洞窟・改造・子供達
今、俺は馬車で洞窟の入り口に向かってるんだが、なぜ舗装道路なんだ?
まるで城塞の様な門を潜って小さな広場に馬車を止めたよ。
ご丁寧に馬小屋まで作ってあるし、洞窟の入り口は四角く切り直されて、
両脇には岩盤にレリーフが、足元には、階段が付いている。
女神を象ったレリーフの左側は剣を、右側は縦長の看板らしき物を持って
いるが、全ておかしい。
まず女神像、これ、絶対にあのボーカロイドだよねえ、ツインテールだし
ミニスカートだし、ニーハイソックスって何なの?。
次に看板に彫られた南部方面軍師団司令部 ってなに?ここに旅団が居る
のか?歩兵師団が居るのか?
どうせ直也が、はっちゃけた結果だろうがたった4体のゴーレムで、これ
を作り上げる事は無理だ。
たぶん、新しいゴーレムを作ったんだろうが、一体どんなからくりなのか、
興味がある。
洞窟に入ると、その疑問はすぐに解けた。
無数の蜘蛛型ゴーレが、そこら中で掃除してやがる。
《やあ、アル、お帰り》
「おう、ただいま、は、いいけど良くこんなにつくったなぁ」
いろんな、おもちゃらしき物の山と滑り台が鎮座している傍で、子供達が
絶賛、お昼寝中だ。
《もっといっぱい作ろうと思ったんだが、子供達が自分で色々遊び方を、
編み出すもんで、新しく作る隙がないんだよ》
「そうか、子供達が、みんな楽しそうでなによりだ」
《それに、これぐらいなら、あの子達の個人所有ても問題ないだろ?》
「ああ、滑り台は無理だがな」
《お前の異空庫なら入るだろ、ちびっ子達のお気に入りなんだ》
「ああ、なるほどね、判った。なるべくみんな同じ所に預けよう」
《そうしてくれ、なるべく引き離したくない》
「……やっぱり、忘れられないか」
《どうしても、妹とかぶっちまってな、何とかたのむよ》
この親子とか兄弟姉妹の絆が、どれ程深い物かは、想像は出来るが、実感
する事は、俺には出来ない。
俺は孤児で親の顔も知らないし、物心着いた頃には一人で貧民街で野良犬
同然の生活をしていた。
ある時、食い物を探しに森に入り込み、魔物に追われて奥まで踏み込んだ
あげく、たまたま発動した魔力暴走で巨大な爆発をひきおこした。
爆心地の真ん中で、全身から血を吹き出し、死にかけた俺を師匠が拾って
くれたのはこの頃だ。
だから、俺に家族は無い。
強いて言えば、死んだ師匠がそれに近いかもしれないが、俺にとって師匠
は師匠で、それ以上でもそれ以下でもない。
※アル君のウィキペディア(Wikipedia)
【 魔力暴走 】
年齢と共に増加する魔力を保有できる体になるため、一定の時期(人種で
10歳前後、獣人種で7歳前後、エルフやドワーフでは15歳前後)が来ると
細胞レベルで肉体が変化するが、魔力と体の同調には僅かに誤差がでる。
この誤差が肉体優位の場合は、その差の大きさによって、ただのくしゃみ
から、死にかける程の高熱まで様々な症状が出るが、症状が重い程、強力
で特殊な身体能力を得る。
例として、脅威的な跳躍力とか、強力な聴力や視力、等が有るが、これは
力が特殊で強力な程、極端に少数になる。
傾向としては獣人やドワーフが殆んどで人種は極僅か、エルフに至っては
何百年に一人ぐらいな程で、皆無に近い。
不幸な事だが、ごくまれに強大な力に耐え切れず、死に至る者もいる。
逆に魔法寄りなのがエルフや人種で獣人やドワーフは非常に少ない。
普通は人種で持つコップに、ヒビが入る程度、全く気が付かない人も大勢
いるし、大多数の人種はこれに入る。
能力は、魔道具を起動させる程度で、魔力が少な過ぎて、魔法は使えない。
魔法に才能が有るとされる人間は、小さなつむじ風や発光現象を起こすが、
魔法使いと称されるのも、このクラスであり、エルフでは皆がこれと同等
か、それ以上である。
そして、家を吹き飛ばしたり、壁に大穴を開けたりした者たちは、内包す
る魔力の大きさから、その殆んどが、魔導士を目指す。
ちなみに、高位のエルフは全員が皇家に帰属するので、魔導士は居ない。
「アルギス公国って所が聖王国と戦争してるが、国の3割程、侵略された
所で踏ん張ってるんで、戦場で恩を売りつけようと思う」
《そこなら保護者が見つかるのか?》
「確かに王族は人族だが、国民の半分近くは獣人なんだ」
《そこなら獣人の子供を保護してくれる人が見つかるのか?》
「ああ、断れないぐらいでっかい恩を売りつけてやるよ」
《あの子達を不幸にする奴だけはやめてくれよ》
「もちろんさ、そんな奴は選ばないよ」
《ほんとに頼むからな》
「心配性だな、それよりもまず、子供達を安全に移動させる手段だ」
《その為に馬車を調達したんだろ》
「調達はしたんだが、あんまり上等じゃないんだよ、天井も無いし」
《じゃあ、改良するしか無いだろう》
「でも、重すぎると馬が引けなくなるぞ」
《そこはベアリングを使って抵抗を減らせばいいじゃないか》
「……………ベアリングって何だっけ?」
《ちょ―っと待とうかアル、おまえ、あれだけあちこちの研究所や大学に
潜り込んどいて、こんな基礎的な機械部品を知らないって》
「いや、化学や物理学は興味深かったし、料理や芸術等の文化は必須だし、
でも、機械は、まあ、その、肌に合わないと言うか、何と言うか、」
《それで興味の無い機械工学は見向きもしなかった、と?》
「……………………てへ♡」
《可愛く無いわ‼…はぁ、とっとと馬車を出せ、改造を手伝うよ》
「手伝うんじゃなくて、もう全部直也に任せてもいいんだけど」
《そんな訳にいくか!全くこれだから魔導士ってやつは…》
「人種じゃなくて魔道種だから仕方がない」
《はぁ…》
直也に言われるまま馬車をあれこれ改造していたが、何処にも元の面影は
残っていないんだが……。
「あのぉ、直也さんや、四輪独立懸架って何かな?スタビライザーも聞い
た事が無いんだけど?、サスペンションはちょっと耳にしたかな、でも
ショックアブソーバもダブルウィッシュボーン方式も、わかんないから!
説明も要らないから!」
《わかった、わかった、じゃあ次はここのギミックなんだが……》
「…勘弁してください。使い方だけ教えてください」
《え―—――っ、楽しいのに―》
このまま直也に付き合ってたら、説明だけで日が暮れる。
俺は、使えさすればいいのだ。
「おや、子供達が目を覚ましそうだ、急いでお世話をしなければ!」
《おい、こら、逃げるな!なんだ、お世話って!》
「いや、忙しい、忙しい」
目を覚ました子供達の口に、飴玉を放り込みながら、とりとめのない話を
聞いていた。
リリ「あのね、あのね、まるいのがね、たのしいの」
「そうか、沢山遊んだ?」
リリ「うん、ルナもいっしょ」
ルナ「ころころ、ころがるの」
リリ「へへ、ミアもいっしょ」
ミア「ぽんぽん、はねるの」
リリ・ルナ・ミア「「「おいかけなきゃだめなの」」」」
しっかり本能全開みたいで、安心した。
一番衰弱していたリリが、一番元気なのがなにより嬉しい。
サナ・モルナ「「アル様、お帰りなさいませ」」
「ただいま。二人とも大変だったろう」
サナ「いいえ、直也様が食事も何もかも作ってくださいました」
モルナ「おもちゃも作って頂いたし、この櫛や腕輪も作ってもらいました」
「うん、二人とも似合ってるじゃないか」
サナ・モルナ「「えへへへへへへ」」
やはり女の子、アクセサリー好きは世界も種族も超えて同じらしい。
そして、ならんで胸をはってる男の子3人組。
「おお、勇ましいな」
デクシス「うん。俺は騎士になるんだ。二人は従者だ」
クリッカ「ずるい!ぼくも騎士がいい!」
ガット「ぼくは、冒険者がいいな」
デクシス「むむ、冒険者も強そうだな、どっちにしよう」
ガット「ねえ、アル様、どっちが強いの?」
「どっちも鍛錬次第だが、騎士なら剣の腕が一番大必要とされるが、
冒険者は剣以外でも強ければ何でも有りだな」
ガット「何でもいいの?」
「そうだ。冒険者は色んな仕事をするんだ。弓でも短剣でも魔法でも
強ければいいんだ」
ガット「じゃあ、やっぱり冒険者になるよ、クリッカ」
デクシス「俺はやっぱり騎士がいい。じゃあアル様、それで試験して」
「はい?」
ガット「直也様がアル様の試験に合格したら本物の剣を作ってくれるって」
デクシス「アル様、早く試験をやって」
「わかったから、ちょ―っとまっててくれる?」
…………………山口レーシング株式会社・洞窟工場………………
「………直也、忙しいところすまないが、ちょっといいか?」
《ああ、大丈夫だ、もう内装と外装だけだからな》
「あのデクシス達の言ってた試験てのは何のことだ?」
《その事か、本物の剣が欲しいって言うから、アルの試験に合格したら、
作ってやるって言ったのさ》
「まだ早いって言えば済むだろう」
《その一言では俺が納得できないんだよ》
「はぁ?」
《動きが子供のそれじゃねえ。ちゃんばら遊びからあっと言う間に進化し
たんだ、獣人は、皆そうなのか、俺だと判断できねえ》
「あの年だと、そう変わらないんだがな、まあ見てみるよ」
《頼む》
「わかった。それと話は変わるんだが、この山口〝改”てのはなんだ?
それに、あそこに立っている看板と社名は?」
《よくぞ聞いてくれた!日本にはカキモトレーシングと言う市販エンジン
のチューニングに於いては伝説的な会社が有ってだな、その改良された
車両やマフラーには、柿本〝改のステッカーが、それはそれは、まるで
その性能を保証する神のバイブルもさもありなんと…》
「………子供達見て来る」
なにかのスイッチが入った直也は放置しておこう。
「では試験を始めよう。まずはデクシスとガットで模擬戦闘を始めて」
「言っておくが勝ち負けは関係ない。両方合格も両方失格もあるからな」
高速で左右にステップを踏むガットと、じっと盾を構え、待ちの構えを取
るデクシス。
決して遅くはないガットの攻撃を、しっかり盾でいなしたデクシスの一撃
がガットの頭上を襲うが体を急激に捻ったガットの肘をかするだけに終わ
った。
確かに子供の動きでも立ち合いでも無いな、直也が困惑するのも当然だ。
「はい、それまで」
「次はガットとクリッカだ。デクシスはこっちに」
ガットとクリッカの模擬戦は、まあガットの一方的勝利だな。
スタイルが同じだから身体能力の差がそのまま出た。
「デクシスはどうして剣が欲しいんだ?」
デクシス「…剣が無いと戦えないから」
「戦う?誰と戦うんだ?」
デクシス「父さん達を殺したやつら」
「復讐したいのか?」
デクシス「それもあるけど、剣が無いとモルナ達を守れないから」
「ほう、守るねえ」
デクシス「父さんから、誰かを守りたくなってから剣を取れって言われた」
「お前にその力がなくてもか?」
デクシス「どんなに力があっても守る物がない剣は弱い、例え今は弱くて
も、いずれは守る剣に負けるって言ってた」
「りっぱな父親だ」
デクシス「うん!分隊長って言ってた!」
「そうか、ところでどうして〝モルナ”達なんだ?」
デクシス「えっ、あっ、いや、その」
「くくっ、答えなくていいぞw」
ガットとクリッカにも色々聞いたが要約すると2人とも自分を守る為らしい
まあ、魔物や猛獣が居る世界だし、これが普通だ。
結果、合格したデクシスには剣を、準合格としてガットに短刀を、そして
おまけの準々合格としてクリッカには小刀を約束した。
俺も多少は甘いとは思うが、まあ大丈夫だろう。
《わかった。剣と短刀と小刀だな、出発までには用意するよ》
「よろしくたのむ」
《あと、アルには馬車の構造を少し理解してもらうぞ》
「わかったけど、あれを馬車と呼んでいいのか?」
《馬が引くんだ、馬車に決まってるだろう》
「キャンプ場とやらで見た気がするんだが」
《…………………気のせいだ》
「…………そうか」
《…そうだ》




