127 魔法の基礎能力
(ルーク)
「ライアー様、45点!」
「スティーブ様、70点!」
二連続の高得点に、他の受験生達は『ワッ!』と沸き立った。
「グリード家はやっぱり凄いな……。」
「戦闘特化の伯爵家様だもん。これくらいって所じゃない?」
ヒソヒソと囁かれる賛辞の言葉に、二人はフフンッ!とドヤ顔でリングを降りていったのだが……。
────ギロッ!!
俺を睨んでいく事は忘れない!
「……アイツらぶれねぇよな〜。」
あんなにフルボッコされて尚折れない、あの様子……敵ながらアッパレ!
心の中で拍手してやりながら、続けて『そういえばアイツらも攻略対象だったっけ?』と思い出した。
ゲーム内のアイツらの学院生活を思い出せば、ライアーは学院を卒業後は騎士団に入隊する事が決まっていたし、スティーブも魔法に特化した魔法騎士団に確か入隊する事になっていたはずだ。
そして若きエースとして大活躍をする予定だが、その時の派閥は……。
俺がチラッと視線を向けたのは、不遜な態度で試験の進行を見守っているオーティス王子様だ。
確か、同じ学年のオーティス王子様の取り巻き的な立場になっていた様な?
モヤモヤモヤ〜!
必死に思い出していくと、生徒会やらなんやらがあって、それで一緒に……。
そして特待生枠で入学したリリアと共に、学院に蔓延る悪役たちと戦い────……?
「────っつーか、お前らが悪役だろ。」
ついついズバンッ!と突っ込んでしまったが、それは殺される予定だったルークになったのだから仕方がないと思う。
まだ睨んでくる二人に黒い笑みを見せてやれば、二人は汗をダラダラと掻き、慌てて目を逸らしていた。
「────次っ!オーティス様!」
暴走王子様が呼ばれると、周囲はまたざわつき始める。
「オーティス様だ。」
「剣も魔法も使える万能タイプとお聞きしていたが、果たして────……?」
「いつ見ても素敵な立ち姿……♡」
さすがは王族、かなりの注目度な様で、全員の視線は釘付けになっていて、その視線を受けたオーティスはフッと笑った。
これはかなり自信あり?!
ワクワクしながら見ていると、点数は中級くらいの火属性魔法で50点。
確かに平均よりは上だが、飛び抜けて〜ではなさそうだ。
「万能タイプか……。一見弱点がなくて良いけど、下手すると全部中途半端になるんだよな〜。────あ、そういえば、アッシュも万能タイプじゃん。」
「うん。でも俺、全部めちゃくちゃ優秀だからね。中途半端にはならないよ。」
セレンに前髪を引っ張られておでこ丸出しなアッシュが鼻高々に言うと、セレンが前髪をもぎ取る勢いで強く引っ張る引っ張る!
アッシュが怒って同じく前髪を引っ張ると、お互いお辞儀している様な格好になってしまい……何してんの?と思った。
はいはい、喧嘩は止めましょうねぇ〜!
そろそろ引き時だと、二人の下がっている頭をスパンッ!と叩いて喧嘩を中断させると、「次、エヴァ様!」と名前が呼ばれ視線を上げる。
悪役令嬢エヴァ様。
確かエヴァの得意属性は────……。
エヴァはリングの上に上がると、手の平を上に向ける。
すると、その手のひらの上に風と水の塊が集まっていき、それがやがて氷の結晶になった。
「氷の結晶……!」
「魔力操作のレベルが違う……。流石エヴァ様。」
氷の結晶は規則正しい魔力分子の配列が必要で、それには魔法の知識、更にそれを組み合わせて並べる魔力操作が必要になる。
<魔力分子>
魔力の元と呼ばれる要素の事
これを合わせたり並べたりする事で特定の魔力を作り出し、更にその魔力をッつなぎ合わせて魔法が使えると考えられている
この時点で、エヴァは魔法の天才と呼べる能力を持っていると分かる。
エヴァは一切の感情を見せない無表情のまま、氷の結晶を増やしていき……魔法陣を使って一気にそれを噴射した。
ガガガガッ!!!
集まった氷の結晶は、物凄い勢いで的へ当たり、その点数は────……。
「────っエヴァ様、85点!!」
アッシュとセレンを抜けば今日の最高得点に、周りは沸き立ち、一斉にワッ!と歓声を上げる。
ゲームの中のエヴァは、リリスの邪魔をする際、魔法を使って邪魔をするのだが、もっとも得意だったのが今の基本属性である水属性魔法の派生とも言える氷属性の魔法だ。
魔法は基本属性の他にも多数存在していて、更に新たな属性も続々と生まれていっているのだが、これらの殆どが基本の魔法属性からの派生属性に当たる。
このエヴァの水属性の魔力から氷属性がいい例。
勿論物理攻撃にもその派生属性があるし、更に上位互換ともいえる属性もあるらしく、正直全部覚えてられるか!と言いたくなるほど存在しているらしい。
とりあえず派生属性や上位互換の属性は、基本属性より複雑で威力も高いことが多い。
だから気をつけるべし、これで良し。
パチパチと拍手に送られリングを降りたエヴァ。
それをなんとなく目で追うと、オーティスの隣に並んだ瞬間、何かを囁かれていたみたいだが、エヴァは軽く頭を下げただけで表情は一切変わらなかった。
しかし、なんだかオーティスの方が険しい顔をしていたため、あまり良い事は言われていないのでは?と思われる。
やな感じ〜。
もしかして、エヴァの方が点数が高いから嫉妬?嫉妬じゃねぇ〜の?
心の中でプププ〜!と笑ってやった後も試験は続いたが、エヴァより点数が高い受験生はとうとう出ずに試験は終了したのだった。




