前世を思い出した ①
「ユーリ、ごめんなちゃい。だいちゅきよ」
ズキュ―――ン。
「うっ…ぎゃわわわあぁぁ―――!!!!!」
「ユーリアス様!どうされました!誰か、誰か来て!ユーリアス様が…ユーリアス様が…!」
撃ち抜かれた胸を抑え、突然の激しい頭痛に耐えられず僕はそのまま、意識を失った。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢
「…うっ……まぶ…しい」
目を開けると、知らない天井…。キラキラと輝いてとても眩しく目を細める。
「あっ、ユーリ、起きた…よかった。」
声のする方へ顔を向ける。
「えっ…天使?俺は…死んだのか?ここは…天国?」
そこには、見たこともない程、綺麗な顔立ちの天使が一人。俺に嬉しそうな顔を向けている。
「ユーリアス様!目が覚めたのですね。エナ、すぐにお医者様に伝えて来て。ユーリアス様、今、旦那様達を御呼びしますね。」
天使の後ろに立っていた女性が、すぐに他の女性に指示を出し、自分も足早に部屋を出ていった。
(ここはどこだ?俺は…どうしたんだっけ?)
思い出そうとすると、突然大量の情報が頭に流れ込んできた。
高い建物に、沢山の人達、あれは…そう、車だ。空飛ぶあれは…飛行機に、スマホに、好きで見ていた動画…など。
そして、最後の記憶は、大学からの帰り道。目の前の子供を庇って、トラックに跳ねられたところで終わっていた。
(俺は、死んだのか…ここは、死後の世界なのか?)
俺は体を起こし、まずは周囲を確認する。どうやら、俺はベットに寝かされていたらしい。
(思ってた死後の世界とは違うな…)
そこは、とても豪華な部屋で、天蓋付きベットに、置かれている家具も上質な物に見える。死後の世界と言うより、どこかの高級ホテルのようだ。
「ユーリ、どうちたの?どこか、いちゃいの?」
心配そうに俺に近寄ってくる天使に、何か思い出しそうで、じっと彼女を見つめる。
(リリアーベル…)
ふと、その名が浮かんできて、俺は急いでベットから下り、鏡を見つけると、そこに自分の姿を映す。
そこには、天使と似た顔の小さな男の子がいた。鏡に触れると、その男の子も同じ動きをする。自分の掌を見ると、小さい子供の手になっていた。
(…思い出した。僕は、ユーリアス。リリアーベルの双子の弟で、ゴルドリッチ侯爵家の長男だ)
全部思い出した。僕は日本で死んで、ユーリアスとして転生したんだ。
「ユーリどうちたの?やっぱり怒ってるの?リリのこと嫌い?」
大きな瞳に涙を浮かべたリリが、悲しそうな顔で僕の隣にやって来た。
僕は、そんなリリをギュウと抱き締める。
「嫌いになんてならないよ。リリのこと大好きだよ。少し、混乱して…でも、もう大丈夫だから安心して。僕もさっきは意地悪言ってごめんね」
こんなに可愛い天使な姉を、嫌いになんてなるわけない。今までもこれからも世界で一番大切で大好きな存在だ。
「ユーリ!」
リリと抱き合って仲直りしていると、突然勢いよく扉が開いて、綺麗な女性と、整った顔立ちの男の人が、部屋の中に入ってきた。
そして、僕とリリを見ると、二人とも安堵の表情を見せ、綺麗な女性は、僕達に近づき一緒に抱き締めた。
(ああ、お父様とお母様だ…)
この綺麗な二人は、僕達の両親だ。夫婦とても仲が良く、僕達のことも大切に見守ってくれる自慢の両親だ。
「ああ、ユーリ目覚めて良かったわ。気分はどう?どこか具合の悪いところはない?」
お母様が、僕の顔色や体調に変わりないかと、体をグルグル一回転させてチェックしてくる。くすぐったくて、クスクス笑うと確認し終わったお母様が、ホッとした様子で、もう一度ギュと抱き締めてくれた。
―コンコン―
「失礼いたします。お医者様がいらっしゃいました」
家族で僕の無事を確認していると、さっきのメイドが医者を連れて戻ってきた。
「特に体に異常はありません。もう大丈夫でしょう。」
僕がベットに戻り、医師の診察を終えて、体に異常が無いことが伝えられると、みんな安心したようで、両親は抱き合い、リリは僕の右手を握ってくれた。メイド達も目に涙を溜めて、安堵の表情を見せた。
「ユーリ、念のため今日は、ゆっくり休んでいるんだぞ」
「あとで、ユーリの好きな果物を持ってくるわね。」
お父様が僕の頭を撫でてくれる。僕が頷くと、お母様と二人で部屋から出ていった。
「リリアーベル様もお部屋へ戻りましょう。ユーリアス様を休ませて差し上げましょう」
乳母のマリアが、リリに声をかける。リリは不満げな顔を見せたが、こくりと頷くとベットから降りて、マリアと手を繋ぎ扉に向かって歩き出した。
(あぁぁ…リリが行っちゃう。不満そうな顔も可愛かったな。本当に天使。)
扉の前で、突然リリが立ち止まり、マリアの手を離して、僕の方へ走って戻ってきた。
何事かと驚いていると、リリがベットによじ登り、僕のおでこにチュッと小さくキスをする。
「おやしゅみ、いい夢が見れまちゅように」
そう言うと、ベットから降りて、走ってマリアのところへ戻り、二人手を繋ぐ。
一度僕の方へ顔を向け、バイバイと手を振ってから部屋から出ていった。
「………いやいやいや、可愛すぎだろ。」
リリの可愛さに、悶絶する。
何て優しくて、可愛くて、弟思いの素晴らしい姉なのだろうか。
正直、可愛いだけじゃ表現できない。天使でも足りない。大天使?女神様?有りとあらゆる可愛いの頂点に君臨する程の可愛さだ。
はぁ、もっと語彙力欲しい。いや、いくら知識があっても、リリの素晴らしさを全て表現することは出来ないだろう。そのくらい可愛さに溢れている。
「ちょっと、寂しいけど、一人になって少し記憶を整理しようか…。ふぁあ、何だか急に眠くなってきた。」
そういえば、忘れてたけど、僕は今3歳だったな。
重たくなった瞼を閉じれば、一瞬で眠りに落ちた。




