第二十六話
一方、徹也の方では状況に変化があった。徹也が矢を放って雷を避けながら、少しずつボスリーに近づいていたのだ。
だが、ボスリーはそんな徹也行動など意に介さずに、矢を避けながら《サンダー・ジャゲット》を放ち続ける。ボスリーからすれば、徹也のその行動は好都合だったからだ。
徹也もまた、ボスリーがそう来ることは分かっていた。自分が一時的に、苦しくなることも。しかし徹也は、この方法を選んだ。自らが危険になるこの方法を。
(時間稼ぎはもう十分だろう。もうすぐ、クリスさんが来てくれる。だが、こいつの動きを止めれればクリスさんが楽になるはずだ)
徹也はそう思い、雷を避けながらボスリーに近づいていく。そんな徹也に苛ついたのか、ボスリーが声を荒らげながら魔法を放った。
「いい加減ウゼえんだよ!さっさと死ねや!《サンダー・ジャゲット》!」
ボスリーが放った《サンダー・ジャゲット》が、ボスリーに近づいてきていた徹也に直撃した。雷の速さに加えて近づいていたこともあり、徹也は避けきることが出来なかったのである。
辛うじて弓で防御態勢をとったが、弓では剣とは違い魔法を防ぎ切ることが出来なかった。故に、徹也の体に電撃が走る。
その電撃によって、徹也の手から弓が落ちてしまった。そして徹也も、前の方に倒れていく。
「「「「徹也(君)!!」」」」
優愛達の声が、辺りに響く。その声はもちろん、徹也まで届いていた。
(……ああ。痛い。これが、魔法の威力か。あいつらにも、心配かけてるよな……。でも――)
徹也は倒れきらずに、右足を深く踏み込む。そして顔を上げて、手を自らの腰にある剣に持っていった。
(大丈夫だ。想定内、だからな!)
そう思った徹也は、剣を鞘から抜き去った。徹也は本気でボスリーを殺す為に、ボスリーの首へ目掛けて剣を振るう。
ボスリーはそんな徹也に驚き、反射的に自らの懐に手を突っ込んだ。そして、そこから引っ張り出した短剣で、徹也の剣を防ぐ。
「危ねえなあ……!ただの特攻じゃなかったわけだ……!ま、隠してたのはお互い様だがな!」
「チッ……!」
徹也は決めきれなかった。ここで仕留めきれれば万々歳だったんだが、と徹也は思う。ボスリーはそんな徹也を見て、ニヤリと口角を上げた。
「じゃあまあ……。今度こそ死ねえ!」
ボスリーがそう言うと、短剣に雷が纏われ始める。だが、徹也もまたボスリーと同じように、口角を上げていた。
すると、短剣を持つボスリーの手が落ちた。いや、切れたのである。そしてそこからは、ボスリーの血が流れている。
「……は?」
ボスリーは何が起きたのか、理解できなかった。だが、徹也の隣に立つ者を見て、何が起こったのかを理解する。
「すいませんクリスさん。仕留めきれませんでした」
「いえ。こちらこそすいません。遅くなってしまって……」
「大丈夫です。死んでないので。後、おまかせします」
「はい。任せてください」
クリスは徹也の言葉に頷くと、ボスリーの方に向き直る。そして右手に持つ剣を、ボスリーに向けた。
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