113 お助けキャラ
(ルーク)
懐かしき軍人時代を思い出すと、上官にこういう輩は結構多くて、それはそれは新人の頃は理不尽な暴言と暴力に支配されていた気がする。
まぁ、後で黙らしたけどね〜、拳で!
『ナ〜ハッハッ!』
その当時の事を思い出して笑う俺を、アッシュとセレンは不思議そうな顔で見てきたので、なんでもな〜い♬と慌てて首を振った。
過去の栄光(?)は、若者には言うべからず。
カッコ悪いって言われちゃうから!
誤魔化している間にも、外での言い合いは加速し、ガシャンッ!ガシャンッ!という破壊音までし始めたので、窓から飛び出して外に出た。
「ちょっと見てくるわ〜。面倒くさそうなヤツだったら時間かかるし。二人は待機な〜。」
「はいは〜い。」
「お気をつけて。」
アッシュは軽く手を振り、セレンは真剣な顔でいってらっしゃ〜いしてくれて、そんな弟子達二人に見送られながらトントンッと軽快なステップで前に向かっていった。
◇◇
「申し訳ありません。しかし規則ですので、こちらも譲る事は……。」
「ハァ〜本当に王都の守備隊は無能だな。こんなモノ、我が領だったら問題になどならないぞ!」
頭を下げているのは、背中に大剣を装備している守備隊らしき男性で、顔がまだ見えないので詳しい歳は不明だが、声からしたらまだ若そうだ。
そしてそんな男性の前で腕を組んでふんぞり返っているのは、多分俺と同じくらいの歳の少年だった。
クリンクリンとパーマ掛かった鮮やかな藤色の髪は、パッと明るい印象を人に与えるが、切れ長の目に猫の様につり上がった目元と、怒り狂っているへの字の口元では、明るい雰囲気は吹き飛ぶ。
ニッコリ笑えば可愛いチャム猫ちゃんだね!と言える様な可愛い顔をしていると思うが、怒っているからドラ猫に降格だ!
勝手に少年をジャッチしながらのんびりと近づいていけば、その少年は俺に気づき、ギロッ!と睨みつけてきた。
「なんだ、貴様は。貴様の様な小汚い平民風情が、この俺に近づくなど恐れ多い!」
「あ〜……それはすまん、すまん。でも、俺、お前の名前知らないし〜。」
ポリポリと頭を掻きながら答えると、少年は────爆発した。
「き、貴様ぁぁぁぁ!!!今、なんと言った!??へ、へ、平民如きがこ、こ、この俺に……っ!」
「…………あ、ううん?」
少年はまるで心臓発作を起こしたかの様に、心臓部を抑えて凄い顔で睨んできた。
その顔がなにかしらの記憶の端に引っ掛かりそうで、モヤモヤしたが……やっぱり思い出せなさそうなので、あっさり諦める。
「とりあえず、ここらへんで止めておこうぜ。お前はまだ年若いから知らないかもしれないが、大人になるとだな〜感情とかプライドとかより効率を考えて〜……。」
「な、な、な、な……!?」
ココらへんで頭を下げていた守備隊員の男が頭を上げたので、ビックリしている顔とご対面する。
更に後ろにズラッと並んでいた守備隊員も、ポカンとした顔で俺を見ていたが……それよりも俺はその頭を下げていた守備隊員の方に驚き、同じ顔をした。
【お助けキャラの一人】
王都の守備隊員兼当て馬的キャラ<アレク>
爽やかで涼しげのあるベリーショート。
そして黄色味のある赤色の髪は、まるで黄昏の空の様な色の様で、悲しき当て馬的な存在と相まって少し悲しげな気持ちになってしまう。
流石は守備隊をしているだけあって、背は高く体格もかなり良し。
ゲームの中にて、戦闘能力の高かったアレクは、街を守る事に尽力する真面目で優しいイケメン青年だった。
歳はまだ二十代前半くらいか……。
この外見で国民人気がバリ高な守備隊員なら、攻略対象でもおかしくないんだが……やっぱり攻略対象はちょっと捻ったキャタクター性がないと駄目って事?
ゲーム内の攻略対象を思い出せば、確かにヤンデレだのサイコパスだの暴君だの……ちょっと厄介なオプションがついている事が多い事に気づく。
結婚するなら優しい一択だぞ〜?とゲーム内の主人公リリスに、心の中で何度言い聞かせてきた事か……。
ハァ〜……と息を吐き出した後は、アレクの顔をジッ〜と見つめた。
お助けキャラは、ちょこちょこと出てきては主人公を助け、いつの間にか物語上から消えているキャラである。
そんなお助けキャラの一人であるアレクは、リリスが王都で過ごす際にちょこちょこ出てきては協力してくれるキャラクターだった。
確か、悪いヤツを捕まえたアレクを見かけたリリスが、その悪人に情をかけたのが出会いのキッカケだったはず……。
スキップ機能全開であったため、おぼろげではあるが、必死にアレクとリリスの出会いを思い出す。
『この人を赦してあげて。私がその罪を一緒に背負うから!』
店の人を切りつけ、品物を盗もうとした盗人を庇うリリス。
そしてそんなリリスの凛々しい姿に心を打たれ、アレクはリリスに惹かれていく。
『リリスは皆に優しい女性だな。』
そう言って微笑むアレクの先には、攻略対象とイチャイチャするリリスの姿が……。
「…………。」
────ニッコリ!
前世からどんなに活躍しても殆どの手柄を面がいいイケメン君に持っていかれる俺、親近感が湧きまくり思わず笑顔に。
勝手に『俺達なか〜ま!』と頭の中で拍手しておいた。




