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文字数まばらでごめんなさい!!
一番お酒を飲んでいるはずの陽翔が一番冷静かもしれない。
二人のやりとりを眺めながら俺は、自分の気持ちに素直になる努力はしてこなかったことに思い至った。
前に進むためには侑真みたく分かりやすく相手にぶつかることも必要。いきなり告白したら驚かれるよね。
「僕は自分の感情を隠す真似しないんで」
ぎゅうっと、胸を押し当てるように俺の腕に絡みついてきた。
しっかりとした胸板で細身と侮っていただけかもしれない。
可愛い顔だなとは思う。普通だったらコロッとなってたかな。
「ちぇ、顔色一つ変えないんだね」
侑真は俺の反応を見て楽しみたかったようだ、無反応だったためすぐに腕を離す。
代わりに陽翔が不機嫌そうに侑真の襟をつかみ俺から引きはがした。
「悪ふざけが過ぎると常務に言いつけますよ」
「直ぐに親父のこと話題に出すのやめてくれる」
ぷくっと頬を膨らませるその姿が子供の頃に会っていた時と変わらない姿に少しホッとする。
「陽翔、会社じゃなくてプライベートで会ってるわけだからその辺にしてやって」
「仁は優しいから変なのに好かれるんだ」
男の人と付き合っていたと言う話をしていない。絡まれているのを助けられたのは知り合いの人が酔っぱらっていて怒られたと言う話にしていた。
陽翔には幻滅されたくない。
願ってもいいのなら、学生時代のような関係に戻りたいと思ってしまう。
「大和さんは頭かたぁい」
「真面目だと言ってください。貴方の教育係も務めているんですから。プライベートで何か問題を起こした場合も連絡してほしいと常務に言われています」
「そんなこと言うならこれから大和さんは誘わないで仁君と二人で飲む」
二人で飲むようなことがあるのなら全力で逃げ切る。
楽しいかもしれないが、食われる予感がする。
本能が、侑真の恐ろしさを警告している。試合中にも何度か経験したことのある圧。自分の感情を上手く相手に伝えて、自分の思うがままにしようとしている。侑真は俺が思っているよりも策士なのでは。
にっこりと笑うその笑顔の後ろに一体どれだけの思いを隠しているのかな。
「侑真の誘いは嬉しいけど、飲むときは三人な」
「どうしてですか」
陽翔が当然と言う顔をしている。自分の口からは言ってくれない。少なくても嫌われていないから、その関係に甘えていてもいいだろうか。
「俺も会社に不利だと思われる行動をしたくない」
自分勝手で、ハッキリと侑真を振ればいいのに、言えないでいる。侑真の方がハッキリと告白してきていないから、勝手に言うのも相手に悪い気がする。
「会社が絡まなければいいんですか」
侑真の真剣な顔。そこまでする価値が俺にあるのかな。
「侑真そういう問題じゃない」
「他に好きな人がいるんですか」
明らかに不機嫌な声になっている。陽翔は俺たちのやりとりの様子を伺っている。酔っ払っている侑真を変に刺激しないようにしている。
「二番でもいいですよ。一番に返り咲いてあげますから」
自信たっぷりの笑顔。飲酒しているため顔が赤く、目が熱っぽく映る。
侑真は色気が漂っていて、普通に考えてなびくべきなのかもしれないけど、かれこれ十数年片想いをこじらせている。
こんな甘い誘惑で折れるほど自分の気持ちは簡単ではなかった。
「自分を大切にしてくれる人を見つけろ」
「仁君が大切にしてくれるでしょ」
「自分を大切にできない発言をする人を俺は大切にできる自信はありません」
本音を隠す生き方をしないと決めた矢先に、誘惑をしてくる侑真。
押しに弱いけど、俺は人を傷つけたくないんだ、心に無いことを言って相手を期待させて、本気で好きになれなくて最終的にやっぱり別れるだなんて恋をしたくない。最初で最後の恋をすると決めたから。
「酔っぱらい過ぎ」
「久我君、悪酔いしているので、今日はもう帰りましょう」
陽翔が携帯を取り出す。酔うと歩けなくなる侑真を決まって送り届けるのは陽翔だった。俺も一緒に行くと言ったら「朝まで帰れないかもしれない」と脅された。
一応柔道もやっていて侑真よりも体格もいいが信じてもらえていない。
「仁君ともっと飲む」
侑真は俺ではなく陽翔の方に抱き着く。陽翔は顔色一つ変えずに、軽く抱きしめいかえしている。
「はいはい、おれと仁を間違えるくらい酔っぱらっている人ですので、大人しく帰りましょうね」
優しく抱きしめられている侑真が羨ましくて、残っていたハイボールを一気に飲み干した。やばい。これ陽翔のだ。キスしたい衝動を我慢するのに、飲んじゃった。
「仁は、一人で帰れる」
久我を抱きかかえながら俺を見つめてくる視線。陽翔も少し酔っぱらっているのか、いつもより視線に色気を感じてしまう。
「おう、一人で帰れるぞ」
間違えて飲んでしまったお酒に対するツッコミがないのに胸を撫で下ろして、俺は帰り支度を始めた。
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