↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
133/167

満月と炎の花 ⑥  



 リリが、容赦なく引き金を引く。


 ピュンッッッ!!  ドッッゴーン!!


 凄まじい爆発音と共に、ドラゴンの後ろの広範囲に渡る木々が消えた。


 いやいやいや、えっ?魔法銃から見たこと無い何かが飛び出していったんだけど、何?


 それに、破壊力が以前よりも上がっていて凄すぎなんだけど、どうして?


 リリ以外の全員が、真っ青な顔をして、この惨状に驚きを隠せない。


 ドラゴンに至っては、体を小刻みに震わせて、少し涙を浮かべているように見える。


「やっぱり、ドラゴンさんは強いわね。魔法銃を避けるなんて流石だわ。改良に改良を重ねた魔法銃は、狙った相手を必ず仕留めるだけの破壊力があるのに、それを瞬時に避けるなんて素晴らしい力ね。」


 いや、避けてなかった。ドラゴンは動けずに、その場に立ったままだった。


 リリの狙いが、たまたま外れたから、ドラゴンは犠牲にならなかっただけで、当たってたら即死だった。


「リリ、ドラゴンを殺しては駄目だと精霊王様に言われただろう。そんな殺傷能力が高い武器を使って、万が一にもドラゴンに当たってたらどうするの。」


 俺は、急いでリリに近寄ると、魔法銃をリリの手からすぐに離す。

 こんな危険な武器をリリに持たせて、間違ってリリに当たったら大変だ。


「あら?ユーリもこちらに来たの?見ての通り、ドラゴンさんは強くて、どんな攻撃にも対処できるから平気なのよ。本当に、ユーリは心配性ね。」


 可愛い笑顔を見せながら、呑気に見当違いの事を言うリリに、俺は力が抜ける。


「それでも、こんな危ない武器を使っては駄目だろう。真剣勝負には過剰な力だ。今のは、リリが卑怯な手を使った事になってしまう。ドラゴンが強かったから無事で良かったけど、やり過ぎたことは謝らないと駄目だ。」


 ドラゴンの威厳を保ちつつ、リリが二度と魔法銃を使わないようにするため、わざと卑怯という言葉を使う。


 リリは俺の言葉を聞いて、やっと気づいたようで、ドラゴンの後ろの消えた木々を確認する。


「ドラゴンさん、ごめんなさい。確かにユーリの言うとおり、武器を使ってはいけなかったわ。ドラゴンさんは、自分の力だけで、戦ってくれたのに、私は武器を使って卑怯でした。ごめんなさい。この勝負は、私の負けね。」


 リリが謝ると、ドラゴンがゆっくりとリリに視線を向ける。

 そして、先程とは違って丁寧な言葉遣いで答える。


「いえ、私も少し調子に乗ってしまったので、お互い様です。私も、いろいろとすみませんでした。今回は、私の負けでいいので、花はお持ち帰りください。」


 ドラゴンは、自分の事を『我』って言ってたのに、一人称が『私』になっている。しかも、とても丁寧な話し方に態度だった。

 

 本当に、ごっこ遊びの様な感じだったんだな。折角、キャラも作って挑んだのに、リリの純粋さに負けたのか。うちの姉が、純粋で可愛すぎて申し訳ない。


「それじゃあ、引き分けってことにしませんか。ドラゴンさんは本当に強かったもの。私が、魔法を取り戻せたら、今度は魔法で真剣勝負しましょうね。」


 リリの言葉に、ドラゴンが違う意味の涙を浮かべて、何度も頷いていた。


「取り敢えず、勝負は終わりでいいのか?そろそろ暗くなってきたから、セドリックのところに戻った方が良いのではないか?」


 ベルの言葉に、辺りを見渡せば、空は夕陽のオレンジから、夜の黒に変わってきている。

 

「急いで戻ろう。」


 俺たちは、そのままセドリック殿下の元に急いだ。



♢♢♢♢♢♢♢♢



「ああ、戻ってきたね。どうだった?楽しかった?」


 精霊王様が、戻ってきた俺たちに向かって、楽しげに質問する。


「楽しかったですよ。やっぱりドラゴンさんは強かったです。また、勝負する約束もしたんですよ。」


 リリの嬉しそうな報告に、精霊王様も満足気だ。


「楽しそうで良かったよ。それに、間に合って良かった。もうすぐ月が上り、光が届くよ。ユーリアスも王子も準備はいいかな?」


 精霊王様の言葉に、鼓動が速くなり緊張で表情も強張る。


「ユーリ、セドリック殿下、私は何も出来ないけど、応援担当として、2人を応援します。どうか、頑張ってください。2人なら大丈夫です。」


 リリも両手を胸の前に組み、傍で見守ってくれている。


 リヒトやベルも、ドラゴンまでも、見守ってくれていた。


「セドリック殿下、俺は余り、力になれないかもしれませんが、精一杯やるので、よろしくお願いします。」


「ユーリアス、私は君を頼りにしているよ。2人で、やり遂げてみせよう。」


 そう言って頭を下げた俺に、セドリック殿下が嬉しい言葉をくれる。


 そして、花畑を前にして、殿下と2人で並んで両手をかざす。


 しばらくすると、暗闇から優しい光が広がっていく。


「綺麗な満月だな。」


 精霊王様の呟きの後、月明かりに照らされた花畑一面に真っ赤な炎が広がった。


「今だよ。二人とも全てそのまま凍らせるんだ。」


 精霊王様の合図を聞いて、ありったけの魔力を使い魔法を発動する。


 目の前の炎が、段々と、確実に氷に変わる。


 勝負は、ほんの数分だけ。


「……っ。はぁ……きつ……。」


 俺は、すぐに魔法の威力が落ちてしまうが、セドリック殿下は全く変わることなく、目の前の炎を凍らせる。

 辛いはずなのに、表情に全く出さない。流石、セドリック殿下だ。


 数分で燃え尽きるはずの花は、あっという間に氷の中に閉じ込められ、目の前には炎に変わって、氷の花で埋め尽くされていく。


「二人とも凄いよ。全部一気に凍ったよ。綺麗な氷の花だよ。」


 リリが嬉しそうに飛び上がる。


「良かった。無事に、役目を果たせたね。」


 セドリック殿下が、そのまま地面に倒れ込む。かなりの魔力を使ったので、俺も殿下も立っていられないほど疲れていた。


「二人とも大丈夫?魔力を、私が余った魔力をあげるから、魔力吸収して下さい。」


 そう言って、リリが俺と殿下の手を握る。


「ハハ、ありがとうリリ。」


「リリアーベルのお陰で直ぐに回復できそうだよ。」


 リリの温かな魔力が、少しずつ体に流れてくる。体も少しずつ楽になってくる。みんなのお陰で、無事に終わることができた。

 

 これで後は、花を採取したら治療薬を作れる。

 

 これで、リリがまた魔法を使えるようになる。


「本当に、よかっ……。」


 ―――ボゥッ!!


 無事に終わって、安心した瞬間だった。


 目の前の氷の花に、再び炎が咲いた。




 


ここまで読んでいただき、ありがとうございます。



【補足】


リリの改良に改良を重ねた魔法銃は、当初のユーリの提案から、かなり外れた物に改良されてました。


1、普通の弾から、魔力を凝縮した魔力弾へ。威力数倍。

2、勝手に照準。リリの代わりに狙いを合わせる

3、生き物以外に攻撃。(リリに当たるのを回避)


 リック兄様とお母様の発案です。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。