(9)キープスマイリング
DATE : H27.1.20
TIME : 11:04
STID : 00941724
「お前なぁ…何やってんだ! しっかり確認しねぇか!」
「す、すいません…。 お客様にも確認して下さい、と言ったんですが…」
「客が確認とかするかッ、このクソチビがッ!」
俺、桐嶋礼雄のアバター「レオ」が、謎のPKプレイヤー「オリオン」に惨殺されてから、次の日の朝。
この日のバイトは、朝勤務(8:00~13:00)だったのだが、またそこで俺はヘマをし、店長から店の裏に呼び出されていた。
その原因だが、主婦らしきおばさんが、コンビニでガス、電気、水道の公共料金を支払いに来た。
公共用金の支払いは、レジを通して店の領収印を打ち、領収書を相手に返せばそれで済む。
だが、運悪くというか、どこか気がそぞろだったのか、俺はぴったり重なっていた請求書のもう1枚に気づかなかった。
つまり、未支払いの請求書の半切れがコンビニにそのままあるのだ。
幸いにして、そのおばさんは店長の知人だったらしいので、今から店長が頭を下げて、支払いのお願いに行くのだが…。
「相手さんが『払わない』って譲らなかったら、また欠損でお前の給料から引くからな、覚悟しとけよ」
「ええっ!?」
だってそのガス代、16,000円くらいあっただろ!?
それ全部俺のせい!?
それじゃバイト代とか残らねえじゃん!
「何が『ええっ!?』だ! だから誰のせいだと思ってんだよ! 欠損が嫌なら、そもそもミスすんな! お前みたいな足手まといののせいで、俺まで手間喰うハメになるんだよ!」
時給の無駄だぜ、と店長は吐き捨てて店へと戻っていった。
「畜生…!」
苛立ちのあまり、俺は金網をガシャンと蹴り飛ばした。
「あ痛っ」
思ったより痛かった。
それにしても、ついてない事ばかりだ。
そもそも昨晩、あの腹立つPKプレイヤーに出会ったりしなければ、気を取られてこんなミスなんてしなかったのに…。
いや、そもそも、バイトにこんな責任を押しつける店って、どうなんだ?
あそこまでバイトを悪しざまに言う店とか、ネットでよく言うブラック企業そのものだろ。
少なくとも「足手まとい」とか「クソチビ」とか、人格や外見を否定するような発言は必要ないはずだ。
「もう、こんな店で働けるか…」
逃げるのは負けのような気もするし、実際俺の責任もあるけど、ここは何か間違っている気がする。
こんな所辞めて、別の所で働こう。
俺は裏から店内に戻ると、物品の賞味期限チェックの傍ら、就職用のフリーペーパーを手に取る。
コンビニの朝は7時~8時にラッシュがあって、土方や会社員の方々にコーヒー・タバコ・菓子パン・弁当を売り捌きまくった後は、多少暇になるのだ。
決してサボってる訳じゃないぞ。
ちょっと余裕ができただけなんだ。
「これは…厳しいな…」
だが、就職のフリーペーパーを実際に見て、思わずそんな感想が漏れる。
他のコンビニやホールスタッフ、スーパーのパート、どれもこれも殆ど時給800~900円台で、どこに行こうとそんなに変わらない。
月給換算だと10万円後半だった。
しかし月給20万円台となると、こっちは2種免許とか、大型とか、介護福祉士とか准看護師とかの資格が必要だった。
一番スゴいのは、市民病院の外科医募集で月給70万円。
「…ダメだ、これは」
こうしてフリーペーパーを眺めていくと、ごく当たり前のことだが、誰でもできる仕事は時給が安く、資格や特殊技能を持つ仕事でないと高い給料は貰えない、という事が分かってくる。
俺に最も向いているであろう、中古ゲームショップは正社員募集だった。
一瞬だけ喜びかけたが、毎日5時間勤務で月給68,000円だった。 うおーい。
「…。」
俺は…どうなるんだろう。
できればバイトじゃなくて、企業に就職したい。
父親がまだ元気な時に言ってた「金は家庭の生命線」という言葉。
それが実感を伴って俺の肩にのしかかる。
でも、バイトですらここまでメチャクチャ言われる俺が、より高度な事を求められる一般企業で、はたしてやっていけるのか?
そもそも、俺には何の資格もない。
車の免許も持っていないし、保科や小野田さんみたいな対人スキルもない。
そもそも社会に出られるのか、という考えがチラリと脳裏を掠めた。
いや、違う。 違うはずだ。
もっと、俺の未来は、輝かしいものであるはず。
「く…」
小学生の卒業文集に書いた俺の夢。
だが、2年後に迫る現実。
その落差を思うと、胸が押しつぶされそうになった。
今の俺にできるのは…。
店長の罵声と、不満に耐える事しかないんじゃないだろうか。
そう思った俺は、フリーペーパーを片づけてレジへと戻った。
仕事…しよう。
DATE : H27.1.20
TIME : 12:54
STID : 00941724、00914582
「こんにちはー、礼雄くん」
「…おはよう、保科」
12時のレジ精算が終了し、勤務がようやく終わろうかという頃に、昼勤務シフトの保科がやってきた。
「あれ、どしたんです? やたら暗いじゃないスか」
「え、そうか?」
「ええ、またなんか失敗しました? 顔に負のオーラがメッチャ滲み出てますよ」
…そんなにヒドい顔してたのか、俺。
「ほらほら、キープスマイリング! そんな顔してたら、お客さんイヤな気分になっちゃいますよ」
と保科は笑って言った。
こんな精神状態で、笑えと言われても笑える訳がない。
…と言いたかったが、保科の言うことはもっともだ。
俺とて、店員が無愛想なのは嫌だしな。
俺は深呼吸し、叱られた事を記憶の片隅に追いやって、なるだけ笑顔を作ろうと試みた。
「こんなんでどうだ」
「微妙ですね。 ちょっとキモいかも」
保科は俺の姿を見て肩をすくめると、制服に着替えるべくスタッフルームへと向かった。
「何か引き継ぎないスか? 店長から言われている事とか」
多少の抵抗はあったが、今日の失敗の件と、店長が謝罪のため知人の所に行ってる事を伝えた。
また保科に皮肉の一つでも言われるかと思ったのだが、
「また失敗したんですか」
とカラッと笑われただけで終わった。
「…どうした、今日のお前、何か上機嫌だな?」
「ええ、昨晩面白い事がありまして」
「へぇ…何があったんだ?」
「まぁ、ちょっとね。 へへっ」
そう言って、保科の奴は返事を濁した。
「んじゃお疲れっス、礼雄くん」
「ああ、お疲れさまー」
俺はコンビニを出ると、この後どうしようか迷った。
一瞬、このまま店長を待つべきなのか…と思ったが、どうせ自分の勤務時間は終わってるし、顔を合わせたくなかったので、帰る事にした。
「…あ、そうだ」
チャリを大学近くまで走らせた時、唐突に良いことを思いついた。
気分転換を兼ねて、デジ研でリヴァイアサンの操作方法を聞いておこう。
土曜日だけど、どうせ誰か部室には居るはずだ。
DATE : H27.12.25
TIME : 13:24
STID : 00941724
「ちはーす、お疲れさまでーす」
「おいーす」
「うーす」
サークルに行ったら、やっぱり南原先輩と西川先輩が居た。
もちろん2人で「リヴァイアサン」。
年中無休、不眠不休のゲーム研究。
それが我らの「デジタルメディア研究会」だ。
俺はリュックを下ろしながら、コタツに入らせてもらう。
「鶴羽先輩の事、何か連絡ありました?」
二人の表情は鬼気迫ってないので、話しかけても大丈夫だろう。
「いや、連絡ない」
二人はゲーム画面を見ながら簡潔に答えた。
まぁ、そうだよな…。
「ところで、俺もリヴァイアサン始めちゃったんスよ」
「何ッ!?」
「レオもリヴァイアサンにキタコレ!」
二人同時に、ガバッと顔を上げた。
おお、リアクション早いなー。
「そうかそうか、レオも遂に始めたかー」
「お前も、ソシャゲの潮流には逆らえなかったな」
「それで、お願いがあるんですけど」
「何だよ」
「…操作方法を教えてもらいたいんですけど」
「何でまた、そんな基本的な事を?」
言うべきかどうか迷ったが、昨晩のPKの事を告白する。
すると、先輩二人は爆笑しはじめた。
「ゲーム開始早々、いきなりPKかー」
「そりゃ災難だったな、レオ」
「本当、とんでもない目に逢いましたよ。 っていうか…」
昨晩の事を思い出すと、フツフツと怒りがこみ上げてくる。
「…このゲームでPKされると、何だか妙に、精神的に来るものがありません?」
もちろん、他のMMOでもPKされた事はある。
嫌な気持ちになるのは同じなのだが、『リヴァイアサン』では、それが桁違いなのだ。
「あー、あるある。 多分ボイチャ(ボイスチャット)で煽られるからだろうな」
「…そうですね」
確かに、肉声で対話するだけで、画面の先…。
いや、画面内のアバターの中に、血の通った人間が確かに居る、という感覚が強く感じられた。
文字に変換されていない、掛け値なしの悪意と侮蔑。
「だろ? 対人戦でもそうだけど、ヘッドセットから、たまに相手のうめき声が聞こえる時があんだよな」
「ああ、相手を殴った時だろ? 『うっ』って声。 もうゲームのキャラになりきってるのな」
「あれ、何とも言えないよなー」
南原先輩と西川先輩は、笑いつつ体験談を語ってくれた。
「あと、真剣度が段違いだからだろうな」
「真剣度?」
「ほら、ゲーセンでの格闘ゲームの対戦と同じだよ。 家庭用で対戦するのとは、熱が全然違うだろ」
アーケードの格闘ゲームでは、コインというか、プレイの続行権を賭けて戦うことになる。
「リヴァイアサン」のバトルの場合、リアルマネーに換金可能な資産(装備、アイテム、所持金)を賭けたも同然。
真剣度はアーケードの格ゲー以上だぜ、というのが西川先輩の意見だった。
「なるほど…」
言われてみて、ストンと納得できた。
「で、レオはどうしたいんだよ? リベンジでPKKすんのか?」
「いや、せめて自在に動けるようになりたいんですけど…。 そもそも、PKKなんてできるんですか?」
他のMMOの場合、「やられたらやりかえす」というのはまず無理だ。
そもそも、PKプレイヤーは、異様に強い場合が多い。
仮に相手を倒せたとしても、目を付けられて粘着されたら、もうゲームにならない。
「超課金して、相手より強い装備を買えば多分余裕」
「いや、課金なしで」
「なら無理。 自衛手段を取った方が良い」
「ですよね…」
そして、その経験則はこのゲームにも該当した。
「それで、自衛手段って、何があるんですか?」
「課金アイテム」
その返事を聞いて、俺はズッコケた。
「自衛手段まで課金!? マジですか?」
「ちょっと待ってろ…。 ほれ」
西川先輩は、自分のゲーム画面を見せてくれた。
ーーーーーーーー
・けむり玉 80Cen
(※消費アイテム。 白煙を発生させ、視界を遮断する。)
・クライムアラーム 200Cen
(※レッドプレイヤーが同じ画面に居ると、アラームがなる)
・ネオクライムアラーム 500Cen
(※イエロー・オレンジ・レッドプレイヤーが同じ画面に居ると、アラームがなる)
・妖精のお守り 1000Cen
(※消費アイテム。 他プレイヤーからの初撃を完全に無効化する)
・飛行の魔法石 1500Cen
(※消費アイテム。 移動魔法「エア・ウイング」で魔力が尽きるまで空が飛べる)
・転移の魔法石 2000Cen
(※消費アイテム。 移動魔法「テレポート」で直前に居た街へとテレポートする。 ただしダンジョン内では無効)
ーーーーーーーー
「普通に購入はできるけど、PKの後だと所持金を奪われるからな、結局は課金して買う事になる」
「アコギすぎる…」
しかも大半が消費アイテムじゃねーか。
何だこの鬼設定は。
「まぁ、クライムアラームだけでも持っとくと結構違うぜ。 ダンジョンの影とかにPK野郎が潜んでたりするしな」
しかし、倒される側がお金を払って防御策を講じる、というのはなんか納得がいかない。
無課金で何か方法がないもんだろうか。
「それだとな、俺たちがやってるみたいに、常時パーティを組むしかないぞ。 クライムプレイヤーは、大抵の場合、ぼっち…いや、ソロプレイヤーを狙うからな」
一人で行動しない、怪しい所には行かない…か。
こりゃ現実と同じだな。
「あの、それと…。 所持金も装備を全部失ってるんですけど、どうしたら良いんでしょう?」
「宿は教会で代用できるけど、装備はどうにかして買え」
「いや、買えって…。 所持金を奪われてるんですけど…」
「課金すればいいだろ」
「え? じゃあ、無課金だと復活不可能なんですか?」
すると、南原先輩は「無課金でか…?」と、首を捻りつつ答えた。
「うーん…。 ゲームの中に、誰か知り合い居ないのか?」
「一応、友達に誘われてます」
「なら、同じネージュ村に居るんだろ? そいつと協力した方が早いぞ。 俺たちは先の街に居るから、ネージュまで戻るの手間だし」
「戻るのが手間…。 って事は、このゲームには、街をまたぐ移動魔法がないんですか?」
「ある。 馬車も魔法もある」
「じゃあ、何で」
「全部有料なんだ。 無料は徒歩のみ」
「…なるほど」
「だから、今すぐ援助は無理だ。 勘弁してくれや」
…しかし、このゲーム、ネージュ村から始まるにしては、人が少ないような。
他のMMOだと、拠点になる街には凄い数の人が居るもんなんだけど…。
もうみんな、とっとと先に進んでいるって事なんだろうか?
「ところで、先輩方はどこの街に居るんです? そこって稼げるんですか?」
だが、その質問をすると、南原先輩と西川先輩は顔を見合わせ、口に指を当てて「シーッ」という仕草をした。
「残念だが、その質問には答えられねぇ」
「何でですか?」
「ちょっと面白いことをやってる。 だが、ライバルは少ない方が良い。 だから教えられない」
「もし、これ以上の情報が欲しかったら、ギブアンドテイク、だ」
「えー、マジですか!?」
先輩二人は肩をすくめる。
「マジも大マジ、マージマジマジだ。 でも勘違いすんなよ、お前が嫌いだからとか、俺たちだけが儲けたいからとか、そういう理由じゃないぞ、なぁ西川」
いや、今ライバルが…とか言ったじゃないですか。
「南原の言う通り、お前に意地悪したい訳じゃない。 レオ、お前このゲームのwiki見たことあるか?」
ゲームwiki。
有志によって攻略法が提供され、まとめられた総合データベース。
有名どころのゲームは、大抵の場合、これを見れば最後までつまづかずにクリアできる。
昨日のPKの件ですっかり失念していたが、最初からこれを見とけばよかったんだな。
「すいません、そっちを先に見るべきでしたね」
「ググレカス」と暗に言われたような気がして、俺は西川先輩たちに謝った…が、先輩はそういう事を言いたい訳ではなかった。
「はっきり言って、スッカスカだぞ。 コメント欄が『クレクレ厨はタヒね』で埋まってる」
「もうwikiとしての存在価値ないよな、あの砂場」
…wikiが役に立たない?
何故?
「さっき言ったろ? このゲームな、有益な情報を提供すると、パクられて自分が不利になるんだよ」
「みんな自分が相手を出し抜きたいから、見つけた攻略法は、相手には伏せとく」
「だから、情報が欲しい時は、ギブアンドテイクを徹底するのがマナーになってる」
公平な取引を推奨。
クレクレ厨は絶対禁止。
利害関係が絡むと喧嘩になるから。
それがリヴァイアサンプレイヤーのゲームマナー、という事らしい。
「もしくは、無償でも信頼できる仲間がいないと、このゲームは進められないぜ」
「なんせ、あの鶴羽ですらパーティ組んでたからな」
「あの鶴羽先輩がですか!?」
それは驚いた。
鶴羽先輩は、ことゲームにおいては、絶対の自信を持ってた。
なのに、ソロプレイをとうに諦めて、人に頭を下げて、パーティ組んでもらってたなんて…。
本当かよ。
「だよな、アイツのことだから、良好なパーティ関係なんて、全然想像できねぇ」
「…そうですね」
俺は苦笑いして同意する。
まぁ確かに、あの先輩の極端なゲーム至上主義についてこれる人は少なかろう。
「分かりました、じゃあ次はギブアンドテイクで…。 あ、ところで、アクションの登録だけは教えてもらっていいですか」
てか、これが本題だった。
「いいぜ。 ちょっと手順が分かりにくいから、ムービー撮っとけ」
「あ、はい」
俺は携帯のカメラで、ムービーを起動する。
「こんにちはー! 『チャンバラチャンネル』です! 今日は後輩・レオくんのために、パレットの操作とマクロの操作を実演する事にしてみました!」
と、まるで「ワハハ動画」の実況プレイみたいな感じで、南原先輩は操作の実演を始めた。
後輩の俺が言うのもなんだけど、実に分かりやすく丁寧な解説で、ムービーを撮ってリプレイするまでもなく、その場で十分に理解できた。
「…以上です! 使いこなせばマクロは強力なので、是非使って下さいね! それではまたー!」
俺はムービー撮影を終わると、南原先輩に礼を言う。
「ちゃんと何度も見直せよ」
「ええ、分かってます」
俺は苦笑しながら返事する。
「しかし、このゲームにもマクロあったんですね。 ライトユーザー向けのソシャゲかと思ってたのに」
マクロってのは、表計算ソフトや画像ソフトに実装されてる、「一連の動作を登録する」コマンドの事だ。
MMOにもよく実装されており、戦闘後の体力回復など、頻繁に発生する面倒くさいルーティンを一発解消するためによく登録される。
「俺たちも、マクロは鶴羽から教えてもらったんだよ。 てかアイツ、とてつもない連続技持ってたぜ」
「そういやそうだったな…。 俺とか『ひのきのぼう』で瞬殺されたし。 相手にすらならない、って酷評されたな」
「だなー。 俺たちをボコるだけボコって、どんな技のマクロなのかは教えないんだもんな」
「ま、教えてもらったら、それで鶴羽の奴ボコるつもりだったしな」
と、南原先輩と西川先輩は声を揃えて笑う。
てか、鶴羽先輩、サークルメンバーをコンボの実験台にするとか、いくらなんでもやり過ぎだろ…。
もしかすると、実験台のお礼としてマクロの存在だけを伝えたのかもしれないけど、こりゃ絶対に伝わってないぞ。
「ま、力にはなれないけど、くつろいでいけや。 どうせ誰も来ねぇし、北大路が良いの置いてってるしよ」
「良いのって何ですか? 『まじかる☆あーじゅ』のDVDすか?」
「惜しい、それはまだ2巻までしか出てねぇ。 これだよ、『Words Worlds Swords』のDVD全巻」
「うおスゲー! 北大路先輩、円盤全部買うとか流石っすね! デジ研会のブルジョワやー!」
「アイツのおかげで俺らも助かるんだよ~」
俺はそんな訳で、ありがたく部室でDVD見ながらくつろがせて頂く事とした。
別に下宿の自室でDVD見ても同じかもだが、オタ仲間と一緒に見るのは楽しさが一段上に感じる。
「その話、作画監督が香川久志なんだぜ。 『聖徒の剣』の。 バトルシーンの動きがいいだろ?」
こんな注釈が漏れなく付いてくるしな。
なお、『Words Worlds Swords』ってのは、深夜枠でやってた、比較的大きなお友達向けのファンタジーアニメだ。
主人公がとある事件により異世界に召還されるが、そこは紛争地帯であり、戦争の惨禍にて男性は殆どが戦死、村には女性しか残っていなかった。
主人公も戦争に巻き込まれるが、村に伝わる伝説の魔剣と心を通じ合わせることで魔法の力に目覚め、伝説の魔法剣士となり、皆のために戦うというストーリー。
そして村を救った結果、村の若い女性からモテモテになって困っちゃうという、よくあるチーレムものだ。
そしてヒロインの一人が、主人公と一緒にお風呂に入るか入らないか、という重要なシーンで携帯が鳴り出した。
相手は「藤宮 龍真」。
おい、またこのタイミングでか…。
これは、「お前暇?」コールだろうな。
そして、実際に電話に、出てみると電話の内容は俺の想像どおり、
「レオ、時間に余裕はあるか? よければ、昨日の続きで、リヴァイアサンをプレイしないか?」
という、空気を読まないお誘いだった。
<続く>




