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人間×エルフ

ルミエル王国の中央に建つ1つの城。

もっとも小さく最弱な国とは言え、普通の人間から見れば十分すぎる大きさと美しさだ。


--玉座の間


豪華なレッドカーペットの先の玉座に座る女性。

そして、その側に長身の女性が1人。


ルミエル王国の王女と女王だ。


だが、2人とも普通の人間ではない。

女王は、長身で金色の長髪、雪の様に透き通った白い肌。そして、特徴的とも言える、長く伸びた尖った耳。


そう、エルフだ。


そして、王女も女王と同じ美しい金色の髪に白い肌の持ち主だ。

だが、女王の様に耳は長くは無い。普通の人間の大きさで、先が少し尖っている程度の耳の形をしている。

2人とも息を呑む様な美しさだった。


「王女様、そして女王陛下。そろそろこの国の王位後継者の決断をして下さらねば、このままでは国の一大事になりかねますぞ?」


王女と女王の前に並ぶ、4人の男達の中で中年太りした男が発言する。


「北の大臣どの、何度も言っております様に正統な王位後継者は王女、私の1人娘のルナ王女の他におりません。先代の王の・・・亡くなる直前の言葉を、大臣方も聞いておられていたはずでしょ?それを何故、拒むのでしょうか?」


「お言葉ですが陛下。たしかに本来ならば、王位後継者はルナ王女様で何の問題もございませんでしょう。この世界では、男女の王位はさほど問題とされておりませぬ事ですし・・・ですが、王女はそれ以前の問題がございます。陛下も十分お気づきのはずではございませぬか?」


髭を長く伸ばした、細身の男が口を挟む。

女王は、目の前の大臣達に怒りを宿した形相で鋭い眼差しを向ける。


「私の・・・エルフの血が、ルナ王女の後継を邪魔しているとでも?」


女王の、震えながらの怒りが込められた質問に大臣達は言葉が返せない。


そう。ルナ王女は、人間の先代の王とエルフの女王の間に生まれた、人知を超えたハーフの王女なのだ。


「馬鹿馬鹿しい!血が何だと言うのですか!?例え、私のエルフの血が混じっていようとも、半分は先代の・・・人の王の血がこの子の王位の座を証明しているのではないのですか!?あなた方は、その様な偏見で王女の後継に異論を唱えているとでも言うの!?」


……息を荒くさせ、女王の言葉は響き渡る。


「陛下・・・この国は、小さきながらもその王位の座は、過去全て純粋な人の子に受け継がれております。他国には人とは違う異業種の存在が多々ある中で、この国は全て人の手によって守られ続けて来たのです。貴族や国民も含め、私達も皆その歴史を守りたいと言う気持ちが強いのです!」


拳を握り締め、力説する黒い肌の大臣。


女王は、解せぬという険しい表情のまま、視線を逸らす。

と同時に、心の奥底で自分のエルフの血を憎んでもいた。

自分が普通の人間であれば、我が娘は何の問題も無く王位に就けただろう。自分のせいで可愛い王女が苦しんでいると言う事実に。


「もういいわ・・・お母様。私は、王位に相応しくない存在みたいだから」


ルナ王女は、玉座から立ち上がった。


何を言っているのか!?

女王は、焦りの表情と共に絶望に震えた。

美しく、品に満ちた本来の女王の表情はもはや見る影もない。



大臣達は、驚きを見せる中で、王女の言葉に心の中に隠していたやましい笑みが口元にはっきりと出ていた。


「でも、私が王位に就く事が出来ないのであれば、一体誰がなるのかしら?金と女にしか目が無い貴族の殿方かしら?それとも、食欲に埋もれた北の大臣のご子息かしら?東と西の大臣達のご子息は王位に就けるほどの器と頭を持っていらっしゃるのかしら?南の大臣のご子息は・・・海とお魚がご友人でしたっけ?」


ルナ王女の言葉に、大臣達の表情が一気に固くなる。

嘲笑うかのように嫌味に満ちた言葉を、最高の笑みを浮かべながら話す王女に、大臣達の苛立ちはもはや隠せずにいた。


女王は、王女に目を覆いながらも口元がニヤけている。


「と、とにかくですぞ!ルナ王女が、王位に就く事は全国民の投票を持ってしても不可能ですからな!?それをよく頭に入れて頂き、後日改めてお答えをお聞かせ願いたい・・・!」


軽々しい笑みで答え返すルナ王女。


大臣達は、唇を噛み締めたまま逃げるように扉から出て行った。


アッハハハハハ


高ぶる笑い声を上げる王女


「だっせー!図星衝かれて慌ててやんの!見た!?さっきの悔しそうなブサイク顔!もー途中で我慢できずに吹きそうに何度もなっちゃったよほんと!」


腹を抱えて、大笑いする王女


「全く、あなたときたら・・・そこは、父親似ねやっぱり」



溜息を吐きながら腕を組む女王。


「でも、やっぱりムカツクな~!あいつら、お母さんの事すっごい悪く言うんだもん!あたしはエルフの血が入ってることにむしろ誇りに思ってるのに・・・あの豚共」


「それは仕方が無いわ。彼らの言い分は、本来なら最もな事よ?私自身も、正直悔しい所があるもの・・・。それと、あなた少し言葉遣いには気をつけなさい?王女なんだから」


はーい。と、少しムスっとするルナに女王が一言付け加える。


「それに豚共は可哀想よ?せめて、トロールにしないと!豚さんが可哀想だわ」


お互いに目が向き合う。


そして、プフッ!と、頬を膨らませながら笑う王女と女王。


仲の良い、母と娘の笑い声が玉座の間の空気を明るくする。






「なるほど・・・・・・これは良い事を聞きましたね」






窓の外で、コウモリの様に中ぶらりな格好をした、銀髪の男が笑みを浮かべた。


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