第14話 どっちが似合うのかな?
3月は職場でコロナが出たので、その対応で私の勤務は夜勤とか深夜とかの勤務が多かったので、逆に昼間に休んだりしたときに執筆したり、夜勤中の空き時間に執筆したりしてたから結構な頻度で更新できました。
しかし4月になると私の勤務は夜勤が減り、同時に日勤帯+夜までの残業という勤務が増えてしまったので、執筆時間が取りづらくなりました。4月は3月と比較すると更新頻度が低下すると思いますが、よろしくお願いします。
「あ、ここ、ここ。こっちだよぉー-」
日曜日の10時頃、湧谷拓水くんと家鳴風音ちゃんはふたりして私の家の最寄り駅の改札を出てきたの。私は右手を上げて大きく振ってふたりを出迎えたというわけよ。
しかしというか当然というか、ふたりとも手はつないでいないわね。うーん、まだまだね。
「好恵ちゃん、わざわざボクたちを迎えに来てくれてありがとう」
「ぼくの為に今日はすみません」
いちおう今日拓水くんに来てもらったのは、拓水くんの女装したいという希望を受けて、私の手持ちの服でもう着ないものを拓水くんに着せてみて、良ければその服を差し上げようという企画なのよね。
ちなみに風音ちゃんは、かわいい女の子が大好きという性癖の持ち主なんだけど、拓水くんほどかわいい男の子が女装したなら、それこそ性別を超えて好きになれるかわいらしさになるだろうということで、それを見学しに来ているというわけ。
やっぱり風音ちゃんとしても本音の部分では、女の子あいてよりも男の子あいてに恋愛をしたほうがいいと思ってるんだろうね。つまりガチレズというわけでは無いと。
まあ、中学校の頃から学校の女子たちの間で王子様系女子と呼ばれていたということらしいけど、まわりも本人もちょっとした遊びのノリだったのかもしれないね。
「ああ、いいのよ。私も自分が着なくなった服を誰かにあげるというのをやってみたかったし」
そもそも今、私が女装しているのは、小さな頃、3人のお兄ちゃんたちからの服のおさがりばかりを着せられるのが嫌で、新品の服ならもう女の子の服でもかまわないということで、『僕は女の子の服が着たい』と両親に嘘の告白をしたことが原因なの。
つまり私は服のおさがりをもらったことは有るけど、他人にあげたことはないのよね。だから自分の着ていた服を拓水くんにあげるというのは、本当に楽しみなのよ。
ちなみに拓水くんは男子としては非常
に小柄な私よりも少しだけ背が高い。
今は普通に男の子の格好だから当然に男の子に見えるけど、本音を言うと高校1年生というよりは中学1年生に見えると言ったら、怒られちゃうかしら?
そして風音ちゃんはと言うと、やや薄手の紺のパンツルックなんだけど、ピタッと脚に密着したようなよくあるレディース物じゃなくて、ゆったりしたデザインの物になっているのよね。
上半身もあまり色気のない薄茶色の長袖のTシャツを着て、腰に薄手のブルーのパーカーを巻き付けているわけ。
「風音ちゃん、今、着てる服もメンズなの?」
「そうなんだよ。ほら、ボクって背が高いでしょ? レディース物からボクに合うサイズの服を探そうとするとなかなか無いから、ついついメンズ服から選んじゃうんだよね」
「で、私が作った装着型の肩パットもつけてくれてるのね」
「そうそう。ボクもつけてみて思ったけど、やっぱりメンズ物は肩パットを入れたほうが似合うよね」
「背の高さに合わせて肩幅もあったほうが、男装らしくなると思ったけど、その通りだったわね」
「ふふ、ありがと♪」
「あの、聞いてもいいかしら? 背が高いとはいつも思ってたけど、風音ちゃんって、身長はいくつなの?」
「うーん、まあ、179.5cmくらいかな」
あっ、これは実際には180cmちょうどか、少し越えてるくらいかも。メンズ服を着ていても、やっぱり乙女心よねえ。
私が158cmで、高校生女子の平均よりもほんの少しだけ背が高いけど男子の平均と比べると、約10cmも低い。そんな私と風音ちゃんとでは20cm以上も身長に差があるのかぁ。
「ち、ちなみに拓水くんは何cmなのかな?」
話のホコ先を拓水くんに変えてみたんだけど、もしかしてこっちもヤバかったかな?
「160.5cmだったよ」
ああ、そういえば入学後しばらくしての健康診断で私の次に背が低いのが拓水くんだったっけ。
健康診断では下着姿の男子たちと一緒に、私も下着姿で診断を受けたのは良い思い出になったわ。
……私だけ女性用下着だったから、色々あったしね。
「ぼくとしては、もう少し背が欲しかったんだけど、逆に女装するならもう少し低くても良かったかな?」
「あはは、女装したり男装したりするのに背丈の高さは絶対条件じゃないわよ。じゃ、まあそれはそれとして、私の家はこっちだから、案内するわ」
というわけでちょっと微妙な雰囲気のまま私たちは駅から離れたのよ。
「ただいま。友達をつれてきたわよ」
「おじゃましまー-す」
「お、おじゃまします」
さて、最寄り駅から徒歩でおよそ15分。その頃にはすっかり雰囲気ももとに戻った私たちは、家に到着すると挨拶しつつ玄関から中に入って行ったのよ。すると声を聞きつけたお母さんとお父さんが出てきたのよね。
「あら、いらっしゃい。好恵の母ですけど今日はよく来てくれたわね」
お母さんは、ふたりにごく普通の挨拶をするのだけど、……怪しい、わよねえ。先日の家族の話の中で、風音ちゃんを私の恋人に奪っちゃえ♪ なんてアイディアが出ちゃって、私以外の家族のみんながそれを面白がって同意したものだから、心配で仕方がないのよ。
こんなこと、ふたりには相談できないし、こまったものよね。
「いらっしゃい。好恵の父です。ははは。君が家鳴風音ちゃんで、こっちの君が湧谷拓水くんだね。学校の友達ということで、好恵からよく話は聞かせてもらっているから、今日は会えるのを楽しみにしてたよ」
今度はお父さんが上機嫌であいさつをしてきたわけだけど、やっぱりどこか怪しい。上機嫌すぎるんだもん。
「そうですか。ええと、もしかして、ぼくが今日ここに来させてもらった理由を知っていたりしますか?」
拓水くん、もしかしてこれから女装するっていうのを知られるのが恥ずかしいのかな? ちょっともじもじしながら聞いてる拓水くん。赤面してる顔がかわいい。……いや、ダメダメダメダメッ! 男同士男同士。拓水くんは男。私も男。薔薇の華はいばらの道よっ(意味不明)。
「ああ、好恵から聞いてるよ。わかってると思うけど、うちの家庭ではそういうことを色眼鏡で見るようなことはあり得ないからね。安心して女の子の服を着てくるといい」
「そうね。好恵ちゃんの友達に、女の子の服を着てる男の子がいたらうれしいわ」
お父さんもお母さんも、そう言って拓水くんに女装を勧めているんだけど、何が狙いなの?
「はい。ありがとうございます」
「それから家鳴さん。家鳴さんも、少し男装に興味がでてきたようなことを聞いたんだけど、そうなのかしら?」
ん? お母さんが風音ちゃんにそんなことを聞いてるのは何が目的なのかしら?
「え、ええ、まあボクは男装をしたいというよりは、身長が高いので、メンズ服しか選べないというか。そういう事情だったんですけど、拓水くんが女装するなら、ボクも服装をより男装っぽくするのも有りかなと思っただけですよ」
おお、ようやく普通に『拓水くん』と呼べるようになったんだね。仲が進展してるようで良かった良かった。
「そうなのね。だったら涌谷くんが女の子の服に着替えている間、ちょっと好恵ちゃんのお兄ちゃんたちから要らなくなった服をもらって男装してみるっていうのはどうかしら?」
「え、どういうことですか?」
風音ちゃん、戸惑ってるね。ていうか私も何が何だか分からないよ。うーん、あれ? もしかして……。お母さんたち、風音ちゃんをすてきな感じに男装させて、性同一性障害ということになっている私が風音ちゃんに惚れるようにさせようって腹じゃないでしょうね。
ついでに性自任が男性で、単に異性装者であるとされている拓水くんの心を風音ちゃんから遠ざけようとしてるなんて単純な作戦を……、考えてるみたいね。まったくもうっ!
「だって、家鳴さんってそんなに高身長できれいな顔してるから、うまく男装したら、宝塚風になるかもしれないって思ったのよ。あとで私が着替えを手伝ってあげるから、ねえ、いいでしょ?」
「はあ、まあ、ボクが宝塚風になるとは思えないですけど、きちんと男装したらどうなるかはちょっとだけ興味がなくは無いですからいいですよ」
「ふふふ、じゃあ、あとでね」
「もう、お母さん、勝手に決めないでよ。さ、とりあえずそのことはおいといて、風音ちゃんと拓水くんは、2階にある私の部屋に入ってよ。さ、こっちよ」
というわけでふたりには階段を上がって二階の私の部屋に入ってもらったわけよ。
「女の子っぽい、かわいらしい部屋だね」
「風音ちゃんの部屋はどんな感じなの? もしかして男の子っぽい感じなのかしら?」
「いや、メンズ物の服を着ているのは、サイズ的な問題ってことだから、ボクの趣味そのものはかわいらしいものが好きなんだよ。だから部屋はどっちかというと好恵ちゃんの部屋に近い雰囲気かな」
「へえ、そうなんだ。じゃあ、もしも、もしもだよ。サイズ的な問題さえなければ、意外とレディースものを着たいって感じなのかな?」
「いや、ボクの身長に合うレディースものなんて無いでしょ」
「ううん、そんなことないよ。探せばいくらだって大きなサイズのレディースものは有るんだから」
「……有っても、似合わないでしょ」
お、やっぱり風音ちゃんって、本音ではちゃんとかわいらしい女の子の服を着たいと見たッ! これは何とかしなくては。
「ねえ、拓水くん。拓水くんも風音ちゃんがかわいらしい女の子の服を着たところを見たいよね?」
「見たいです。ぼくが女装してかわいい女の子の服を着たときに、隣にちゃんと女の子の服を着飾った風音さんがいると考えると、うれしくなっちゃいます」
うむ、『興奮する』と言わないだけ、まともな感性をしているみたいね。それとも言葉を選んだだけなのかしら?
「そうよねえ。私が持ってる服って、ウェストサイズが大きいし、肩幅もちょっと大きめだから、身長以外でだったら、風音ちゃんにも合う服が多いと思うのよ。だから私のロングスカートを風音ちゃんが着たら、ミディアムになっちゃう感じだろうけど、着れなくはないと思うのよね。どう、着てみる?」
私は部屋にある衣装ダンスの扉を開けて、ずらりと並んだレディース服の数々をふたりに見せたのよ。
「じゃあ、とりあえず私はこの部屋で拓水くんを女装させるから、風音ちゃんはお兄ちゃんたちの部屋で私のお母さんに男装させてもらってよ。そしてそのあとで風音ちゃんは私の部屋に戻って私が選んだレディースものに着替えて、メンズとレディースと、どっちが自分に似合う服装なのかを判断したらどうかな?」
「ほんとうに似合うのなら、ボクもレディースものを着てみたいかも。確かにふたつを着比べてみるのもおもしろいね」
「よし、決まりね♪ じゃあ、拓水くんはしばらくこの部屋で待っててね。私は風音ちゃんをお兄ちゃんたちの部屋に連れて行くから」
「このイケメン高身長のお兄ちゃんが長男の壱琉お兄ちゃん、筋肉質で一番体格のいいのが次男の真弐お兄ちゃん、そして中肉中背だけど一番頭がいいのが参彦お兄ちゃんよ。そして私たちのお母さんの三千子お母さん」
私はお兄ちゃんたちと、あらためてお母さんを風音ちゃんに紹介したの。お兄ちゃんたちとお母さんはそれぞれ私の紹介に合わせて手を上げたりおじぎをしたりして、風音ちゃんに挨拶していたわ。
「で、こちらはもうみんな知ってると思うけど、私のクラスメイトで友達の家鳴風音ちゃんよ」
「よろしくお願いします」
風音ちゃんもおじぎをしているけど、ほんと、背が高いから男装が似合いそう。いや、そうじゃないそうじゃない。でも壱琉お兄ちゃんとほとんど変わらない背丈なのね。そりゃあ、服を選ぶときについついメンズ物から選んじゃうのも無理は無いのかな。
「じゃあまずは似合いそうな服を出してあげて。で、その中から一番にあいそうなものを選んでいきましょう」
ということでその場をお母さんが仕切り出したので、私は後のことはお母さんとお兄ちゃんたちに任せて、自分の部屋に戻ったのよ。
まずは私は拓水くんをかわいくきれいに女装させないとね。
さて、その頃、お父さんは……。
「俺だけひとりで寂しい」
なんてことをつぶやいていたとかいないとか。
今回でこの件については終わりにするつもりだったけど、やっぱり亀進行になってしまいましたね。
次回はそれぞれ女装、男装&女装(?)させないといけないけど、そういう知識がとぼしいから書きづらいねえ。いつもネット取材でなんとかしてるけど、考えてみればこういった話って、ネットが無い時代だったら書けないよね。
ネットのある時代でよかったです。




