122 厳しいな……
(ルーク)
「え〜これより、剣術と魔法の基礎能力テストを始める。
まずは魔力の基礎能力を測定するため、こちらの魔道具を使うぞ。」
入ってきた試験官の一人がそう言って運び込まれてきた魔道具を指差す。
それは全長10m越えの大きな土の固まりにも見える人型の魔道具で、ちょうど心臓部分に的の様なモノがついていた。
「これは特殊な素材、<絶魔石>で作られた魔道具で、魔法をあの的に当てれば、魔力の糸でつながっている石板に点数が出る。
あの魔道具は、魔法はほぼ通さない上、この会場全体に攻撃力と魔法力ダウンの強力な魔法が掛かっているため、毎年の平均点は20点といった所だな。
試験は総合点で競うため、魔法型の受験生にとっては点数を稼ぐ大チャンスだ。どうか頑張ってくれ。」
<絶魔石>
魔力が伝導しない特殊な石
その試験官は、リングの下の方に設置された巨大な石板を指さしたので、俺達はそれを視線で追う。
「なるほど、アレに点数が出るって感じか。」
「まぁシンプルで分かりやすい試験だね。」
「平均点は20点か……。」
魔法がそこまで得意ではないセレンは、う〜ん……と悩んでいる様子だったので、俺があーだこーだと魔法を使うコツ的なモノをしっかりと教え込んでやった。
「いいか?セレン、魔法はイメージだ。ちゃんとしたイメージを持つ事が必要で……。」
「なるほど……ルークの言う通りだ!」
セレンはキラキラと目を輝かせながら、俺の話を聞いてくれたが、その横にいるアッシュの目は冷たい。
反抗期か、このやろう!
冷たい目をしているアッシュの背中に飛びつき羽交い締めにしてやると、セレンが鞘に入ったままのレイピアで、アッシュのお腹をガスガス刺した。
するとアッシュが怒って足でレイピアを蹴り、セレンの目が吊り上がった所で「そこ!うるさいぞ!」と注意され、三人揃って黙る。
「ほら、アッシュの反抗期のせいで怒られたぞ。」
「そのとおりだ。謝れ、ルークと私に。」
「俺、被害者なんだけど?」
ボソボソ、ブツブツと三人で不穏な空気を漂わせている間に、試験はそのままスタートし、名前を呼ばれた受験生がステージに上がった。
受験生の数は非常に多く、正直どこに誰がいるのかわからない。
どうやら先程、座学の試験にてライアーとスティーブに出会えた事自体が奇跡だった様だ。
「アイツら、何番目くらいに呼ばれるんだろうな〜。────ん?」
キャンキャン騒がしかった我が兄達を思い出していると、前に呼ばれた受験生が、ちょっと見知った人物だったので驚いた。
クリンクリンとパーマ掛かった鮮やかな藤色の髪に、つり上がったお目々の、猫にちょっと似ている少年……先程街の入口で騒いでいた少年だ。
「あれれ〜?ドラ猫坊やじゃなねぇか。アイツ受験生だったのか。」
ツン!と顎を挙げて歩く姿は、プライド高きシャム猫にも見えるが、うるさかったからどら猫でOK。
どうやらアイツは受験生だったらしく、今回の試験にてまさかのトップバッターの様だった。
「【クロアッサム家】の<サミュエル>様だ。」
「伯爵家のクロアッサム家か……。軍事用の戦闘系魔道具だと右に出るモノはいないと言われているが、魔力はどうなのかな?」
ヒソヒソと噂される話を聞き、どうやらお偉いさんだった事を知る。
だからあんだけ偉そうだったわけか〜。
ドラ猫から、ただ聞き分け悪い金持ち駄々っ子へと頭の中でシフトチェンジ!
そのまま浮かんだイメージに痛い痛いゲンコツを食らわせてやった所で、アッシュが声を潜めて話始めた。
「クロアッサム家は、グリード家と並ぶ戦闘を得意とする伯爵家だね。
特に戦闘用魔道具は、国になくてはならないモノと言われて重宝されている。」
「なるほどね〜。そこのお坊ちゃんか。お手並み拝見ってやつじゃん。」
ピュ〜♬と口笛を吹いて見守ると、試験官に名前を呼ばれたサミュエル君は魔力を宿した両手を地面に勢いよくつけた。
「ハハッ!俺の力を見ろ!!こんな木偶の坊、ぶっ壊してやるよ!」
大きく顔を歪めて大笑いしたサミュエル。
両手をつけた地面に大きな魔法陣が広がっていき、そこから巨大なゼンマイ仕掛けの手だけが現れた。
【からくり術士】
<マリオネット・スレッド>
無属性の魔力でできた《からくり・ハンド》を召喚し、様々な用途に使用できる、召喚系創作魔法
からくり・ハンドの使用種類、精度、強さは術者のからくり熟練度、器用さ、魔力、魔力操作によって変化する
(スキル条件)
一定以上の魔道具制作経験値、戦闘経験値、魔力、魔力操作、器用さがある事
「うわっ!!!」
「きゃっ!!何あれ!??」
周りの受験生達が驚いて悲鳴を上げる姿を満足気に眺めたサミュエルは、そのまま的を指差す。
「あの的を壊してやれ!!」
総一言言った瞬間、その手からはボッ!!と巨大な火の玉が発射され、的へ直撃!
ゴォォォォォ!!と凄まじい勢いで魔道具が燃えだした。
「ハハハハハ〜!!黒焦げだ〜!!!」
大笑いするサミュエルだったが────……?
────シュポッ。
激しく燃え上がっていた炎は、一瞬で消えてしまったのだ。
「…………えっ?」
「サミュエル様、55点!────次!」
目が点になっているサミュエルに告げられたのは、なんと55点。
チッ!と大きな舌打ちを残し、ステージを降りていくサミュエルを見て、この試験の難しさを知った。




