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断罪された聖女ですが幼なじみの聖騎士と他国で幸せに暮らします  作者: 小兎


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13 ドゥショモネ王国のその後



さて、ホリーを追放したドゥシヨモネ王国はどうなったのでしょうか。


答え:取り返しのつかない破滅の淵に立たされていました。

かつて黄金の輝きを放っていた王国の守護結界は霧散し、空はどんよりとした暗雲に覆われている。

清らかだった水源は泥のように濁り、肥沃だった大地は見る影もなくひび割れ、家畜は病に倒れて横たわっていた。


「なぜだ! なぜ作物が実らぬ! 聖女(偽物)を挿げ替えたはずだろう!?」


荒れ果てた王宮の謁見の間。かつてホリーを断罪した第一王子ストルスルは、もはや見る影もなくやつれ、狂気じみた形相で叫んでいた。


ホリーが国を去った後、聖教国の正教会は即座に王国からの完全撤退を宣言した。

真の聖女を蔑ろにし、あまつさえ「偽物」と呼び立てた王国に、留まることを望む聖職者は一人もいなかったのだ。


聖職者が去り、神の加護という名の奇跡が途絶えた王国は、ただの「呪われた地」へと成り果てていた。


「王子、バッチェリ公国からの返答が参りました! 『自国の聖女は多忙につき、そちらの素晴らしい新聖女様で解決なされよ』とのことです!」


「……っ、どいつもこいつも! 誰か、誰かホリーを連れ戻してこい! あれがいれば、この国は……!」


公爵令嬢ゴーディ・ヴィシャスは、かつてのホリーのように豪華な聖女の法衣に身を包んでいましたが、そのおざなりの祈りに神の加護が宿ることは万に一つもありませんでした。


「何故だ! 何故ホリーごときが出来ていたことが、貴様にできないのだ!」


王宮の奥底、瘴気に侵され黒ずみ始めた壁に囲まれた部屋で、第一王子ストルスルは髪を掻きむしり、獣のような声で怒鳴り散らしていました。


「そんな……! あれはホリーが嘘偽りを並べて、大袈裟に喧伝していただけだと王子が仰ったではありませんか! 私の純真な祈りの方が勝っていると、そう仰ったのは貴方ですわ!」


かつて勝ち誇った笑みを浮かべていた公爵令嬢も、今や見る影もなく、ヒステリックに叫び返します。


しかし、いくら祈りの言葉を口にしようとも、本物の聖女ではない彼女に花の一輪さえ咲かせる力があるはずもありませんでした。


外からは、地響きのような怒号が王宮を揺らしています。


「ホリー様を返せ!」「偽聖女を差し出せ!」「我々を見捨てた王子を引きずり出せ!」


城門の前には、飢えと病に苦しみ、絶望した民衆たちが暴徒と化して押し寄せていました。


ホリーが微笑み一つで静めていた民の不満は、今や王国を焼き尽くす業火となって燃え上がっています。


第一王子は、血走った目で閉ざされた扉を睨みつけ、自分たちが放り出した聖女がどれほどの重石おもしとなってこの国を支えていたのかを、滅びゆく間際になってようやく思い知らされることとなったのです。


かつてホリーを偽聖女と罵り、彼女に石を投げた貴族たちは、今や自らの領地が荒れ果て、魔物が跋扈するのを止める術もありません。

豪華だった邸宅で、彼らは互いに責任をなすりつけ合い、醜い罵り合いを繰り返すばかりでした。


「セイドリック……! あの聖騎士さえいれば、力ずくでもホリーを連れ戻せたものを……!」


第一王子が血を吐くような思いで後悔の声を上げても、すべては後の祭りです。


彼は最後まで理解していませんでした。最強の聖騎士セイドリックは、最初からこの国に忠誠を誓ってなどいなかった。彼は聖教国からホリーを守るために派遣され、その魂のすべてを彼女一人に捧げていたのです。


王子の無慈悲な命令など、彼にとってはそよ風よりも価値のないものでした。

それを理解せず、力で制御できると思い込んでいた王子の傲慢さが、この結果を招いたのです。


かつてホリーを「貧相なブス」と呼び、「庶民聖女」と蔑んだ王子。


彼は今、自分が使い捨てたはずの聖女が、実はこの国の命運そのものであったことを、崩れ落ちる玉座の上でただ呆然と噛み締めることしかできませんでした。


ドゥシヨモネ王国の空はどんよりと鉛色に曇り、二度と晴れることはありませんでした。


かつての栄華は見る影もなく、王国はただ静かに、ゆっくりと、呪われた地へと没落していくのでした。


かつて「聖女」を自らの手で放逐したドゥシヨモネ王国。その名は今や、近隣諸国から「愚行の象徴」であり「呪われた不毛の地」の代名詞として、忌み嫌われ囁かれていました。


ホリーが国境を越えたあの日から、王国の時計は止まったかのように衰退の一途を辿りました。そこには、二度と戻らぬ黄金の加護への、空虚な後悔だけが吹き溜まっていたのです。


まず、大地が死にました。


聖女の加護を失った畑は砂を噛むように乾き、どれほど種を撒いても芽吹くことはありません。かつて黄金色に輝いていた麦畑は、今や立ち枯れた黒い茎が風に揺れる不気味な荒野と化しています。


次に、人心が腐り果てました。


「真の聖女」と持ち上げられていた公爵令嬢ゴーディは、奇跡を起こせぬことが露呈すると、飢えと怒りに突き動かされた民衆の手によって引きずり下ろされました。

彼女を寵愛し、共にホリーを追い出した第一王子ストルスルもまた、無策と傲慢を糾弾され、王位継承権を剥奪。

今は王城の地下深く、日の当たらない独房で「ホリーさえいれば、こんなはずでは……!」と、狂ったように元婚約者の名を呼び続けています。


しかし、その声が聖教国で幸せを謳歌する彼女の元に届くことは、二度とありません。


そして、国としての形を失いました。


飢餓と疫病が蔓延し、誇り高き騎士団も無能な王族に愛想を尽かして次々と脱走。

守り手を失った国境線は、隣国からの「人道的支援」という名目の侵攻をいとも容易く許し、ドゥシヨモネ王国は地図からその名を消され、実質的な属国へと成り下がりました。


かつてホリーに石を投げ、彼女を嘲笑った貴族たちは、今や着飾る服もなく泥水をすすりながら、風の噂を耳にします。


それは、遠い聖教国で「慈愛の母」と呼ばれ、かつて自分たちが手放した最強の聖騎士セイドリックと、この上なく幸せに暮らしているという彼女の噂でした。


自分たちが地獄のような日々を過ごす一方で、彼女は温かな家庭を築き、愛する夫と子供たちに囲まれている。

そのあまりにも残酷な対比に、彼らはただ絶望し、枯れ果てた涙を流すことしかできませんでした。


「もしあの日、聖女ホリーを擁護していれば……」


しかし、後悔は常に遅すぎました。

かつての傲慢な人々の嘆きも、ひび割れた大地に吸い込まれて消えていくだけ。


ドゥシヨモネ王国の名は、歴史書から「愚かな選択をした国」として静かに消え去ろうとしています。



一方で、ホリーたちの住む聖教国は、彼女の柔らかな微笑みと、彼女を命懸けで守り抜くセイドリックの深い愛、そして子供たちの明るい笑い声と共に、今日も眩いばかりの光に満ち溢れているのでした。









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