どこの世界でも最低クズな奴は居る
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「リヒト様、おはようございます。体調はいかがですか?」
「おはようございます、クリスティーナ夫人。体調は問題ないですよ。昨日は、美味しい夕食も頂いて、しっかり眠ったので、朝から絶好調です。」
確かに、昨日よりも顔色がよく見える。昨日は、驚くほど沢山の食事を食べていた。数日意識が無かった人とは思えない程の食欲に、逆に心配になったが魔族は回復力も高いようだ。
「それはよかったです。実は、王宮から魔族の使者の方がいらしていて、部屋へ案内してもよろしいですか?」
「もちろんです。」
昨日、リヒトが目覚めてから直ぐに王宮へ連絡した。今すぐ会いたいと返事が届いたが、リヒトの体調を鑑みて面会を決めると伝えていた。
それなのに、今朝早くにお父様と魔族の使者と言う人がやって来た。
直ぐにリヒトに会わせろと、怒鳴り散らして、不躾な態度には辟易した。
そういえば、この国に来たときも港を破壊したんだっけ。なんて乱暴で礼儀がなってない種族なんだ。
リヒトが心配だとか、国の事情もあるだろうが、これで良いのか魔族国民。
これが、国の代表として、他国へ来た者の態度だと思うと、少し問題じゃないか。
余程、不満が顔に出ていたのか、リヒトが僕を見て、申し訳なさそうに頭を下げた。
「俺の国の者が迷惑をかけたな。まさか、こんなに朝早くに、考え無しに突撃してくるとは思わなかった。」
「別にリヒト様が謝ることはないですよ。色々と考えて欲しかったと言う気持ちはありますが、貴方の事がそれだけ心配だったと言うことでしょう。」
リヒトが顔を上げて苦笑する。
「それでも…だ。迷惑をかけたことには変わりないからな。」
それからすぐに、お父様と魔族の使者(名前をカスタットと言うらしい)が入ってきた。
「すまないが、リリとユーリは外してくれるか?」
「「分かりました。それでは、失礼します。」」
僕とリリは、そのまま部屋から出た。あのカスタットと言う人は、真っ直ぐにリヒトの方へ向かい、涙を流して無事を喜んでいた。やりたい放題の魔族だけど、リヒトを思う気持ちは本物のようだ。
♢♢♢♢♢♢
カスタットが帰ってからも、リヒトは我が家で過ごした。
カスタットは、王宮に部屋を用意して貰うからとリヒトを連れ帰る気満々だったが、リヒトが嫌がったため、結局こちらで過ごすことに決まった。
怪我が良くなり動けるようになると、外で過ごすことも多くなり、気がつくとリリの隣には、いつもリヒトが居る。
(一体どういうことだ?)
僕は、リリとリヒトが二人にならないように、常に気をつけて見ているのに、邪魔しても邪魔しても、リリの隣にリヒトが居る。
訳が分からない。何かの魔法か?常に特定の人の隣に立つ魔法って何だよ?
そんな魔法があるなら僕も知りたい。
いや、私情を挟んでは、リリを守れない。今は二人の今後について考えなければ。(あとで魔法の事はベルにでも聞いてみよう。)
リリとリヒトは仲良くなりすぎて、今では二人とも名前を敬称無しで呼び合う仲だ。
因みに、僕も寂しいので仲間に入れてもらい敬称無しで呼んでもらっている。
幸いなのは、リリが鈍感すぎてリヒトの気持ちに気づいてないこと。それと、リヒトがリリを国民を救った尊い人と神聖化していることだ。今のところ、リヒトがリリに想いを告げることはなさそうだ。
「ユーリ、また新しい魔法が出来そうなの。この前、ユーリが言ってたワタガシを作る魔法なんだけど、ワタガシが何かユーリしか分からないから、確認して欲しいな。」
リリとリヒトの事を考えていたら、いつの間にか、リリが隣に居て僕の顔を覗き込んでいた。可愛い天使の笑顔に現実に戻される。
「あっ、ちょっと考え事してた。えーと、綿菓子ね。今度、保護した子供達にあげる予定なんだよね。見た目も楽しい魔法にするんだっけ?」
「そう。火と風を使ってね。」
保護した子供達というのは、奴隷として攫われた子供達のことだ。
今回、リヒトが無事で戻ってきた以外にも実は問題が発生していた。それが、子供の誘拐事件であり、誘拐された子供達が奴隷として他国へ売られていたという事件。
リヒトは、巻き込まれて誘拐され、この国へ他の子と一緒に連れて来られていた。助けを求めるために、怪我を追いながらも何とか逃げ出し、たまたま僕達の所へ逃げて隠れていたらしい。
魔族は、数年前から子供の誘拐事件が多くなっており調査していた。そんな矢先にリヒトが攫われ、国を動かして必死に調査した結果、人間の国へ渡った後だった。
最初は、何のために誘拐したのか不明だったようで、リヒトが保護されてから、奴隷として売られている事を知ることが出来た。
ただ、犯人が誰なのか、他の子供達が何処に居るのか、リヒトも必死で逃げていたので分からなかった。
そんな時、解決のためと声を上げたのが我が家の天使だ。
「私が作った魔道具があれば、リヒト様がいた場所が分かるかもしれない。ユーリが言ってたジーピーエスと追跡機能が使える魔道具を作ろうと思って、ジーピーエスはまだだけど、追跡機能だけは使えるの。魔力を追跡出来れば分かると思う。」
まだ不完全と言うことで、一応ダメ元で試したら、リヒトの魔力の痕跡が僅かに残っていたようで、あっさり犯人は捕まった。
しかも、新たな事実として、なんと人間の子供達も魔族の国に奴隷として、売られていたのだ。この事件は、人間と魔族両方の国に衝撃を与えた。
犯人は、どちらの国でも貴族であり、慈善事業等にも取り組み、周囲からは尊敬される程の人たちだった。それが、お互い手を組み、自分達の国の子供達を交換し、奴隷として売買していたのだ。もちろん我が国も事件発覚後に、売られた子供達の行方を探したり、捕らわれた子供の保護を魔族の国と協力しながら進めている。
この事件に関与した者は一斉に逮捕され、事件解決に協力したリリは感謝された。
リヒトは特に涙を流して感謝していた。ずっと、一緒に攫われた子供たちの事を心配していたから、みんな無事で安心したんだな。
どの国でも奴隷は禁止されているのに、世界は変わっても、最低グズ野郎は何処にでもいるんだな。
これ以上、辛い思いをする子達が居なくて本当によかった。
――ということで、保護された子供達の為に、僕たち双子とリヒトで、何かしたいと言うことで、綿菓子をプレゼントすることにしたんだ。
「ちゃんと綿菓子になっているよ。あとは、これをこの棒に巻き付けて…。はい!リリ、あーんして」
「あー…んっ!!甘くて美味しい!」
初めて食べる綿菓子に驚きと美味しさとで目をまん丸くしているリリが、小動物みたいで可愛すぎる。
「ユーリ俺も食べてみたい。」
リヒトがあーんと口を開けて待っている。僕は男にあーんする趣味はないんだけど、仕方ないから口に綿菓子を放り込む。
あっ!しまった!これ、先にリリが食べたものだった。
「うん。いろんな意味で美味しいな」
リヒト…こいつ、絶対分かってて、あーんさせたな!くそー!悔しい!
「ユーリも食べたいよね。ちょっと待ってて。私が作ってあげる。えい!えい!はい!よし、出来たよ。はい、ユーリもあーんして」
リリが新しく綿菓子を作って、僕の方へと差し出した。思ったよりも特大だ。
「結構大きいの作ったんだね。」
「ユーリには、たくさん食べて欲しくて、可愛い弟に、私からの気持ちだよ。ほら、あーんして!」
「リリ、ありがとう。うん、甘くて、とても美味しいね。」
最後はやっぱりリリの言葉に僕の心は救われる。リリは、やっぱり最高の天使だ。
明日は、22時以降の投稿予定です。
一旦、幼少期の話は終了です。明日から数日はユーリ曰く、攻略対象?かもしれない彼らや、リリの親友のお話などを挟む予定です。




