ヒロイン(仮) と リリを守る会
ヒロイン(仮)も新しく仲間入りし、ユーリの苦労も増えそうですが、これからもリリとユーリをよろしくお願いします。
「リリアーベル様、コルトブル男爵令嬢がいらっしゃいました。」
「わかったわ。お部屋に案内して頂戴。」
「リリ、俺も勿論、参加していいよね?」
笑顔で頷くリリは、アンジュ嬢の来訪に嬉しそうだ。そのまま足取り軽く、彼女の待つ部屋へと向かう。
友人関係となったあの日、リリは早速、アンジュ嬢をお茶に誘った。
彼女は、なんか色々と緊張していたが、快く招待を受けてくれた。
本当なら、ヒロイン(仮)との接触は避けたいところだが、リリの嬉しそうな顔を見ると、それも出来ない。
だから、今日は、リリを守る会メンバーで、ヒロイン(仮)を見極める。
その後、ヒロイン(仮)には、早めに帰って貰って、リリとの花祭りを楽しむ予定だ。
「アンジュ、いらっしゃい。今日は来てくれてありがとう。」
「リリアーベル様、お招きありがとうございます。あの…これは、お土産です。えっと、どうぞ、お受け取りください。」
ガチガチに緊張したアンジュ嬢が、リリへとお菓子の包みを渡す。
「わざわざありがとう。今日は天気もいいでしょ。良かったら、お庭でお茶なんてどうかしら。」
「は…はい。それで、大丈夫です。」
ギコギコ聞こえそうな程、緊張で歩くのも不自然なアンジュ嬢。
錆びたロボットが、何とか手足を前に出して歩いてる様に見える。ちょっと面白い。
「アンジュ、ほら、早く行きましょう。」
リリが、緊張でギチギチに固まってるアンジュ嬢の手を引いて歩き出す。
突然のことに、固まった手足が反応できず、彼女が躓いた。
「キャッ…。」
「危ないっ…」
咄嗟に手を出して、アンジュ嬢を受け止める。何とか間に合って、転倒は避けられた。
「リリ、アンジュ嬢が来てくれて嬉しいのは分かるけど、急に引っ張ると危ないだろう。アンジュ嬢は、初めての場所で緊張してるから、ゆっくり案内してあげなきゃ駄目だよ。」
「うぅぅ…ごめんなさい。アンジュ、本当にごめんなさいね。早くお庭の花を見せたくて。怪我はない?」
リリが、申し訳無さそうに、アンジュ嬢の顔を覗き込む。アンジュ嬢は、驚きで目を大きく見開き、また早口で呪文のように何かを呟きだした。
「いや、いや、いや、…どうしよう。目の前には、美しい天使様……それに、これ、どういう状況?……私……誰に……いや…ダメ、ダメだよ…考えちゃダメ。これは、もう……考えたらダメ……誰の腕とか……そんなの…」
延々と呪文を唱えてそうなので、こちら側に戻ってきてもらうため、アンジュ嬢に声をかける。
「あの、アンジュ嬢、大丈夫ですか?立てます?」
急に声をかけたのが悪かったのか、俺の声に反応して、ハッとした彼女が俺の顔を見上げる。すると、みるみると真っ赤になり、口をパクパク動かした。
「っ………………。もう……ムリ…。」
ひと言、そういい残し、彼女はパタリと気絶してしまった。いや、どうして…?
「えぇぇ!アンジュ!しっかりして、もう、ユーリ何したの。酷いよ、ユーリ。」
「えっ…俺、何もしてない。リリ、俺は何もしてないからね。えぇぇ、どうしよう。アンジュ嬢、ちょっと、しっかりして。」
気絶したアンジュ嬢を抱え、リリから酷いと叱責され、俺は悲しみと混乱の中、取りあえずアンジュ嬢をベットまで運んだ。
いや、俺は、何も悪くないよね。リリィィ。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「あの、ヒロイン(仮)のアンジュだったかしら?どう見ても普通の令嬢じゃないの。」
リリを守る会の会議中。ルミナが、アンジュ嬢について意見を述べる。
「アンジュって子、今日、ずっとリリの事を小声で、天使様って呼んでたわよ。可愛いも連発してたし、リリの事を見ながら眼福と拝んでたわ。誰かさんと一緒ね。リリの事を好きなのが伝わってくるし、アンジュがリリの事を悪者にすることは無いんじゃないかしら。」
「我も同じ意見だ。リリの事を好きだと全身で訴えていたからな。それに、彼女は優しい匂いがするから、リリを貶めることはしないだろう。」
フェンリルは鼻が利くから、匂いで人間性も分かるのか?
まぁ、俺も、今日のアンジュ嬢の様子を見ていると、彼女が攻略対象と恋愛関係になっても、リリが悪役に仕立て上げられることは、無さそうだと安心した。
ヒロイン(仮)も、攻略対象者候補たちも、リリの大事な友人になった。
もしも、ヒロインが攻略を始めても、リリを悪く言う人はいないだろう。
「あとの問題は、リリが可愛すぎて恋愛対象となる可能性だな。最近、セドリック殿下が、何かと声を掛けてくるし、リヒトも気を抜くと、すぐに破廉恥なことを言うから、油断できないよな。リリが友情以上の感情で見られないように、気を付けないと。純粋なリリが誑かされたら大変だ。」
溜め息を吐いて、ルミナが残念そうな表情で俺を見る。
「前にも言ったけど、すでに遅いと思うわよ。まぁ、いいわ、あのアンジュって令嬢も、ヒロイン(仮)ってだけあって、とても可愛い顔をしているわ。だから、逆に利用するのよ。」
「利用する?どう言うこと?」
意味が分からず、首を傾げる俺に、ルミナがピシッと尻尾を立て、ニヤリと小さく笑う。
「げえむや、恋愛小説の中では、ヒロインが恋愛対象になるんでしょ。それなら、それを利用して、男どもの目をヒロインに向けさせるのよ。そうすれば、リリをコウリャクタイショウから守れるわ。ヒロイン(仮)は、すでにリリを好きだから、リリを貶める心配がない。それなら、思う存分コウリャクタイショウを惹き付けてもらいましょう。」
ルミナが、面白いことを思い付いたと、クネクネ体をくねらせ、楽しそうに動き回る。
「確かに、アンジュ嬢には、本来のヒロインの役目をしてもらえば、腹黒王子や破廉恥な魔族を引き離せるし、それ以外の攻略対象からもリリが狙われることは無くなる。言い考えだね。よし、それじゃあ、アンジュ嬢には、頑張ってリリの回りの男たちを誘惑してもらおう。」
「そんなに上手くいくのか。我が主も鈍感だが、ユーリも大概、酷いな」
ベルの声は小さくて聞き取れなかったが、これからの対応も決まり、俺は満足していた。
アンジュ嬢と友人になれたのは、結果的には良かったのかもしれない。
ルミナが言うように、アンジュ嬢は可愛かった。それに、リリにも優しくて、自分の立場より、リリの事を優先して選んでくれた。
リリの事を大事に思う友人が増えるのは、俺としても嬉しいことだ。
明日は、一緒に花祭りに行く約束もしていたな。本当は、リリと二人で行きたかったけど、三人で行くのも少しだけ楽しみだ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
《捕捉》
気絶してしまったアンジュ嬢ですが、あの後すぐに目覚めて、無事に三人でお茶会をしました。リリが見せたかった庭も、三人とペットたち2人と一緒に散策でき楽しい時間を過ごしました。
リリ、「お庭気に入ってくれて嬉しいな。アンジュもお花好きなの?」
アンジュ、「だ…大好きです。お花の中にいると…まるで妖精のよう…はぁ…可愛い…」
リリ、「それなら、明日の花祭りに一緒に行かない?」
アンジュ、「ぜひ…一緒に行かせてください。天使様…あっ…いや…リリアーベル様。」
と言うことで、次からは、花祭りエピソードです。




