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エースナンバー  作者: 砂糖
11/55

準々決勝

チームは、一回戦を突破して、ますます雰囲気が良くなってきた。

俺は、大会直前にチームに加えてもらったが、このチームで優勝したいと本気で思っていた。


二回戦も僅差で緊迫した試合だったが、3対2 で勝利した。

三回戦は、5対1 でまたまた勝利!


俺は、二回戦と三回戦でそれぞれ1イニングずつ投げた。

一回戦では、ゼロに抑えたものの、味方の守備に助けられた結果だった。


二回戦と三回戦では、共に1イニング3人ずつ、合計6人を完璧に抑えた。三振も取れた。

特に、直球が良くなってきた。

チームも俺も調子が上がっている。


次はいよいよ準々決勝だ。

ある日の練習後、監督から言われた。

「前田、調子良さそうだな。準々決勝の先発投手は、お前でいくぞ」


えっ、マジか?

俺は、まさか先発投手は予想していなかった。他にも良い投手がいるのに、何故俺なんだ?


「俺は、前田の闘争心を買った。お前は、気持ちのスイッチが入ると凄いボールを投げるよな。今度は、最初からアクセル全開でいってくれ」

監督が俺の胸を叩きながら、言ってくれた。


「はい、任せてください!」

俺は、力強く言いながら、監督とグータッチをした。


俺にとって、この大会はプロ野球選手を目指す上での一つのステップだが、今はとにかく勝ちたいんだ。このチームメイトと優勝したい。

そのために、全力で右腕を振るんだ。


準々決勝の日は、暑かった。

俺は、ますます燃えてきた。


観客席には、親友黒田と俺の妻の姿があった。この試合も、目の不自由な黒田を妻が連れてきてくれた。


「ピッチャーは、前田」

球場のアナウンスで発表された。

俺は、今大会初めて先発のマウンドに上がった。


アナウンスがあると、やっぱり妻はキャーと叫んでいた。

妻は、いつも叫んでいる……


相手チームは、強力打線がウリだった。少しでも、気をぬくとやられてしまう。

気合充分の俺は、直球を軸にしてフォークボールを使いながら、立ち向かっていった。

調子は、絶好調だった。


味方打線は、相手投手の速いボールに苦戦していた。

6回まで、0対0 でお互い一歩も譲らない展開だ。


7回に入ると、俺の球数もかなり増えてきた。これまでの試合は、リリーフ登板で1イニングずつだったから、多くの球数を投げるのは初めてだ。


疲労から、ボールが上ずってコントロールが悪くなってきた。

2本のヒットとファーボールでワンアウト満塁の大ピンチだ。


俺は、観客席の黒田と妻を見た。

苦しくなると、2人を見て力を貰うんだ。

黒田は、見えないはずの目で、俺を見つめている。きっと、静かに力を貸そうとしているに違いない。


妻は、やっぱり、キャーと叫んでいた。


静かな黒田と賑やかな妻、どちらも俺に大きな元気をくれる。


ワンアウト満塁で、俺が狙うのは、ダブルプレーだ。


俺の必殺フォークボールが炸裂した。バッターを、ショートゴロでダブルプレーに打ち取った!

よしっ! 俺は、小さくガッツポーズをした。


俺が、投げたボールの音は、黒田の耳に届いたはずだ。

アイツは、いつもボールの音を通して俺と会話をしている。

アイツの見えない目が語っていた。


「前田、そのままでいいぞ。あと少しだぞ」

俺のボールの音に対して、黒田の答えは、多分こんな感じだろう。


俺が、ピンチを切り抜けた直後、ウチのチームがついに 0対0 の均衡を破った。

キャプテンのツーランホームランで2点先制した。


2対0 でリードを保ちながら最終回に入った。


ベンチで監督から、

「前田、完封して来い!」

ゲキが飛んだ。


俺は、120球投げて疲労は感じていたが、どうしても一人で投げ切りたかった。

このチームの一員として、チームメイトと一緒に次の準決勝に行きたかった。


相手は、俺のフォークボールを狙っているのが分かった。

最終回は、ほとんど直球勝負でいくぞ。


3人のバッターを全て三振にしとめて、ゲームセット!!


俺は、130球以上投げて、ヘトヘトだったが、チームメイトが俺の腕を上げて、ガッツポーズさせてくれた。


2対0 勝った。

俺は、9回を一人で投げ切った。

俺にとって、大きな自信になった。


観客席では、黒田が満足そうにしていた。


ありがとう、黒田。お前とボールを通して会話しながら、投げ切れたよ。


隣にいた妻は、やっぱり叫びまくっていた。近くの人たちは、迷惑そうだった….…



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