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(32)ボッタクリ商店

DATE : H27.1.26

TIME : 18:58

STID : 00941724


「つ、疲れたぁ…」


あかり姉とグループホーム「朱琴荘」に行ってから、瞬く間に…本当瞬く間に、1日が経った。


俺はあの後、下宿に帰りつくとすかさずバイト先へと向かい、50人前の予約を取った申し込み用紙をバックルームのトレーボックスの中に叩き込み、テンション高いまま、朝6時までの仕事を果敢にこなした。


「俺、50人前の大口予約取っちゃってさぁ」

「ホントに!? そりゃ凄いね、礼雄っち」

「小野田さんはどう? 15人のノルマはこなせそう?」

「ま、あたしはボチボチかな、もうちょっとでノルマクリアって所」

「そうかぁ、まぁ頑張りたまえ、ウハハハ」


あまりにテンション高すぎて、小野田さんにドヤ顔で語ってしまったのはちょっと…いやかなり痛かったかもだけど。


そして下宿に帰り、仮眠を取ってうっかり寝坊しそうになりつつも、俺はなんとか昼までに起き、午後からの授業の「経済史」「歴史民族学」「倫理学」の3コマを居眠りせずにやりぬいた。

そしてわき目も振らずに下宿へ帰り、晩ご飯の際、小夜子叔母さんに営業がうまく行った事を報告し、やっと2階の自室に上ってきたのが今。


昨晩から今晩までの、この濃密な生活が冒頭の台詞「疲れた」を言わせた所以だ。

俺はベッドに倒れ込み、そのふかふかぶりに極楽気分を味わってから、明日の事を考えた。


明日は27日の土曜日。

午前中にバイトがあって、そこからは月曜日までフリーだ。

この土日の間に、レポートをどうにかしてしまいたいが…。


…土日か。


俺は起き上がると鞄からヘッドセットを取り出し、スマートタブレットに装着。

そして、「リヴァイアサンズ・メルヴィレイ」と、何日ぶりかにゲームを起動した。


いい加減、もうほとぼりも冷めきってるころだろう。

それに、土日にまた定例イベントが始まるかもしれないから、その情報収集も必要だ。


「(また、こないだみたいに、イベントで稼げたらいいな…)」


そんな事を思いながらゲーム内にログインすると、俺のアバター「レオ」はネージュ村の中央の広場に出現する。


ステータスは…。 

オリオンとの戦闘直後のままだ。

HPが1割程度しかないのを見ると、どうにも心ともない気分になり、体力を回復させるべく宿屋に泊まる。

画面が暗転し、恒例のCFの後に


「逆水平斬り(1)を修得しました」

「ジャストガード(2)を修得しました」

「『素早さ』が1あがりました」

「『HP』の最大値が2あがりました」


ポップなジングルと共に、マイアバターのパワーアップを知らせるメッセージ。


…お、「逆水平斬り」を覚えたぞ。

確か、大会で相手にした「ユーズ」がこれを組み込んだコンボを使ってたはず。

後で登録にチャレンジしてみよう。


「てか、その前に…」


やる事がある。 まず、装備を購入しなくては。

PK対策にせよ、ダンジョン探索にせよ、マイアバターを強化しないとゲームが進まない。

龍真から借りた50,000Cenは残して、イベントで得た90,000Cenを装備に突っ込もう。


…これはゲームのイベントで得たお金で、本当に課金してる訳じゃないしな。


俺は町外れにあるオークションハウスに入ると、武器屋のカウンターへと並び、品ぞろえをタップする。


ーーーーーーーーーーー


ショートソード    1,000Cen 攻撃力+5

ラストシミター    3,700Cen 攻撃力+12 毒:2%

リップカトラス    7,500Cen 攻撃力+25


フランキスカ     1,500Cen 攻撃力+3 投擲可


ローグダガー      999Cen 攻撃力+3 投擲可 毒:15%


チェインメイル    3,000Cen 防御力+10

ダイルメイル     28,000Cen 防御力+70


ウッドシールド     500Cen 防御力+2 中段

ナイトシールド    5,700Cen 防御力+20 中段+下段

氷結盾ハンリブルケ 150,000Cen 防御力+30 対氷防御+72%


ツヴァイハンダー   70,000Cen 攻撃力+150 両手剣

炎神剣ゴッドレオン 500,000Cen 攻撃力+999 両手剣 対火防御+25%


ーーーーーーーーーーー


「うはぁ」


思わず、そんな声が出た。

オークションハウスは、普通の武器屋と違って、素材を持って行かなくても、金さえ出せば(割高だけど)いきなり高級な武器が買える。


だけど最後の「炎神剣ゴッドレオン」。

いくら現金で5万円だからって、攻撃力+999とか、序盤からバランス無視し過ぎワロタ。


「…でも、こうやって課金させてるんだろうなぁ」


強くなりたきゃ課金しなケケケー、という運営の舌なめずり顔が目に見えるようだ。

そんな見え見えの作戦に引っかかるなど、ゲーマーとして愚の骨頂、ってのは分かってる。


でも、正直欲しかった。 この剣。

というのも、タップして剣の詳細な説明を見ると、


「炎を司る神の獅子『ゴッドレオ』の力が宿った魔法剣。 強烈な火属性により、威力は弱いが魔法の杖代わりに使用する事ができる。 魔法威力:+39%(炎属性のみ) 消費MP:87%」


と書いてあったのだ。


神の獅子。 ゴッドレオ。 …カッコいいじゃん!


これ欲しいなぁ…。

でも、火炎属性の武器って、アンデッド退治とか、水や氷属性の敵を相手にするための武器ってのが相場だしな。

序盤は無属性、でも威力が高いのが汎用的に使えて一番良いってのは分かるんだけどなぁ…。

でも、この「2DAYS ITEM」という小さい赤いタグが気になるんだよなぁ…。

多分2日間の限定販売、って事だろうけどなぁ…。

でも、これ買ったら、マジで即座に無双OROSHIだよなぁ…。


と、俺は買えもしないのに、画面を見ながらモヤモヤとした思考を巡らし、しばし固まっていた。


「…後で買うか」


ツヴァイハンダーを買って、両手剣使いになるのも良いけど、それだと片手剣の固有技が無駄になる…でも攻撃力+150は美味しいなぁ…とか考えた所で、俺は思考を打ち切り、次の店を見て回る事にした。 

購入したいものが、まだ他にもあるからだ。


次の店は、魔法の本屋。


俺が最も欲しい魔法、ヒーリング。

アレがあれば、冒険の難易度は劇的に異なってくるはず。

それに、のぞみさんこと、トラウムは何度かPKを受けているはず。

魔法なら、別にPKされても奪われる事はなく、恒久的なパワーアップに繋がるんじゃないのか、と思ったのだ。

だが、魔法の本屋の品ぞろえを見て、俺はまたも絶句する事になった。


ーーーーーーーーーーーー


「ファイアーボール」:5,000Cen

  ※炎の玉が敵を焼き付くす。


「サンダーアロー」:9,000Cen

  ※稲妻の槍が敵を貫く。 麻痺効果+18%


「(SOLD OUT)」

  ※????


「マジックプロテクション」:25,000Cen

  ※魔法に対する抵抗力を1分間に渡って+15%する。


「(SOLD OUT)」

  ※????


「オートヒーリング」:120,000Cen

  ※体力を1分間に渡って大幅に回復する。


「レビテーション」:270,000Cen

  ※1分間、宙に浮いたまま移動ができる。


「エネミーアナライズ」:30,000Cen

  ※モンスター及びプレイヤーの能力を見る事が出来る。


ーーーーーーーーーーーー


全体的に価格が高い。

龍真が、魔法の本は高額な課金アイテム、って言ってたけど、高いなんてもんじゃねえだろ。

イノシシに換算したら、何百体になるんだこれ。


「…ヒーリングは…あった」


目的の魔法、ヒーリングは一応あった。

オート、という余計な冠頭詞が付いているけど。


「オートヒーリング」…。


1分間もの長時間回復。

戦闘中には使えなさそうだが、MPの消費量とHP回復量のバランス次第では、クエスト途中の宿屋代わりとして使えるかもしれない。

だけど、情報不足の今じゃ、それが判断できない。


くそ…。 

買って試そうにも、120,000Cenだと、龍真から借りたお金にも手を付けないと買えない。

だけど、それだと多分、次の定例イベントで課金できなくて負ける。


「…高すぎるんじゃないのか? これ」


だが、俺がそう一人ごちた瞬間、「オートヒーリング」が、「SOLD OUT」という表示に変わり、


「やったった! 『オートヒーリング』買うたった! 他人に取られるとこやったで、危なかったー!」


後から来た客が、そう叫んだ。


「…な!?」

「あー、ええ買いもんしたわ、さぁ帰ろ」

「ちょっと待て、お前!」


俺はすかさずシングルチャットで、そこから足早に去ろうとするアバター…黄緑と橙のやたら派手な外見の奴…を叩いた。


「…!?」


会話ウインドウにポップした相手の顔は、失敗作のピエロの面のような、奇怪な面を付けていた。


<続く>

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