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ギフト持ちのカメレオン令嬢は縁を結ぶ  作者: たくみ


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31/31

31.結婚式

 3ヶ月後


 隣国の王宮の大広間にはたくさんの来賓が集まっていた。主役の2人が歩く度に至る所から


「おめでとうございます!」


「末永くお幸せに!」


 そんな声が聞こえてくる。


 今日は皇太子と皇太子妃の結婚披露パーティーだ。2人を結びつけたユリアも当然この場にお呼ばれしている。立食形式の食事は隣国の特産品が並んでおり、ユリアはモグモグと食べる。


 そう新郎新婦を見つめながらひたすらモグモグモグモグと。 


「ねえカイン」


 ゴクンと口の中に入っていたものを飲み込んだユリアは視線はそのまま2人に固定したままでカインの名を呼ぶ。


「はい」


 彼もユリアと同じく新郎新婦をぼーっと眺めている。


「あの方はどちら様?」


「新婦様ですね」


「ずいぶんと堂々としたお美しく華やかなお方ね。まるで貴族みたい」


「まるでではなく立派な貴族様ですからね。公爵家のご令嬢だそうですよ」


「…………………………」



 皇太子の隣で咲き誇らんばかりに艶やかに笑うのはユリアがギフトで視た女性ではなかった。


 別にいいのだ。彼が誰と結婚しようと幸せそうであるし。


 だけどなんか思ったのと違う。

 

 皇太子は帰国後愛する女性に告白。だが見事撃沈。彼女はレストランの店主の恋人だった。2人は皇太子が結婚する1カ月前にお先にゴールインしたとのこと。


 フラレた皇太子は人知れず王宮の庭園でしくしくと泣いていたそう。そこをたまたま通りかかった公爵家のご令嬢がその泣き姿を見初めたらしい。


 泣き顔を見初める女性とは――ちょっとばかり思うところがあるが目の前で幸せそうに頬を赤らめる皇太子を見れば良かったと思う心も芽生えてくるというものだ。


 尻に敷かれる未来しか見えないが本人たちが幸せならそれも一興である。何よりも権力者が後ろ盾になるというのは素晴らしいことである。


「……………………」


「ユリア様どうかなさいましたか?」


 何やら再び考え込むユリアにカインは怪訝な顔をする。


「結婚かあと思って」


「興味を持たれましたか?」


「そんなに良いものなのかしらね?」


「一概にこうとは言えないでしょう。貴族であれば政略結婚も多いですし、愛人の一人も抱えている方も多いですからね」


「こうやって見ると幸せそうとか思うのだけれど、今の生活を捨てる程のものなのかとも思ったりして」


 父親は結婚とうるさいが無理にさせることはしない。最悪結婚せずに家にいてもゴチャゴチャうるさいだろうが娘を売る真似はしないだろう。


「ユリア様は恵まれていらっしゃいますから」


「そうなのよねー恵まれ過ぎちゃってるのよねー」


 周囲は賑やかで寂しくもない。金だって十分にある。結婚したら今のこの趣味に勤しむ自由な時間も減ってしまうだろう。


「皆様々な理由で結婚をします。愛や恋といった綺麗事から事業拡大、権力を得る、支援目的、あとは血を後世に繋いでゆく……貴族は結婚によってメリットを得られることが多いですから」


 父親はお金を稼ぐことは好きだが伯爵としてこれ以上の権力はいらないそうだし、支援はむしろする側となるだろう。商会の発展は娘を使ってまでは特に考えていないそう。


 とはいうものの世間体とでもいうのか貴族の娘は結婚するべきという考えなのか結婚結婚とうるさくはある。


「ああ確かに子どもは欲しいわね」


「であればユリア様にも婚姻は必要なのでは?」


「うーん……私みたいな変人を娶る人がいるかしら?」


「美人かつ金持ちですから確実に。ぶっちゃけ金を持ってりゃ結婚できます」


 今だってユリアをという声は上がっているのだ。だが残念なことに借金持ちや貧乏貴族ばかりなのだ。


「ぶっちゃけるわね」


 ははっと笑うユリアをカインはそっと見つめる。


 いい男だって彼女のことを狙っている者はいる。だが互いに牽制し合っている。そして、自分が側にいるから。ユリアをカインの嫁にしたい父である公爵もさりげなく牽制していたりする。


「いつかいい御縁がありますよ」


「典型的な世辞の文句ね」


 慰めは不要だと睨みつけてくるユリアはいつもより僅かに目が細まり妙な色気がある。ちらちらと覗き見るもの、ぼーっと見惚れるものと様々だが声をかけてくる気配はない。


 見ているだけで手に入るような女性ではないのに。


「もしかしたら既に側にいるかもしれませんよ?」


 ユリアが持つ空になったグラスに手を伸ばすカイン。かわりのものを取ってきてくれるのかとグラスを手渡すユリア。その際にカインの指がユリアの指を緩やかに撫でる。


「………………」


「代わりのものを取って参ります」


 特に表情も変えず反応もしないユリアに向けてに、と口角を上げた後背を向け近くにいたウェイターに足を向ける。


「どうぞ」


 戻ってきたカインがユリアに香り豊かなワインが入ったグラスを手渡す。受け取ったもののユリアはユラユラと軽く揺らすだけで口をつける気配がない。


「ユリア様?どうかされましたか?」


「既に側にいるとしたら……」


 グラスに向けていた視線がカインに向く。視線が向くと思っていなかったカインは不覚にもドキリと心臓が跳ねる。


「側にいるのに私を落とせないなんて軟弱者ね?」


 カインの目が大きく見開かれた後弧を描く。


「くくっ……!左様にございますね」


 カインにつられるようにふふ……と軽く笑うユリア。二人の忍び笑いが重なる。


 はてさてどこにユリアと繋がった縁の人はいるのやら。



「ユリア様!カインさん!」


 相変わらずゆっくりだが前より幾分か明るい声が二人の名を呼ぶ。ゆっくりと腕を組みながらゆっくりと近づいてくる初々しい夫婦をユリアとカインは祝福の笑みを浮かべて迎えた。



 




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