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#13 魔王じゃないけども悪役令嬢です


 ご飯を食べて元気を補充したら出発だ。スタミナのない「ジアンナ」の体は今日はここで休みたいと訴えていたけれど、ちんたら滞在してイドの町の皆様にさらなるご迷惑をかけてはいけない。さてどこへ逃げたものかと考えたわたしに、アレクくんがこんなヒントをくれる。

「ここから五日ほど歩いたところに、聖なる都と書いて第五番聖都があります。第五聖人ヴェルニ様にお会いしてみませんか。ヴェルニさまはとても公正で、慈愛に満ちた方だと聞きます。もしかしたら、ジアンナさんの力になってくれるかもしれません」

 国名のくだりで判明した通り、どうやら地理はアレクくんたちの世界が反映されているようだ。わたし自身旅の知識といえばRPGゲーム程度しかないので、全面的にアレクくんに従うことにする。キャンプの経験なら少々だけど、また勝手が違うだろうし。


「俺も、ちょうどヴェルニさまにお会いしてみようと、思っていて……」


 アレクくんが目をふせるようにして言う。

「曰く、世界を創造した神ウルコルによって最初にうみおとされた人間をパンディオといい、死したのち、五つに分かれたパンディオの魂を受け継いでうまれたのが五大聖人なのだそうです。聖人は予言者、もしくは預言者としてひとびとを導く役割をしています」

「なんか由緒正しそうな感じだね?」

「はい。五大聖人には世界中のすべてを見通す力があり、どんな者も彼らの前でうそをつくことはできないと言われています。なので、五大聖人の言葉はときに王よりも重んじられるそうです」

「そ、そんなに……?」


 なんか心配になってきた。

 だって聖人て勇者予言するんでしょ。いくら別世界の「悪」とはいえ、わたしのことも容赦してくれなかったらどうしよう。アレクくんの前で正体あばかれて、捕らえられて投獄からの磔とかになったらどうしよう。

 とたんに怖気づいたわたしをどう解釈したのか、アレクくんがくすっと笑った。


「だいじょうぶですよ、ジアンナさん。聖人さまはすべてを見透かすけれど、裁いたりとがめたりすることはない。ただ道を示してくれるだけです」

「それがもし、魔王だとしても?」

「魔王なんですか?」

「違うけど」


 そもそもまだ何もしてないし。ジアンナ自身だって町を滅ぼしたとかメイドさんに意地悪したとかそういう経歴はない。むしろ設定上、ジアンナは「聖暁の乙女」としてふさわしくあるよう幼いころから厳しい教育を受けてきていることになっている。

 それらをすべてクリアしてきたジアンナは自信と誇りに満ちていた。そんな彼女がはたしてぽっと出とはいえライバルに嫌がらせなんてするのか? という疑問がないでもないけど、それ言ったらこのゲーム自体がなりたたなくなるわけで。うーん、「ジアンナ」として生きてきたから、ちょっとやっぱ気持ち的にジアンナの肩持っちゃうよね。

「ジアンナさん?」

 アレクくんが心配そうに呼んだ。うん、とわたしはうなずく。


「なんか、大丈夫そうかも」

 だって理由がないもん。ここまでだってそうでしょ、圧倒的に「された」のはわたしの方だ、悪役令嬢なのに。なんならわたしの死とひきかえに世界が平和になるし。あれ? わたし何も邪悪じゃないね???

「よかった」

 アレクくんがにこっと笑う。それからわたしたちは野宿を挟みながら第五番聖都へ向かった。




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