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忠誠を誓うモノたち

 ライトたちはオノデラ・ユキの自宅マンションへ急いだ。

 昼間の空は晴れていた。気温も寒くはなく、暑くもない。いい感じだ。

 ダラン王の演説は、おわった。ディテクタのニュース速報で、王のロボット軍隊がマフィアの最大アジトへと攻めていくかもしれないというものが流れた。

 ラップ人マフィアとゾルガ人マフィアの巣食うこのレジ街で、そのどちらをロボット軍隊は攻め落とそうとしているのだろう。

 攻める、という情報しかなかったので、ライトは苛立っていた。

 その戦場の場へ駆けつける話はなかったが、そのどちらかさえわかっていれば安心できるのだ。


 オノデラ・ユキの暮らす部屋は、もともとライトが借りていた部屋だった。ライトはいま、べつのマンションで暮らしている。仕事場の寮のようなところで。ぜんぜん苦はない。ただ毎日、さみしいだけである。だから、ユキのところへ遊びに行く。ユキが構ってくれると思っていたから。

 だが、

「だれもいねえか」

 そう、

 いま、部屋にはだれもいなかった。

 シャルナ姫も、ヤマトという男も。

 とうぜん、ユキも。

「どこに行ったんだ?」

「風は、感じ取れねえな」

「ジェイドは風の使いなのか?」

「ああ。だが、さっぱり駄目だ。本当にどこにいるのかわからねえ。おそらく遠くまで行っちまったんだろうな」

「なるほど」

 アンバーはディテクタでユキにずっと連絡を取ろうとしていた。

 ジェイクはちいさな風をおこして部屋内部の捜索をおこないはじめた。

 ライトも目視で、なにか手がかりがないか探しはじめた。

 だが、それらしきものはなにひとつ見つかりそうになかった。ぱっと見ただけだが、ここでなにかを見つけ出せるとは到底、思えなかった。

「まずいな……」

 ライトはつぶやいた。このままではシャルナ姫を見つけられないかもしれない。

 もしもすでにシャルナ姫が王城へ連れていかれていたのだとしたら、それこそ手遅れの可能性もある。

 偽者の王がなにをたくらんでいるのかはわからないが、偽者の王にとってシャルナという存在はただの邪魔者でしかないはずだ。

 危険な状態であることに間違いはないのだ。

 一刻も早く見つけ出さなければならないのだ。

 そうだというのに、肝心のユキはいない……。

「まずいぞ」

 ジェイクが言った。

 ジェイクは外を眺めていた。

 ジェイクがふたりに振りかえって言った。

「ゾルガ人タイプのAIロボットが包囲してきやがった」

「なんだって!?」

 ライトは窓に駆け寄った。カーテンの隙間を覗きこむと、地上には数体の巨人ロボットが立っていた。

「あんなのぶち壊しちゃえばいいじゃない」

 うしろからアンバーがやってきて言った。

「そんなことできるはずないだろうが!」

「なんでよ、三人でかかれば余裕じゃないのよ」

「AIロボットを破壊すれば、おれたちがマークされるんだぞ!?」

「あ、そーいうこと」

「おまえは、この状況を本当によくわかっているのか!?」

「わかってるわよ、ユキがいないってことくらい」

「そーいうことじゃあねえよ!」

「なに言ってんのよ」アンバーは言う。「ユキがいれば、ぜんぶ解決じゃない。だから、あたしはさっきから一生懸命、ユキに連絡取ろうとしてんのよ。馬鹿なの、あんた?」

「ば、馬鹿って言うな、おれはおまえより年上だぞ、アンバー!」

「うるさい、ヒゲ! 耳元で叫ばないで!」

「ひ、ヒゲはオシャレだ……」

「あっそ」

「てめえらいい加減にしろ!」

 ジェイクが怒る。

「やばいやつらがやってきたんだ、早くどうするか考えろ!」

「あんた、治安活動家の人間なのよね。だったらあんたが一番、わかってんじゃないわけ?」

「ああ、よくわかってる」

「どうすればいいのよ」

 ジェイクは言った。「逃げる」

 ふたりは黙りこんだ。ジェイクにたいして呆れたのだ。

 だが、ジェイクは真面目だった。

「それしかない……」

「オーケー、わかった」

 ライトが言った。

「だったらいまから三人でうまく逃げる方法を考えよう」

「逃げるわけ?」

「アンバー、てめえ、すこしはおれたちの言うこと聞けよ!」

「ジェイクまでそんなこと言うわけ!? もう、やってらんないわよ!」

「戦って勝っても、シャルナ姫やダラン王は取りかえせねえかもしれねえんだぞ?」

 そっぽをむいていたアンバーは視線でジェイクに振りかえる。

「ふたりを取りかえせないのはまずいわね」

「だろ?」

「ええ。だってふたりはあたしの奴隷だし」

「なんでそうなる……」

「やっぱりあのふたりは金になるし」

「もうやめてくれ、おれのメンタルも持たない……」

「でもまあ、あのふたりはそうかんたんにくたばったりしないわよ。あのふたりは見た目とちがってかなり強い精神力を持っているもの」

「そうだと信じたいな」

「あたしは信じてるわよ」

 ジェイクは微笑んだ。だがアンバーはそんなジェイクを怪訝に見かえした。アンバーとしては「ほら、本音を話してあげたわよ」という感じだったのだろう。それでジェイクは微笑んだのだが、その微笑みをアンバーは嫌った。やはりアンバーはユキ以外とは良い関係を結ぼうとしないんだろうな、とライトは肩を落として思った。

「どこかでエア・カーを手に入れよう」

 ライトは提案する。

「そのまえに、ここをどうやって脱出するのか、よね?」

「ああ、わかってる」

「走るしかねえだろ」

「また、走るわけ!?」

「わがまま言うな!」

「そうだな、走ろう」

「よし、行くぞ!」

 三人で部屋を飛び出した。



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