121 感動した!
(ルーク)
「な、なんだ、お前達は?」
突然自分たちの目の前に立ち塞がった美少女&イケメンに、二人は驚いたのか、軽く背中をしならせた。
そんな二人を冷ややかな目で睨むセレンとアッシュは、二人揃ってバカにした様に鼻で笑いだす。
「はじめまして、挨拶が遅れてもうしわけありません、ルーク様のお兄様?
ルーク様の専属護衛のアッシュで〜す。
本当は直ぐにでもご挨拶をと思っていたのですが、残念ながら屋敷の中で全く見当たらなくて……一体どこで何をしていたのですか?
お部屋に閉じこもっていたとお聞きしましたが、どこか体調でも?」
「────っ!!ぐっ……!」
「っうるさい!貴様には関係ないだろう!」
アッシュの遠回しな嫌味攻撃!
絶対にコイツ、分かってて言っているぞ!
セレンとアッシュには、俺の家族に関しての話は、特に詳しい説明をしていなかったが……多分セブンあたりがペラペラと話したに違いない。
セブンは、なぜかやたら俺のことを神聖化している節があり、気がつけばあっちこっちで、元家族達の悪評や俺の今までの生い立ち、活躍(?)なども喋りまくる。
そういえば前、修行中に倒れて半分気絶している二人にひたすらその話を言い聞かせる睡眠学習みたいな事をしていた時もあったな……。
「…………ハァ。」
思わず頭を抱えている間にも、四人の間には火花が散る。
「大体、なんなんだよ、護衛って!生意気な!
おい、女!どうせそんなの肩書だけだろう?金目当ての汚い女め!」
「……ふっ。バカにできるのも今だけだと思いますよ。
大きな口は叩けば叩くほど後で後悔します。────……目にもの見せてやるから覚悟しておけ。」
ライアーが高圧的にセレンを指さし怒鳴ったが、セレンにとってそんなモノは春のそよ風レベル。
寧ろ、闘争心に火がついて、後でもっとボコボコにされるから止めとけと心から言いたい。
その時の状況を思い浮かべるとプッ!と吹き出しそうになったが、必死に我慢してシリアスな顔のまま腕を組んで見守りの体勢を取った。
俺、ボス。セレンとアッシュはボスの忠実なる右手と左手……これは、幼心を擽るヒーローごっこだ!
ふんふん〜♬と内心ご機嫌でいると、反対に機嫌が急下降していったのは、ライアーとスティーブ達だ。
怒りのボルテージは多分後少しで大爆発寸前の様で、今度はスティーブが、ひくひく口元を震わせながらセレンとアッシュを指さした。
「そもそも平民の分際で、貴族相手にその態度はなんだ?
お前達がそいつの護衛だというなら、あくまで雇っているのは、グリード家の当主である父様だろう!
つまり父様の方に忠誠を誓うべきだ。
いっておくが、そいつに媚を売った所でなんにもならんぞ?
父様と母様を本気で怒らせたのだから、これから先、無事に過ごせると思うなよ。」
おぉ〜!なんだかんだとあんな目にあったのにまだ復讐を考える事ができるなら、それは本物だ。
敵ながらアッパレ!
だからといって手は抜かないけど〜。
腕を組んだまま、その健闘を称えていると、アッシュとセレンが突然プッと吹き出した。
「お貴族様ねぇ?あれれ〜?でもさ、確かお貴族様の中で愛人の子供は不義の子。貴族の子と認められないって言われてなかったっけ?
それに、屋敷にいないご当主様……ねぇ?」
「ルークが正妻の子だと聞いた。ならばグリード家の正当な世継ぎはルークだ。
私はそこまで偏った見方はしないが……まだまだそう思っていないお貴族様は多いと聞く。気をつけた方がいいんじゃないですか?」
「────っ!!きっ、きさっ…………っ!」
大きな声を上げて怒鳴ろうとしたライアーの顔の前に、セレンは手の平を見せつける様に突き出し言葉を止めると、真正面からライアーを睨みつける。
「私はルーク様だからこそついていく事を決めたのだ。
グリード家も正妻、愛人、そんなモノは関係ない。この命が続くまでルーク様と一緒に戦うつもりだ。相手が誰であろうともな。」
「────っ!!」
真正面からセレンに睨まれたライアーは、目と口を大きく開きポカーンとしてしまった。
そんなライアーの肩を叩き「おいっ!」と怒鳴るスティーブだったが、アッシュのクスクスと笑う声にハッとして前を向いた。
「そういう事〜。俺もココが気に入っているから、邪魔するなら容赦しないよ?
よくよく考えて行動するのが長生きする秘訣じゃない?じゃあ、さようなら。」
「……貴様、顔は覚えたからな。」
スティーブは、ギリッと唇を噛み締めて憎々しげな目でアッシュを睨んだ後、まだ呆けているライアーを引っ張って離れていってしまった。
「ハァ……。あれがルークの兄か。随分と器が小さいな、小物が。」
「ん〜全然似てなかったね。愛人の女の方に似ているってことかな?」
二人は呆れた様子でため息をついていたが、仁王立ちで見守っていた俺、とうとう限界がきてグスン!と鼻を鳴らす。
「お、お前らぁぁぁぁ〜!師匠思いの弟子に育ってくれて、俺は嬉しい!感動したぁ〜!」
「────っ!??」
「ちょっ、やめてくれない!?汚いんだけど!」
涙を流しながらセレンとアッシュに抱きつくと、セレンは真っ赤になって固まり、アッシュは俺の鼻水から逃れようと、必死に顔を背けた。
いやいや、だって嬉しいじゃん!
これは師匠として良いところを見せないと!
俄然やる気になった俺、そのやる気は天井知らずに燃え上がる。
「俺、頑張るから!師匠として!いいか〜?俺の活躍をしっかりと見て勉強するように!」
「は、はい!」
「……いや、アンタさ、魔法────。」
アッシュが何か言おうとしたその時、部屋の中にぞろぞろと試験官達が入ってきたのが見えて、「────しっ!」とアッシュを黙らせた。
どうやら試験が開始される様子。
ちゃんと説明を聞かないと!




