#24 正解?
すべてを話し終えてしばらく、ラアルさまは言葉を発さなかった。
洗いざらい全部話した。わたしが別のゲームっていうか世界で生きてたことも花村祥子やルウイたち聖なる獣の化身のことも。
しらを切らなかったのは、単純に事態をややこしくしたくなかったからだった。それとラアルさまはたぶんだけど、わたしを信じたがってる。わざわざルウイたちのことを聞いてきたってことは、わたしの口から否定してほしいからなんじゃないかなって思ったのだ。
そうしたら全部話すしかないじゃんね。さすがにゲームのことは省略したけど。
「大変な思いをされたのですね」
ラアルさまが手を離して言った。その胸元のあたりでじわじわと金色の光が上昇していくのを、わたしは見る。これまでと少し違うのは、そこに色のついた花のようなエフェクトが混ざっていることだった。
わたしは驚いて顔を上げる。
「信じてくれるの?」
「信じます」
「だって違う世界からきたとか……漫画じゃないんだから」
「“マンガ”?」
ラアルさまが小首をかしげた。わたしはあわてて別の言葉に言い換える。
(でたらめ言わないでくださいって怒られるかと思った)
てかどっち選んでも死亡すると思ってた。わたしは胸をなでおろす。
「どうして、信じてくれるの? もしも同じ話をされたのがわたしだったら、簡単には信じられないと思う」
「そうですね」
でも、とラアルさまが言った。
「覚えていますか、おねえさま。初めて出会ったとき、見ず知らずのわたくしに、あなたはとても親身になってくださいましたね。そのあなたが言うのなら、わたくしは信じます」
「ラアルさま……」
今度はわたしがラアルさまの手をとった。それからひし、とラアルさまに抱きつく。
「ラアルさまが信じてくれて、嬉しい。大好き。もう何が何だかわからないし、こわいし、ずっと、心細かった」
「ええ、もう大丈夫ですよ。わたくしがきっとおねえさまを守ります」
ラアルさまがやさしい手つきで背中をなでてくれた。それからわたしたちは、ルウイたちの目的について意見をかわしあう。目下わたしの胃をキリキリさせている“静暁の魔女”に関する事項については、ラアルさまははっきりと否定をした。
「静暁の魔女に関して第五聖人ヴェルニが見誤るとは思えません。おねえさまは、静暁の魔女ではありませんわ」
「よかったあ」
安心したら涙が出てきた。本当に、ずっとこわかったのだ。
「アレクくんに倒されなくて、いいんだね」
「……」
「一緒にいて、いいんだね……」
「……」
夜になるとアレクくんが帰ってきてわたしたちに一日のことを聞いた。イドの町に続いて第五番聖都でもあんなことがあったので一日中気が気でなかったようだ。あったといえばあったけれど、コセムくんの話をすればおのずと例の常連さんについても話をしなきゃいけなくなる。
(まあ、結果として事なきをえたわけだし)
報告をしておこう。そう思った隣、ラアルさまがするりとわたしの腕に自らの腕をからませてきた。
「おねえさまにたくさんお話ししていただきました」
甘えるみたいに身を寄せられて、わたしの顔はだらしなく緩んだ。うれしくなってラアルさまをぎゅってすると、アレクくんの顔がはっきりとひきつる。
というのも、基本的にラアルさまってば、必要以上にわたしに接触しないようにしてるみたいなのだ。曰く、聖女としてひとびととの節度ある距離感を心がけてきたので、個人的な友人に対してどういうふうに接したらいいのかわからない、ということだった。
ラアルさまに打ち明けたことで心がかなり軽くなったわたしは、ご機嫌でアレクくんに返す。
「うん、昼間にたくさんおしゃべりしてね、友情を深めたんだよ」
「そ、そっか……」
わたしとラアルさま二人に対して一人だけ男の子のアレクくんは、そう言ってベッドに入っていった。背中に心なしか哀愁を背負っている。
「楽しく過ごせたなら、よかったね」
まもなく聞こえてきたのへ、わたしは「うん」とうなずいた。




