様の頬に、僕の額にキスを返してくれた。
「兄のところは、父上が対処すると聞いている。そのまま父上に任せよう。まずは、リリの様子を見たい。今は眠っているのかい?」
「ええ、落ち着いて眠っているわ。ただ、あの子、魔力が暴走しかけていたの。お医者様が言うには、魔力過多症かもしれないって言われたわ。」
魔力過多症。
それは、魔力量が多すぎて、体に収まり切らず、体に負担が起こる。
場合によっては、魔力のコントロールが出来ずに、魔力暴走を起こしてしまい、最悪死に至る恐ろしい病だ。
まだ、4歳の小さな体では、あの魔力量は抑えることは難しい。
今回のように、急激な感情の昂りで、魔力暴走を起こすことも有り得る。
「そうか…。」
お父様は、一言だけ告げると、リリの様子を見に部屋へと向かった。
僕もリリが心配なので、一緒に部屋へと付いていく。
――コンコン――
扉をノックすると、マリアの声で返事が聞こえ、扉が開く。
「リリの様子はどうだ?」
「今は眠っています。熱が出始めておりますが、先ほどお医者様から頂いた薬を飲んで少し落ち着きました。」
顔を赤くして、少し呼吸の速いリリを見ると、胸が苦しい。
こんなに小さな体で、魔法を使うなんて、やっぱり体には負担が大きかったんだ。
「私の天使、今はゆっくり休んでおくれ。」
お父様が、そっとリリの額にキスをする。
少しリリの表情が和らいだ気がした。
「お父様、僕はリリの傍についています。」
「わかったよ。リリをよろしくな。お父様は、少しお母様と話をしてくるよ。」
そう言うと、お父様が部屋から出て行った。
リリの右手をそっと握ると、熱が有るからか、とても熱い。
「リリ、こんなことになって、また僕のせいで、リリが苦しいなんて、いやだよ。」
何かある度に、僕は自分の無力さを痛感させられる。まだ、4歳だから仕方ないのかもしれないが、それでも何かあるだろう。
転生者って、何か特別な力があるんじゃないのか。
前世の親友が、『転生したら、チート能力があるから、その力で成り上がって、最終的に世界を救ったりするんだよ。』とか言っていたぞ。
僕は、転生者なのに魔力は平凡で、普通の4歳より知識はあるけど、それだけだ。
チートって何だよ!
『あっ、でもさ、乙女ゲームの中や、小説での悪役令嬢の大きすぎる力は、破滅を意味するからな。大抵ラスボス化して、攻略対象者とヒロインに討伐されて、そこで二人の恋が燃え上がるって訳だよ。』
唐突に思い出した。ラスボスルート。
まだ、リリが悪役令嬢だと決まった訳ではないが、もしもそうなら?
リリの尋常じゃない魔力はラスボスになる可能性もあるのでは?
ヒロインが他にいたとして、悪役令嬢がリリで、ラスボスになるルートが有るのなら、リリが危険だ。
リリを討伐なんて絶対にさせない。悩んでいる暇はない。
魔力過多症の治療に、ラスボス化の防止。落ち込んでばかりはいられない!
無力だと嘆く時間があれば、その時間でリリを救う道を作ればいい。
小説やゲームには、イベントがある。僕は、この世界のことは知らない。イベントについても知らない。
だから気づかなかったが、実はこれもイベントなのでは?
そうだとしたら、すでにイベントが起こってしまった後だ。
まさか、恋愛関連で、こんなイベントが有るなんて考えもしなかった。ラスボスルート恐るべし!
だが、僕は、出来る男だ。起こってしまったイベントも修正してしまえば、未来は変えられるだろう。
ふぅ、危なかった。前世の親友ありがとう。よくぞ、ラスボスルートのことを話してくれていた。
よし!もっと幅を広げて、考えられるイベント候補を、何となくでもいいから予想してみるか?
えっと、まずは何があるだろう。何だろう。何かな。えぇぇ……と。
前世では、恋愛経験ゼロの男が、恋愛について語るなんて無理だったぁぁぁ。
前世の人生で、恋愛イベントなんて経験したこと無いし、ゲームや物語の擬似体験も全く無し。
恋愛って何ですか?という初心者が、予想できるイベントなんて何もなかった。
だけど、そうだ。全くのゼロではない。僕には、前世の親友の名言がある。
それを思い出して、出来ることから進めていこう。
それならまずは、ラスボスルートを消し去るために、魔力過多症を今すぐ治療出来ないか調べよう。
ここまで、読んでくれて、ありがとうございます。
次も読んでもらえると嬉しいです。




