受難の始まり
聖盾の魔法使いのスピンオフとして執筆しています。
ノークアミス王国編に登場した人物「アヴァル」の生い立ちからの物語となっていますので本編に目を通していただけると物語が楽しめるかと思います。
ある春の日差しに包まれた王都アミスの端にある孤児院の早朝。
人知れず玄関先に捨てられていた男の子それが僕だった。
まだ産まれたばかりなのかへその緒すら取れて無かったと聞いた。
黒色の髪に青白い目の色、弱々しく泣き今にも死ぬんじゃ無いかと思われていた。
孤児院に訪れる町医者に見てもらうが衰弱の原因が分からないといわれたが、弱々しくも本能で生を求めたのだろう何とか生きていた。
それが僕にとって最初の受難。
孤児院で何とか引き取ってもらっていたが、ここで生きるには競争が激しすぎた。
王都の孤児院だけあって食事に困る事はない程度の量はあったが成長期の子供達を満足させられるだけの量は無く、幼くても男でも女でも関係無く隙あらば食べ物を食べられてしまう。
当然、体が弱く線の細い僕は何時も搾取される側の子供だった。
「この子は長くは持たないかもしないなぁ・・・」
ある日町医者から非情な一言を聴かされる。
3歳にもなろうというのにかなり体の成長が遅く、他の子供とは一緒に走ったりは出来なかったからである。
「そうですか・・・、何とか歩くまでは出来るようになったのですが・・・」
世話をしてくれているシスターは僕の顔を見て悲しそうに笑みをしていた。
こうして余命宣告をされたのが2回目の受難。
◇
余命宣告され、シスターも僕ばかりを世話するわけもいかずにただひたすら命が無くなるのをひたすらに待っている日々が続いた時に、もうどうでも良くなり孤児院の裏庭の一番陽当たりの良い場所で寝転がって過ごしていた。
(こうしてるとポカポカで気持ちいいなぁ・・・)
目の前ではみんなが楽しそうに色々遊んでいるがアヴァルには一緒に遊べるだけの体力が無く、日向でひたすら横になっているしか無かった。
時より、新しく入って来た大きな子は僕に話しかけてくれるけど、一緒に遊べない事が分からなかったのか直ぐに他の子と仲良くなり、気がつくと孤児院から他所のお家のへ行ってしまう。
こうして僕の日常は過ぎて行った。
「何ですかこれ?」
4歳を過ぎたであろうある晴れた日に世話をしてくれているシスターが僕の首にプレートをネックレスと一緒に掛けてくれた。
「本来なら3歳なのですが、貴方はいつお別れするか分からなかったので今日になってしまいました」
と謝りながらくれたネックスとプレート。
名前と書かれた場所には何も書いてない。
誕生日と書かれた場所には僕がここへ来た日なんだろう当日の年と日付が刻み込まれている。
何時お別れするかも知れない僕に渡すのをかなり迷っていたみたいでシスターは渡す時にぼろぼろと涙を流していたのは今だに覚えている。
その日からシスターが僕に本を読むようにと本を貸してくれた。
一日中日向で動かずに過ごしているのを見て悲しくなったりと言われた。
「まだまだありますからね、但し夜は見ては駄目です、目が悪くなってしまいますからね」
その日以降シスターは僕に笑顔を見せくれる様になって僕も少しだけ笑うようになったと後から聞いた。
◇
プレートを貰った次の春の日の事だった。
シスターが女の子と買い物に出かけたけど帰って来なかった。
夕方になっても帰って来ないのを他のシスター達が気がついて警備隊に連絡したが結局シスターと女の子は帰ってくる事は無かった。
翌日、警備隊の人が女の子が持っていた籠とウィンプルを持ってやって来た。
どうやら街の中で目をつけられていたらしく、誘拐されたと話しているのを聞いてしまった。
門の外で見つかったらしいその二つはボロボロになっていて多分もう二人は見つからないだろうと聞いた時はその場で泣く事も出来なかった。
何時も笑って話しかけてくれたシスターが居なくなってから僕はまた体調が元に戻ってしまい、上手く歩く事すら出来ない日もあった。
僕にとっての3回目の受難。
悲しみを消化できずにいた6回目の産まれたであろう日を過ぎて、それでも僕は何とか生きていた。
孤児院に沢山の荷物が届けられていた。
【国王様誕生の祝い】
と書かれたその荷物はどうも王様の誕生日をお祝いでくれた荷物だったみたい。
誰がくれたとかは僕達にはあまり関係無く、降って湧いた食べ物や洋服に皆んな夢中で取り合っていた。
僕は取り合いに参加しても負けるだけなのでみんなが興味を示さない本を何冊か貰っていた。
一年中過ごしやすいはずのアミスの街に季節外れの雪が積もったのはその年の事だった。
かなりの大雪で僕も二週間ほど体調を崩して寝込んでいたが何とか持ち直した。
大雪が溶けて少し寒いけど暖かな日差しが戻って来た日、
孤児院に何人かの子供が預けられた。
どうも大雪で親が凍死した子や食べていけなくなり他所の町から置いて行かれた子、他所の町の孤児院から移って来た子などそれぞれの事情でここへ辿り着いたみたい。
僕はまだ戻らない体調を崩さないように、日課の日光浴と読書を楽しんでいた。
新しい子達が入ってきて三日目に同じ年の女の子が僕の隣に座って来た。
「何時も何を呼んでるの?」
僕はその日お気に入りの【勇者と竜と大魔王】の本を読んでいた。
「私もその本大好き」
と笑って話しかけてくれたのは二ジェルという女の子だった。
二ジェルは他所の孤児院に居たのだけど、少し大きくてお姉さんだからここへ行ってとお願いされた子だった。
その日から僕と二ジェルは一緒に並んで本を読んだり、一緒にご飯を食べたりして初めてお友達となってくれた。
二ジェルは何時も一緒に居てくれた。
僕も二ジェルと一緒に居た。
こうして僕と二ジェルは一緒に過ごしていた8回目の春の日を迎えた時に二ジェルは大きく綺麗な馬車に乗って行ってしまった。
二ジェルはとても頭が良く、読んだり話したりがとても出来たので僕も一緒にお勉強したりていたが二ジェルのおばあちゃんと言う人が訪ねて来て二ジェルの家族になってくれると言って二ジェルを連れて行くことになった。
「ごめんね、ずっと一緒に居たかったけどおばあちゃんがお迎えに来たからここに居られなくなっちゃった」
泣きながら僕にお別れを言ってくれた二ジェルが僕に抱きついて来て離れようとはしなかった。
僕も一緒に居たかったけどシスター達から二ジェルはここに居るよりおばあちゃんと一緒に暮らした方がとっても笑っていられるよと言われ僕は二ジェルの笑った顔が大好きだったから二ジェルにお別れを言うことにした。
「二ジェル、これあげるね、おばあちゃんと一緒に笑ってね」
僕のお別れを聞いた二ジェルが泣きながら僕が大好きだった【勇者と竜と大魔王】の本を受け取ってくれた。
笑って最後は手を握ってさよならをした二ジェルの顔が僕の中に何時までも残っていた。
◇
二ジェルが引き取られて秋のが来ようかと冷たい風が吹き始めた時、僕の体に異変が起きた。
熱が下がらない日が多くなり起き上がる事も出来ない日もあった。
そしてある日の事だった・・・・
その日は何故か何時もより体が動けたので日向で休んでいた時だった。
「ねえ、君はどうしてそんなに体調が良くなさそうなの?」
そうこの人と出会った事で僕の人生が大きく変わって行った・・・
アヴァルはこれから別の意味で受難が続きます。
次回はあの人達が出てきます。




