第四十一話
徹也と治伽は、夜の町の路地裏へと入っていた。こんなところに入って何をするつもりなのかと、治伽は徹也の行動を疑問に思う。
だが、治伽が徹也にそのことを問う前に、徹也が治伽に対して口を開く。
「……ここにしよう。最短ルートは調べてあるし……。よし。ここに落とし穴を掘る」
「……え?落とし穴?」
「ああ。念の為そっちにも……」
「ちょ、ちょっと待って!お、落とし穴を掘るの!?」
徹也が治伽を置いて一人で話を進めるので、治伽が一度徹也に待ったをかける。話についていけないので、少し説明がほしかったのだ。
「あー……。俺達、多分明日また狙われるんだよ。それの対策だ」
「……そう。その対策、私にも教えて」
「……分かった」
徹也は治伽のその願いに少しだけ考えてから頷いた。ここまで連れてきたのなら、全て話すのが筋だろうと、徹也は考えたのだ。
「まず、俺がヴァン団長を引き付ける」
「……一人で?」
「ああ。そうだ」
徹也の肯定の返事に、治伽は少し顔を顰めた。また、徹也が一人で引き受けようとしていたのだ。治伽としては、文句も言いたくなる。
だが、治伽は徹也が自分達の安全を思っての行動であることも分かっている。だからこそ治伽は、自分にできることで徹也の助けになりたいと、支えになりたいと感じていたのである。
「……私には、何ができるの?ただ、徹也君の無事を願って待つだけ?」
「いや、ここまで話したんだ。やってもらいたいことがある」
「それは何?教えて」
徹也の言葉を聞いた治伽は、すごい勢いで徹也に迫りそれを尋ねた。徹也はそんな治伽に若干気圧されながらも、きちんと治伽に説明をする。
「お、おう。まずは、今落とし穴を作るのを手伝ってほしい。後は、当日舞を頼む。クリスさんに護衛を頼んでるけど、万が一があるからな。当日は警戒を怠らないでくれ」
「……分かったわ。……ねえ徹也君」
「ん?なんだ治伽?早く落とし穴を――」
そう言おうとした徹也だったが、治伽が徹也の両頬に両手を添えたことで止められた。そして治伽は、顔を徹也の顔に近づける。徹也は目の前まで近づいてきた治伽を見て照れてしまい、少し顔を赤らめた。
だが、治伽はそんな様子の徹也など気にせずに、徹也を見つめて自分の気持ちを伝える。
「絶対、無事に帰ってきてね。徹也君、人に頼むことは渋って自分で抱え込んでしまうから……」
「い、いや。そんなことは……」
「あるわよ。前も、そうだったじゃない」
治伽のその言葉に、徹也はうっ、と言葉を詰まらせてしまった。治伽が言う前とは、魔物狩りのときである。
魔物狩りのときも、徹也は自分の安全は二の次にして、治伽と舞の安全を確保した。もちろん、徹也は自分が助かるところまで対策をしてのことだったが、一番危険だったのは間違いないだろう。
「あ、あれは、対策もしてあったし……」
「それでも、心配だったのは間違いないわ。……徹也君。私、私ね。あなたの助けになりたいの。そんなあなたの、支えになりたい」
真剣にそう言う治伽に、徹也はもはや何も言えなくなってしまう。そんな徹也に、治伽は更に言葉を紡ぐ。
「だから、だからね徹也君。……いなく、ならないで」
治伽は泣きそうな顔と声でそう言うと、徹也に抱きついた。徹也はそんな治伽の行動に驚きながらも、すぐに柔らかい表情になって治伽を抱きしめ返す。
「……大丈夫だ。少なくとも、今回は。……信じていてくれ」
「……うん。信じる。信じるわ」
治伽がそう言うと、しばらく静寂に包まれる。そしてしばらくしてから、徹也と治伽はお互いに離れた。
「……お、落とし穴、つくるか……」
「……そ、そうね……」
先程までのやり取りによって顔を真っ赤にした徹也と治伽は、少し気まずい空気になって落とし穴の制作に取り掛かった。
そしてこれらが、徹也が一週間で行った対策の全容である。
読んでくださりありがとうございます!
共通テストが無事終了しました。自分なりに精一杯やったつもりです。
そして、他の受験生の皆さんもお疲れ様でした!
まだまだ受験は終わっていない人も多いと思いますが、取り敢えず一区切りということで。
自分もこれから勉強も小説も頑張っていこうと思います。
それから、試験から帰ってきた時気付いたのですが、10000pv突破ありがとうございます!
こんなにも多くの方に読んでいただけて、本当に嬉しい限りです!
これからも、辻谷戒斗をよろしくお願いします!




