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第三十七話


「なんだと……?……っ!?」


 ヴァンが徹也の言葉に対して聞き返したが、刀夜がヴァンの剣を押し返し、ヴァンが後ろに引いた。ヴァンは視線を刀夜に戻し、一旦刀夜に集中する。


「……どいてくれ。刀夜殿。才無佐徹也は、この国にいらない存在なのだ。教育者として黙っていることができないのは分かるが、どうか分かってほしい」


 ヴァンは剣を下ろして、刀夜に語りかける。できれば刀夜にはバレたくはなかったが、ここまで来てしまうと分かってもらうしかないと、ヴァンは考えたのだ。ここで刀夜を失ってしまうのは、あまりにも惜しい。


「……分かりません。分かりたくありません」


 だが、刀夜はヴァンの言葉の全てを否定した。続けて、刀夜はヴァンに話す。


「誰がなんと言っても、私は教師です。教師は生徒を教え、導き、守る職業です。それはどの生徒でも変わらない。才無佐君も、例外ではありません。私の生徒を傷つけるのなら、相手が誰であっても許さない。……エンチャント」


 刀夜はそう言い切ると、刀を構え直し風を纏わせて臨戦態勢を取った。そんな刀夜を見たヴァンは、ふぅと息を吐いて剣を上げ風を纏わせて構えた。


「……ならば仕方ない。刀夜殿を殺しはしないが、力尽くでもそこを通してもらおう。私はなんとしても、才無佐徹也を殺さなければならないのでね」


「……させない!」


 刀夜の言葉を合図に、刀夜とヴァンが同時にお互いに向かって加速した。そして、ヴァンの剣と刀夜の刀がぶつかり合い、辺りに風が吹き荒れた。徹也はそれを受けて頭を腕で守りながら、刀夜とヴァンの戦闘を見守る。


(……ここからは、先生次第だ。もちろん、保険は用意してるが……。できれば、ヴァン団長はここで戦闘不能にしておきたい。……頼みます、先生)


 先生に頼みすぎなことは徹也自身思っていたが、それは頼んだ時にもう吹っ切れている。自分にできることをする。そう、徹也は決めていた。


 一方、刀夜とヴァンは刀と剣を打ち合っていた。そうして打ち合う度に辺りに風が吹くが、幾度か打ち合った後、ヴァンが仕掛けた。


 刀と剣がぶつかった瞬間、ヴァンが右足で刀夜を蹴ったのだ。刀夜は少し蹌踉めいてしまい、隙を作ってしまう。ヴァンはその隙を見逃さず、風魔法を放った。


「《ウィンド・ボルテックス》!」


 ヴァンがそう言うと、風が渦をつくって刀夜に向かってきた。《ウィンド・ボルテックス》とは、風魔法の中でも中位の辺りに位置する魔法である。この魔法を使うには、風を纏わせず出すことはもちろん、風を操作する力も求められる。


 つまり、風魔法をそれなりに追求しなければ出すことが難しいとされる魔法なのだ。そんな魔法が迫っているにも関わらず、刀夜は落ち着いていた。なぜなら、刀夜もこの魔法を知っているからだ。


「……《ウィンド・ボルテックス》!」


「なっ……!」


 刀夜もまた、同じ魔法を放ったのである。ぶつかった両者の《ウィンド・ボルテックス》は相殺され、周りに風が吹き荒れた。


 ヴァンと刀夜は一旦お互いに距離を取る。すると、ヴァンが刀夜に問いかけた。


「……なぜ、《ウィンド・ボルテックス》を使える?この魔法は、まだ教えていないはずだが?」


「……書庫で知りました。それが何か?」


「馬鹿な……。知ったとしても、そんなすぐにできるものではないはず……。やはり、召喚された者は只者ではないということか……?」


「知りませんよ。そんなこと。現に私は、知っただけでできています。それに今、それは関係ありますか?」


 刀夜はそうヴァンに返すと、刀を構えヴァンに向かって駆け出した。それは、風で後ろから押していることもあり、物凄い速さであった。


 一瞬でヴァンの懐まで来た刀夜は、こう言って刀を横に振るった。


「《風閃》」


「……っ!」


 ヴァンは刀夜の一撃を辛うじて剣で防いだが、あまりの強さに吹き飛ばされてしまう。刀夜はヴァンの着地に合わせて《風突》をぶつけようとするが、ヴァンがそれを阻んだ。


 ヴァンは近づいてきている刀夜の足元に風を放つ。それによって、刀夜はこれ以上ヴァンに近づけなくなり、ヴァンは無事に着地――できると思われた。


 なんと刀夜は、絶対に刀が届かない場所で刀を構えたのだ。これには、ヴァンも驚いて目を見開いた。なぜ、どうして、魔法ではなく、刀をそこで構えるのか。ヴァンの頭にそのような疑問が駆け巡る。


 だが、ヴァンのその疑問はすぐに解決された。なぜなら、刀夜がヴァンの着地の前に技を出したからだ。


「……《風昇》!」


 刀夜がそう言って刀を下から振り上げると、ヴァンの下から風が巻き起こった。刀が届いていないにも関わらず、である。しかも、《ウィンド・ボルテックス》とは比べ物にならない程の威力だ。


 ヴァンは何も抵抗できぬまま、上空へと打ち上げられる。そんな中、ヴァンの頭は新しい疑問でいっぱいだった。


 一体何をしたのか。なぜこんなハイレベルな魔法相当の風を起こせるのか。ヴァンの頭には、そのような疑問が駆け巡る。だが当然、ヴァンにそれが分かるはずもない。


 刀夜が放った技、《風昇》は風を纏った刀を下から振り上げることで、その刀にある風を上げて利用しつつ、新たに風を起こしてそれらを操作し、竜巻のようなものを作っているのである。その威力は絶大で、この世界の魔法で言うと上位クラスの魔法以上の威力がある。


 まさに、必殺技とも言える技である。だが、強い技には必ずデメリットが存在する。


 この《風昇》のデメリットは、この技を出す間他の技や魔法を使えないことである。《風昇》は刀も魔法も両方使っているので、外すと大きな隙を晒すことになるのだ。ただその代わり、広範囲で高威力の技となっている。


 《風昇》の風がヴァンを巻き込み、痛みつける。風が止むと、ヴァンは上から地面に落ちた。


 ヴァンが落ちた周りに土煙が舞う。それを確認した刀夜は、ふぅと一息吐いて刀を鞘に納めた。


読んでくださりありがとうございます!

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