姉に嫌われたくない弟の苦悩
今日も朝から、雲一つない綺麗な青空が広がり、気持ちの良い風が頬を撫でる。
隣には、相変わらず可愛い天使の様な姉が、聞き心地の良い、小鳥のさえずりの様な可愛らしい声で、友人達と楽しそうに話している。
そして、俺は……
ここ数日、リリに誕生日の招待客について、いつ、どのように伝えようかと、そればかり考え悩んでいた。
アンジュ嬢とは、結局、花祭り以降、学園でも会うことはなかった。
やはり、クラスが違うのは大きい。避けたい相手と会わないで済むことは助かるが、リリが友人だと思っている間は、油断できない。
誕生日の招待客に、アンジュ嬢の名前が出ないように祈りつつ、もし名が上がったら、俺が反対する。
優しいリリを傷つけないよう、俺がリリに嫌われないように、ここ数日間は、言葉選びをどうするか、苦悩している。
「ユーリ、もうすぐお昼時間が終わっちゃうよ。全然、食べてないけど食欲がないの?体調悪いの?」
リリが、心配そうに声をかけて、俺の顔を覗いてくる。
「そんなことないよ。少し考え事してて、ボーとしてた。急いで食べるよ。」
リリに、これ以上心配かけないよう笑顔を作り、急いで食事を口に運ぶ。
最近は、食堂でアンジュ嬢に会わないか不安で、食事中も気を張っているので、誕生日の悩みと緊張で食事も喉を通らない。
今も、無理して昼食のサンドイッチを口に詰め込んだので、喉につっかえて思わず咳き込んでしまう。
「ユーリ!大丈夫!?これ、お水、お水飲んで…。」
リリが慌てて、俺の背中をトントンと優しく擦り、コップに水を入れて渡してくれる。
「ゴホっ…ぅ…、あり…がと…。」
「もう、ビックリした。一気に食べ物を詰め込んだら危ないわよ。まだ少し時間はあるから、落ち着いて食べて平気よ。」
水を飲んで落ち着いた俺を見て、リリが優しくそう告げる。
でも、正直、俺は早く教室に戻りたかったので、食事の終了を告げる。
「いや、もうお腹いっぱいだ。リリ達は、もう、昼食を済ませたみたいだから、そろそろ教室に戻ろう。」
席を立つ俺に、他のみんなも心配そうな顔を見せる。
「ユーリアス様、本当に平気ですの?昨日も余り召し上がってないようでしたが、どこか体調が悪いのではないですか?」
ビアトリス嬢が告げると、エリオットも心配そうに声をかける。
「ユーリアス、体調が悪いなら無理をするな。もし辛いなら、保健室で少し休んだ方がいい。先生には、私が伝えておこう。」
「そうだよユーリアス。無理をしたらいけないよ。君には、味方が沢山いるのだから、いつでも頼ってくれていいんだよ。」
セドリック殿下も、いつもより優しく見える笑顔で、珍しくそう告げる。セドリック殿下には、色々と知られていそうだ。
「お前はいつも一人で頑張り過ぎるからな。体調が悪い時くらい無理するな。何なら俺が保健室までお姫様抱っこで運んでやるか。」
オリヴァーが、冗談交じりで両手を前に出して、お姫様抱っこの真似をする。
「オリヴァー様が、お姫様抱っこなんて…似合わないですわね。」
「ビアトリス嬢、それは、私も同感だ。」
「殿下もビアトリス嬢も、酷くないか。」
殿下とビアトリス嬢の反応に、俺もリリも笑ってしまう。
「みんな、ありがとう。本当に体調は平気なんだ。心配かけてごめん。少し考えることがあってね。もう少し考えて、無理ならみんなを頼ることにするよ。」
久しぶりに、自然と笑顔が出た気がする。笑うと気持ちが少し楽になった。
「ユーリ、私も…私も居るから、いつでも頼ってね。」
リリが、俺の右手をぎゅと握り、心強い言葉をかけてくれる。
優しくて、世界一可愛い天使の上目遣いに、俺の心は鷲掴みにされる。
「リリのその言葉で、元気が出てきたよ。お言葉に甘えて、リリに頼らせてもらおうかな。今日、家に帰ってから話があるんだ。聞いてくれる?」
パァッと、リリの表情が明るくなる。
「もちろんよ。ユーリの話なら何でも聞くわ。」
リリに、みんなに、心配をかけるくらいなら、早めに悩みを解決しよう。
俺は、今日、リリにアンジュ嬢とは、距離を取るように説得することに決めた。




