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天声だだ漏れ転生〜女神の温もりと共に〜  作者: 白銀鏡
【第三部】 第二章 鏡と共に
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第22話 己を映す物語

私の、白銀鏡の物語を、やっと始めることができそうです。

紆余曲折ありましたがこれがスタートラインです。


己を映す物語


どうぞ。

 辺りは真っ暗な空。


 王宮を後にした俺は、彼らの気配を頼りに、ある方向へと体を進めていた。


(あいつら、今は一緒のようだな……はぁ)


 もう一つの悩みの種に、思わずため息が出る。


 三人の気配をたどって進んでいくと、やがて兵舎の屋根の上で、誰かが話し合う様子が遠目に見えた。


(いたいた——あれ?)


 いつもと違うその光景に首をかしげていると、建物の裏からこちらへ手を振るマリラの姿。


(マリラ……何をこそこそ隠れてるんだ?)


『……ふふふ』


 手招きするマリラに誘われるまま、俺もなんとなく声を潜める。


 そして、彼女の指差す先へ耳を傾けた。


『——そしたらあいつ、隣村の女に一目惚れしやがってよ……』


『何何! まさかフラッツさんの初恋話ですか⁉︎』


 どういうわけか、いがみ合っていたラキとガンツが横並びに座り、何かの話で盛り上がっている。


 再び見合って、首を傾げる俺とマリラ。


『私もよく分からないけど、私が来た頃にはあんな感じに——』


(どうなってんだ……まぁ、あいつが打ち解けたんなら問題ないけど)


 もう一つの悩みの種だった二人の関係は、あっさり解決していた。


 俺は微笑むマリラと共に、彼らのもとへ飛び寄る。


『あいつ、変にませてるんだよなぁ……ん? あれは⁉︎』


 いち早く気づいたのはガンツ。

 そして二人は、揃って俺の方へと振り返った。


『マリラさん! それにカガミさんも——ルミナさんの方は……?』


(ああ、何とかなったよ——それより、随分と仲良くなったもんだなぁ)


 早速笑い合う俺とラキ。


 ——すると。


『それよりはこっちだ!』


 その横から、大きな体がぐっと前に出てきた。


『ラキから全部聞いたぞ! お前の()()()()()とか何とかで、早くフラッツのとこに連れて行きやがれ——』


 言葉を間違えれば、今にも拳が飛んできそうな形相で、俺へと詰め寄ってくるガンツ。


 弟と聞いた途端にこの様子である。


 仕方がない。

 彼はそのためにここに来たのだから。


 ——だが、俺は困っていた。

 今のフラッツの居場所は、俺にもわからない。


(待て待て! 俺は彼に一度しか会ってないから、その気配ってやつを、いまいち覚えていない——)


『なにぃ……』


 必死に事情を説明するものの、ガンツの鋭い眼光は少しも緩まらない。


(ほ、本当だぞ……?)


『ガンツさん……カガミさんはスケベですけど——嘘はつきませんよ』


 一緒になって彼を宥めるラキ。


 しかし——。


『だったらもういい! 生きてるってことは分かったんだ。俺一人でアリヴェルまで探しに行ってやる——』


 そんなことで彼は止まらない。

 とうとう痺れを切らし、その場を飛び出そうとした。

 

 すると今度は——マリラが立ちはだかる。


『待ってよ、ガンツ君! カガミさんでも見つけられないのに無茶よ! フラッツ君の情報だって、何一つないのよ?』


 両手を広げる彼女に、彼の勇み足は止められた。


『ぐっ……!』


 やがて行き場のない想いを押し殺したガンツは、拳を強く握り締め、その場へドスンと腰を下ろす。

 誰も言葉をかけられず、誰もがその悲しい背中を見つめていた。


 だがそんな彼に——俺は一つだけ確信を落とす。


(ガンツ……お前が欲しがる情報は、いずれギルバディアに流れてくる)


『……なに?』


 俺の言葉に、ガンツの大きな肩がぴくりと震えた。


(いつになるかは分からない。だけどその情報を掴めれば、フラッツの居場所も探しやすくなる——間違いない)


 ——何度も言うが、俺はこの世界の行く末を知っている。


 皆がどこまで俺を信じているかは分からない。

 それでも、今の俺に言えることは、それだけだった。


『……』


 しばらく黙っていたガンツ。

 

 すると、少しだけ納得してくれた彼は、握り締めていた拳をゆっくりと開いた。


『もし嘘だったら……今度こそ本当にぶっ飛ばすぜ?』


(ああ。その時はもう好きにしてくれ……)


 なんとか落ち着いたその場に、ようやくホッとする。


 そして——。


(——そんなことより、俺はしばらく、この国を出られない)


 皆の視線が俺の言葉に集まった。


『出られないって……それって一体どういうこと? カガミさん』


 俺は皆を見渡し、これから自分が進む道を静かに語り始めた。


(俺は今後、ルミナにつきっきりで行動しようと思う——)


 その名を聞いた途端、皆の空気が少しだけ和らいだ。


『ルミナって……確かあいつ、マルクの()()なんだろう?』


 小指を立てるガンツ。


 その仕草に、ラキが待ってましたとばかりに身を乗り出した。


『そうそう! しかも二人は、熱い接吻まで交わす仲なんですよ! あの時のマルクさんときたら……むふふ』


『あいつ……奥手そうに見えて、案外やることやってんだな』


 腕を組みながら、ガンツは感心したように何度も頷く。

 

 そこでマリラが、くすりと笑った。


『へぇ……やっぱりガンツ君も興味あるの? こういうこと』


『興味ねぇよそんなもん……』


 そっぽを向くガンツに、ラキが目を細める。


『おやおや? 今のエギルの動きは! 少し怪しいですねぇ……』


『うるせぇ! 勝手に見るんじゃねぇ!』


(……オホン)


 ——すっかり話が脱線したところで、俺は一つ咳払いをした。


(それには理由があって、実は俺は——)


 再び皆の注目を集める。


 しかし。


『その辺の事情は興味ねえ』


 話を遮ったガンツは、そのまま背中を向けた。


『俺は寝る。フラッツの情報が出たらすぐ起こせ——それだけでいい』


(ちょ、おい!)


『じゃあな』


 そう言い残すと、彼の姿はふっと消えてしまった。


『……消えちゃいましたね』


 ラキは苦笑しながら、ガンツが消えた場所を見つめる。


『ガンツ君らしいわね。でも、私たちだけでも聞きましょう』


 優しく微笑み、改めて俺へと向き直るマリラ。


 二人の真っ直ぐな視線を受け、俺も気持ちを切り替える。


(ありがとう。では、改めて——)


 ——そして、一度息を整えた俺は、三度口を開いた。


(まず初めに、俺の正体は女神アリステラなんだ)


『『……』』


 二人はきょとんと顔を見合わせる。


 こうなるのも無理はない。


 どう聞いたって俺の声は男。

 誰が女神様本人だと思うだろうか。


 しかし俺は、これまでに分かったことを、一つずつ話していった——。


 一つ。俺はこれまで何度か、彼女の身に起きた出来事と思われる記憶の景色を見てきた。


 二つ。ヨヨ曰く、アリステラと俺のマナはよく似ていたらしい。


 三つ。転生者になり得るのは、転生魔法を使える彼女だけだということ。


 これこそが、俺の正体を裏付ける根拠である。


 ——少し驚きながらも、二人は俺の話を静かに受け止めていた。


『なるほど……エギルをこの世に留めるあの技も、女神様の力だったんですね』


『ヨヨ婆様が言うなら、間違いなさそう』


 二人の戸惑いの表情は、徐々に理解の色へと変わりつつあった。


(そして、ルミナと行動を共にするのは、俺に眠る力を、彼女の中で発揮するためだ)


『なるほど! つまりカガミさんも、憑依して戦うってわけですね!』


 やがてラキは納得したように大きく頷く。


(この力を使いこなすには、おそらく鍛錬が必要になる。だから今まで以上に、彼女につきっきりになると思う)


『失われていた女神様の力……カガミさんの手で復活させるのね』


 そして、静かに微笑みながら、俺の真意を理解してくれたマリラ。


(ああ。だが、それよりも——)


 そんな中俺は、一度言葉を切る。


 胸に浮かんだのは、女神としてではなく、一人の少女として涙を流していたルミナの姿。


(母を失った彼女の……力になりたいんだ)


 吐露した言葉は、切なる想いだった——。


 ここは、俺だけが知る世界。


 だが、本来いるはずだったアリステラは命を落とし、代わりに彼女の魂を持った俺が生き続けている。


 この想いは、もしかしたら彼女のものなのかもしれない。


 それでも——。


 ルミナのそばにいることこそが、今の俺がここにいる理由なのだと信じていた。


(勝手で悪いんだが、そういうことになった)


 二人は何も言わなかった。


 しかし、その想いだけは伝わったのか、やがて彼女たちは言葉を返してくれた。


『そういうことなら、大賛成ですよね! マリラさん!』


 満面の笑みで隣を見るラキ。


 その言葉に、マリラも優しく頷く。


『もちろんよ。私もルミナさんには恩があるもの』


 そして、真っ直ぐ俺を見つめる彼女は、言葉を続けた。


『それに——』


 まるで生きているような、柔らかな笑み。


『そこがカガミさんの、居場所なんですもの——』


 ——その温もりに触れた俺は、ふと過去を振り返っていた。


 孤独のまま命を落とし、その先でたどり着いたのも、自分がずっと描き続けてきた世界(物語)

 

 どこまで行っても振り切れない孤独。


 だが——。


 ラキや、マリラや、ガンツ——そして、ルミナ。


 様々な仲間に出会うたびに、その闇が小さくなっていく。


 ()()()にいたみんなが、そのことを教えてくれたのだ。


(ありがとう……やっと見つかった)


 胸の奥から、自然と言葉がこぼれる。


 俺はようやく——辿り着いた。

 自分の居場所へと。


 ——そして。


()()()の……おかげだよ)


 女神の温もりと共に歩み始める、新たな物語の始まりへと——。

振り返ると、己と向き合いながら筆を握っていた気がします。

孤独とは周りの環境が決まるものではなく、己が勝手に作っていたものだと、心の中の彼らと向き合いながら少し気付けました。


鏡と共に。


その名に恥じない自己満な章で申し訳ない。


しかししかし!

これからも彼らの物語は続いていきます。


もちろん、白銀鏡も共に——。


お次は一週間後!

一歩目の物語の舞台は、風の里。


第三章、風と共に編。

これまた作者お気に入りの章でございます!

お楽しみに〜

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