リリを守る会と新メンバーの王子様
「やっぱり、知っているんだね。ルミナとベルも…かな。」
(しまった…。嗚呼…、やってしまった…。)
動揺して、ルミナとベルの方へ視線を向けてしまったので、俺達のやり取りを見て、殿下は察したようだ。
「えーと、セドリック殿下、ヒロイン?でしたっけ。俺は初めて聞きましたよ。ヒロインなんて言葉知らないな。」
今更だが、何とか誤魔化せないかと、苦し紛れに知らないアピールをしてみる。
セドリック殿下が、楽しそうに笑顔を見せるが、俺の背中は汗びっしょりで、笑顔が引きつる。
「へぇ、知らないの。ユーリアスは色々と知っていると思ったんだけどな。それじゃあ、ヒロインと対になる者の事も知らないのか。もしかしたら、リリアーベルが、そうじゃないかと思ったのだけど…。大丈夫かな。心配だな。」
ヒロインの対になるってことは、悪役令嬢の事まで知ってるのか。セドリック殿下は、どこまで知ってる?
しかも、今、リリが悪役令嬢だと言ってた。
「セドリック殿下は、リリが悪役令嬢だと知ってるんですか。もしかして、攻略対象が誰かも知ってたり…?」
やっぱり、この世界は乙女ゲームの世界ってことか。アンジュ嬢がヒロインで、リリが悪役令嬢なんだ。
まだ、何もしてないが、このまま学園生活を送って、卒業式には、何かわからないまま断罪されるかも。リリがピンチだ!!
「へぇ、悪役令嬢って言葉も知ってるんだね。それに、攻略対象…か。ユーリアスは、何故その言葉を知ってるのかな。これは、王家に伝わる秘密なんだけど、どこから、誰から聞いたのかな?」
ピシッと空気が張り詰める。
動揺していた俺の気持ちも、殿下の怖いくらいの笑顔の圧に、冷静さを取り戻した。
「いや、あの…。知ってると言うか…知らないと言うか…。」
誤魔化そうにも、はっきり言葉にしてしまったし、嘘をつくと、俺がこの場で断罪されそうだ。
でも、正直に話すなら、俺が転生者なのも話さないといけない。転生者だと知られるのだけは、避けたかった。
どうしようと迷っていると、救いの神様ならぬ精霊様の声が聞こえた。
「私が教えたのよ。リリが悪役令嬢の条件にピッタリだから、リリを守るためにユーリに話したの。」
ルミナが、セドリック殿下にそう告げると、殿下は少し考える素振りを見せたが、纏う空気が少し柔らかくなった。
「そう、精霊様なら知ってるのもおかしくないか。」
ルミナのお陰で、俺の秘密を知られるのは避けられた。ルミナには感謝しかない。
「私も、ルミナが言うように、リリアーベルが悪役令嬢の条件に近いと思うんだ。そして、王家に伝わるピンクの呪い。これは、コルトブル男爵令嬢に当てはまる。詳しくは言えないが、王家もヒロインの事は、警戒しているんだよ。ヒロインと悪役令嬢は、必ず対立する。ユーリ、そう言うことだから、リリアーベルをコルトブル男爵令嬢に近づけるのは止めた方がいい。」
ピンクの呪いとか、ヒロインを警戒してるとか、気になるワードが出てきたが、王家の秘密を全て知る勇気は俺には無い。
大事なのは、リリの幸せだけ。それ以外は、どうでもいい。
取りあえず、俺以外にもヒロインや悪役令嬢について知ってる人がいて、リリの味方になりそうだから、それは良いことだよな。
「そうですね。まずは、リリの安全が優先ですから、アンジュ嬢が疑わしいなら接触は避けます。ちょうど、クラスも別なので、そこは何とかなるでしょう。」
殿下が呆れたように俺を見て、エリオットが、冷めた目で俺を見る。
「何ですか二人とも。何かあるなら言ってください。」
「ユーリアス、Sクラスの人数が今年は何人か知ってる?」
セドリック殿下が、知ってて当然の質問を投げ掛ける。
「知ってますよ。10人でしょ。」
入学式のクラス発表の時、確か10人だと言っていた。ちゃんと覚えている。
「実際のクラスメイトの数は知っているかい?」
どういうことだ?Sクラスは、10人なんだから、クラスメイトは10人だろう。
質問の意味が分からなくて、固まった俺に、エリオットが代わりに答える。
「9人ですよ。ユーリアス、あなたはクラスメイトの顔と名前を覚えてないのですね。本当に、貴方は、リリアーベル以外の事は、ポンコツですね。」
9人?10人でなくて…9人…。いや、そうかもしれない。何となく思い出した教室のクラスメイト達を数えてみると、一人足りない。
「もう一人は、コルトブル男爵令嬢だよ。彼女は、本当はSクラスだったんだ。でも、高位貴族ばかりのクラスでは緊張して、勉学に支障が出ると本人からの訴えで、Aクラスにいるんだ。だが、今の彼女ならSクラスに戻ってくるかもしれないよ。特に、試験の成績次第では、確実に戻ってくる。」
アンジュ嬢がSクラス。全く知らなかった。試験というと、約1ヶ月後に実施される。
確かに、そこで優秀な成績なら本来のクラスに戻されるだろう。
今は、リリだけでなく、俺や殿下達、Sクラスのメンバーとも顔見知りになった。
これは、接触を避けるの無理じゃないか。
「私たちもリリアーベルの近くにいて、なるべく彼女が一人にならないように気をつけるけど、コルトブル男爵令嬢には、まだまだ裏の顔が有りそうだからね。ユーリアスも気をつけてくれ。」
「分かりました。」
「また、何かあれば情報を共有しよう。ユーリアスは、リリを守る会のメンバーなんだろう。ぜひ、私も守る会に入会したいな。」
ニコッと笑顔で、セドリック殿下が守る会メンバーに志願する。
なぜ、殿下が守る会の事を知っているんだ。
ルミナとベルを見ると、すっーと視線を逸らした。
「面白そうですね。殿下が入会するなら、ぜひ、私もメンバーに加えて下さい。」
まさかのエリオットまで、入会希望。
「はぁ…、まあ、リリを守れる人は、多いに越したことはないので、入会を認めますけど、誰にも言わないで下さいよ。本当は秘密の守る会なんですからね。」
「分かってるよ。守る会の事は、誰にも言わないよ。」
「私も誰にも言いませんよ。」
リリを守る会の入会を認められて嬉しそうな二人に別れを告げ、ルミナとベルと共に、癒しの可愛い天使の元へと急いで向かう。
「まずは、天使の姿に癒されて、それから、家に帰ったら、ルミナとベルはお仕置きだな。」
「「ぴゃっ」」
情けない声を出した二人にも、ちゃんと話を聞きたくて、久しぶりにリリを守る会、初期メンバー会議を行うことにする。
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