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「そして3つ目の質問。どの議会をするかだが、僕が考えているのは、総督議会だけだ。今のところはな」
意外そうな顔をパイースがしていたので、最後の一言を岩屋は付け足して言った。
「今のところ、ということは、後で選挙の対象となる者を増やすということですか」
パイースが聞く。
「そういうことだな。言った通り、最終的には様々な職を選挙で選ばせるつもりだ。教育が整ったら、行うつもりだ。そのための研究、といったところか」
「わかりました。では、そのように取り計らいます」
「頼む」
パイースがメモを取り終わってから、失礼します、と言って執務室から出る。
「……選挙、ですか」
「反対か?」
「反対ではありませんが、そこまで強く推し進めるべきかどうか悩みます」
ライタントが二人きりとなった執務室で岩屋の質問に答える。
「今の制度でも十分だ、そういうことだな」
「ええ。有能な人は周りから推戴される形でその職に就きます。その有能さをはかるための指標が武力であり、その領土ごとにある特色でしょう。これらを無視して、もしかしたら余所者がその職に就くかもしれない。それがどうしても必要なのでしょうか」
「余所者が就くのは、今に始まったことじゃないだろ。現に、僕は別世界からここに漂着した。君と出会ったあの日、サザキを亡くしたあの日、奉執将軍となったあの日……いくらでも思い出せる。たまたま僕はここで生き延びた。選挙というのは、そういった不確定要素が多いものでもある。話術が優れているという人も通るだろうが、そういった人を落とすための工夫と言うのも、セットで作る。これらをまとめて行うということも、併せてする必要があるだろうな」
「先ほど言わなかったのは……」
「さっき言わなかったのは、その話題が出なかったからだ。あと、どうしてもこの問題にぶつかるからな。不適格な人間が選挙で選ばれた場合、どうすればいいのか。というのは、選挙のみならずどの状況になったとしてもありうる共通の問題だ。この世界では、それを武力で抑え込んだ。選挙を行った場合、それは法律で抑え込まれる。秩序の維持をする者が、人か法か、その差でしかない」
岩屋はライタントにそう答えた。そのうえで、パイースが考えたものを待つこととした。




