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第78話 ゴールデンゴブリン

 沼の主のクエスト依頼は完了だね。次はゴールデンゴブリンか。

 事前に(エリー)から聞いていた情報だと、ここからなら東へ一日。一度いつものダンジョン前まで戻ると三日かかるって言ってたな。

 ここまで順調に二日で来れたし、センも不完全燃焼みたいだから、このまま向かった方がいいよね。


 このままゴールデンゴブリンを目指す事を案内役のダンジングビッグビーに伝え、ゴールデンゴブリンがいるゴブリンの巣に向かってもらった。

 道中はもちろん魔物は出るよ。森の中だけど、いつも通りボルトが樹を踏み倒して先導してくれている。という事は、オレは収納が忙しい訳だ。もう慣れたけどね。


 ゴールデンゴブリンの依頼も討伐して持ち帰れだったか。場所さえ見つければ、この面子なら問題無いだろうね。強いと言っても雑魚定番のゴブリンだし。その上位種と言ってもボルトに敵う訳ないしね。



 ダンシングビッグビーの案内は正確で、きっちり一日でゴブリンの巣に到着した。

 小高い丘の頂上に廃墟となった神殿があった。

 もう神殿とは呼べない程、朽ちていたが中央に建つ廃墟には地下への階段が見えていた。


 今はその神殿の廃墟の二キロ手前で作戦会議を行なっている。

 こちらからはオレの【ズーム】でも確認できるし、ボルトやキューちゃんもゴブリンが固まって神殿前にいるって事は分かっている。ゴブリンにはまだ気付かれていない。というのも現在戦闘中のようなんだ。犬だかなんだか分かんない大きな魔物と戦ってるよ。

 神殿前にいるゴブリン達は、ざっくり見ても100匹は下らない数がいるんだけど、この辺りは東の森でも更に深部になり、魔物のレベルや数も最悪の場所だ。そんな所にゴブリンがいても蹂躙されるだけ、生き残ってるのが不思議なぐらいだ。


 今も顔がやたらとデカくて牙だらけの犬っぽい魔物―――ウガルルム:LV44と戦闘中だ。

 ボルトより小さいけど大きな魔物だ。

 あ、火を吹いた。ゴブリン達が蹂躙されていくよ。

 今までも、こういうのって起こってたと思うんだけど、よく生き残ってたよな。



「それでは今からゴールデンゴブリン対策会議を始めたいと思います。今はウガルルムって魔物とゴブリン達が戦闘中みたいだけど、少し様子を見て戦闘が収まったら攻撃を仕掛けたいと思います。皆さん、忌憚のない意見を言ってください」

「はい!」

「はい、センどうぞ」

「某が単騎突入して全てを血祭りにあげるというのは如何でござるか」

「はい次」


「自分が全部竜巻で巻き上げてしまうってのはどうっすか」

「保留、次」


「うちがデッカイ落とし穴を作って全部落として埋めるってええと思わへん?」

「微妙、次」


キュキュ『ここからおっきな魔法を落とす?』

「なんで質問されたか分かんないけど、ちょっといいかも。あとはボルトかな」


『ゴブリン如き、我一人で十分でございます』

「はい、ダメー」


 幻の四獣って所詮力技の脳筋だからセンとボルトの意見は論外だね。

 キューちゃんの遠くから強力な魔法ってのはアリだね。全滅とは行かなくても大幅に数を減らせそうだからね。


「ハヤテ、その竜巻ってこの場所からでも攻撃できるの?」

「大丈夫っす。でも、どこに飛んで行くのか分からないのが欠点っす」

 ダメダメじゃん! 全然大丈夫じゃないよ。どこに行くか分からない竜巻って当たり前だけど今回は不採用だね。


「どのぐらい近寄れば狙い打てるの?」

「そうっすねー、50メートルぐらいっすかね」

「うん、やっぱり不採用。他に有効な魔法って・・・・あ、ちょっと待って」


 ゴブリン達の戦闘に変化があった。ウガルルムが倒されたのだ。

 神殿跡の階段からワラワラとゴブリンが出て来て、ウガルルムの周りには倒された以上のゴブリンが集結している。多分500匹はいるんじゃないだろうか。

 しかもまだ階段から続々と現れて続けてる。

 後から出てくるゴブリンの方が身体も大きくホブゴブリンと表示されている。偶にゴブリンファイターとかゴブリンメイジとかゴブリンソルジャーってのも混じってる。


 多勢に無勢、非常に大きな戦力差だったがゴブリン側が数の暴力で押し切った。

 決め手となったのは途中で現れたブロンズゴブリン。

 全身が銅色で、もしかしたら銅で出来た身体なのかもしれない。

 ステータス差が大きければいくら数がいてもダメージを受ける事は無い、ただ鬱陶しいだけだ。今回のウガルルムに対してのゴブリンの攻撃は正にそれだった。

 ゴブリン達の攻撃はウガルルムの皮を通る事は無かった。


 しかし、ブロンズゴブリンの放つ貫手がウガルルムの皮を貫通しウガルルムに傷を付けた。ブロンズゴブリンは更に攻撃を続け無数の傷口を作って行く。その傷口を集中的にゴブリン達が攻める。

 劣勢だと悟ったウガルルムが逃げ出そうとした時、階段からシルバーゴブリンが現れた。こいつも全身が銀色だ。

 階段から出て来たシルバーゴブリンが放った直径50センチ程の銀色の魔力弾がウガルルムの骨を砕く。

 倒れたウガルルムにゴブリンが群がっていく。

 しばらくしてゴブリン達が散って行くと、そこには何も残っていなかった。

 食べられたのか、バラバラにされて持って行かれたのかは分からないが、神殿跡地にウガルルムが居たという形跡は何も残らなかった。


 恐ろしいー、川に落ちた牛がピラニアに食われて骨も残らなかったってのと同じじゃん。怖え~よ。あいつら一体どんだけいるんだよ。しかも後から出て来る奴の方が強いし、攻略方法なんてあるの?


 今起こった事をスクリーンを出して映像にして皆に見せてやった。

 スクリーンは前に戦闘経験値でのレベルアップで出せるようになってたし、投影も同じく取ってたからね。


 映像を見終わると、皆無言になった。


 クッフッフッフ

 センが不気味に笑い出した。


「ようやく某の見せ場が来たと言う訳ですな。では、早速行って参りましょう」

キュキュー『ちょっと待ってー。ボクが行くー』

「何言ってるんすか、自分の番っす」

『また早い者勝ちという事だな。また我の一人勝ちか』


「ちょ、ちょっと待って。パルも」

 こそーっと抜け駆けしようとしていたパルがギクッっとしてフリーズ。


「今の見たよね? ちょっと数が多すぎると思うんだよ。やっぱり作戦がいると思うんだよね。強い奴もいたし、まだ出て来て無い強い奴もいるかもしれないしね」

「それこそ某の活躍の場であるかと」

『あの程度の雑魚に作戦など必要ありません』

キュキュ『早い者勝ちー』

「だからちょっと待ってって。オレの言う作戦をやってみて、うまく行かなかったら早い者勝ちでいいよ。だから聞いてくれる?」


 やっと大人しくしてくれた。ホント脳筋しかいないって疲れるよ。


「先に聞いておきたいんだけど、センのユニークスキル【銀世界】って全体を凍らせるって事でいい?」

「はっ、合っております」

 鑑定で知ってたけど、やっぱり雪じゃなかったんだね。

「ハヤテが起こせる風であそこにいるゴブリンを全部吹き飛ばせる?」

「もちろんっす」


「じゃあ、作戦を言うよ。まず、パルとキューちゃんの魔法であそこに出てるゴブリン達を一瞬で倒してほしいんだ。できる?」

「そんなん簡単や、あんな雑魚何匹おっても一緒や」

『ボクもできるよー』キュキュー

「時間を掛けると次から次へと出て来るから一瞬で倒さないといけないんだよ?」

「楽勝やって、うちに任せといて」

『ボクもー。ラクショー』キュキュー


「じゃあ、それが出来たとして、次はハヤテの番だ。倒したゴブリンを全部吹き飛ばしてほしいんだけど出来る?」

「お任せくださいっす!」

「少しぐらい生きてる奴がいても一緒に吹き飛ばしてね。階段の周辺を綺麗にしたいんだ」

「了解っす」


「そこでセンの番ね。階段の中に向かって全力でユニークスキル【銀世界】を放ってほしいんだ。全部倒せなくても入り口は塞げるだろ?」

「おお、流石はお館様。そこまで悪知恵が働くとは恐れ入りました」

 それって褒め言葉になってないよね?


「ボルトは全員の補佐をしてほしいんだ。作戦にイレギュラーは付きものだからね、その時の為にボルトに補佐に回ってほしいんだけど」

『御意、お任せください』


「この作戦で全部が倒せたらいいんだけど、相手の数が分からないから一旦階段を封鎖したいんだよね。そこまで出来たら、後は様子を見ながら対策をして行くって事でいい?」


 皆、同意をしてくれた。



 オレ達は西側から来たからハヤテとセンはこの西側で待機。パルは北側、キューちゃんは南側。ボルトはパルに付いて南側からサポートする事にした。


 よし、作戦決行だ。

 決行の合図はキューちゃんの極大炎魔法という事にした。

 皆、念話で意思疎通はできるんだけどね、先走る奴がいても困るから、キューちゃんの炎魔法が上がるまで誰も動いちゃいけないって釘を刺しておいた。



 まずはキューちゃん。キューちゃんが頭上10メートルあたりに火魔法で直径30センチ程の火の玉を100以上並べて行く。その火の玉を一列で神殿跡に向かわせる。

 火の玉は一列になり真っすぐに神殿跡に飛んで行く。

 パルは持ち場に着くと事前に人間大の薄青白色のスピリット体を50体用意していた。

 キューちゃんの火の球が飛んで行くのを察知するとパルもスピリット体を進軍させた。

 それを確認したハヤテとセンも神殿跡に向かって移動を開始した。


 あれ? これってオレがヤバく無い? 誰も周りにいないよ。ダンシングビッグビー、お前だけが頼りだぞ。


 まずキューちゃんの火の玉が神殿跡に到着する。

 上空2メートルを飛んで外側から螺旋を描くように内側に切れ込んで行く。渦巻き状に火の玉の列の先頭が中心に辿り着くとドンドン火の玉が大きくなって行く。

 階段の真上で大きくなって行く火の玉が徐々に降下して来る。

 最後の火の玉が合流した時に炎の塊が爆ぜた。


ボオオオオォォォォオオーーン!!


 凄い熱量だ。ゴブリン達は炎の海に完全に飲まれた。

 キューちゃんの放った炎の塊が爆ぜた時、パルのスピリット体も配置完了しており、ゴブリンを囲むように等間隔で待機していた。


 シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュン!!


 全方位からのウィンドカッター攻撃。幅3メートルの鎌鼬が全方位から無数に放たれる。炎と相まって更に炎の勢いが増す。


 炎の勢いが収まるのを待たず、ハヤテの風魔法


「大竜巻魔法【大旋回龍】!」


 ハヤテの起こした大竜巻が神殿跡にあったもの全てを持ち去って行った。

 大竜巻が去った後には何も残っていない。火もゴブリンも少し残っていた遺跡もすべて無くなった。


 すかさずセンが階段に駆け寄りユニークスキル【銀世界】を発動!

 階段に下に向かい全力のユニークスキル【銀世界】を放つ!


ピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキピキッ!


 さっきまでゴブリン達がいた地上階まで凍っている。凄い威力だ。



 ・・・・・誰か一人で良かったね。オーバーキルっすね。やりすぎ・・・



『では、主殿。次なる作戦をお願いします』

 え? まだやるの? もう決着着いて無い?

 階下のゴブリンにも相当な被害は出てると思うんだけど・・・・もしかしたら全滅とかもありえそうなんだけど。


 ボルトが神殿跡まで道を造ってくれたので、オレは神殿跡までは自走で来た。だってハヤテが自分の放った【大旋回龍】をいつまでも見ていて動かないんだから。

 自分の思った以上に威力があって、会心の一発だったみたいだ。


 階段前に集合をして、食事をする事になった。

 冷凍保存って魚なんかだと解かしたら生き返ったりするじゃん。魔物も生命力が強いから少しでも時間を置きたいんだよね。


「あのさ、セン。センの【銀世界】に捕らわれると魔物は死ぬの?」

「はっ、まずは氷漬けになりますが、魔物なら10分もすると粉々に砕けます」

 じゃあ、もう10分以上経ってるしいいかな。


「食事が終わったら、一度【銀世界】を解除して一緒に見に行ってくれない?」

「はっ、そんな事にお館様の手を煩わせるわけにもいきません。某一人で確認に行きましょう」

「いや、オレも見ておきたいんだよ。ボルトとハヤテはこの階段じゃ降りれそうもないから、【御者】と一緒にパルとキューちゃんも行こうか」

キュキュ『わかったー』

「らじゃ!」


 念の為あと30分待って、センに【銀世界】を解除してもらった。

 センに前を歩いてもらって【御者】で後を付いて行く。

 【御者】の右肩にはキューちゃん、左肩にはパルが乗っている。


 降りたフロアには魔石が沢山落ちていた。地上階ではハヤテが全部吹き飛ばしてしまったから何も取れなかったけど、このフロアには沢山の魔石と剣や弓や防具が落ちていたが、魔物の死骸は一つも無かった。


 あれ? なんだこれ。なんかこういうの経験があるんだけど・・・

 魔石や武具を収納しながら考えていた。

 まさか・・・いやいやそんなはずはない。そんな事はないはずだ。

《ここはゴブリンダンジョン。ダンジョンです》


 やっぱりかー、やっぱりそうなんだな。【御者】で来ちゃったよ、どうしてくれるんだよ。


ギィィィィィ――――


 奥にある両開きの扉が開いた。


「あのさ、ここってダンジョンらしいんだ。今勝手に開いた扉って・・・」

「ダンジョンやのん?」

『ボス―――!!』キュキュー

「ダンジョン? なるほど、ここが有名なダンジョンでしたか。して、ボスとはダンジョンマスターの事でござるか」


 驚きながらも少し嬉しそうにニヤつくパル。勝手に開いた扉にボスを連想し大喜びするキューちゃん。センは歴代の()(りゅう)の記憶でダンジョンは知っているんだろうけど、自分自身は初めて入るのかもね。そんな口振りだよ。


「では、お館様。ボス退治に参りましょうか」

『行く行くー』キュキュー

「うちが一番や!」

 ちょっと待ってくれよー。【御者】に何させる気だよ。勘弁してくれよー。


 既に入り口で待つ三人。【御者】が来るのを待ち遠しそうにしている。

 仕方が無いか、行くしかないよね。オレは死ぬわけじゃないし、いつでも【御者】を消せるからね。どんな奴がダンジョンマスターなのか見るだけ見てやろう。


 オレを最後に扉に入ると自動で扉が閉まった。

 部屋の奥にはゴブリンが三匹。金色が真ん中、左に透明(スケルトン)、右に銀色だけど銀より光沢があって白っぽい。

 名前は左から、クリスタルゴブリン:LV54。ゴールデンゴブリン:LV61。プラチナゴブリン:LV52と出ている。強そうだね。


 やっぱりボス部屋だったよ。わかってたけど、予想がはずれてほしかったな。

「キューちゃん、パル、範囲魔法はダメだよ、火も辞めた方がいいかな。各個撃破で行こう」

キュキュ『わかったー』

「らじゃ!」


 パルはさっきと同じ薄青白色のスピリット体を召喚。左のクリスタルゴブリンに向けて進軍させた。

 キューちゃんは右のプラチナゴブリンに向かってアイスランスを連射。

 少し置いてセンが真ん中のゴールデンゴブリンに突撃していく。

 ゴブリン達も迎撃の為に身構える。だが、ゴブリン達が攻撃をする事はできなかった。


 キューちゃんはずっとアイスランスを出し続けている。まったく終わる気配を見せない。

 50センチの長さの氷の槍『氷尖』がエンドレスで高速発射を続けている。対するプラチナゴブリンは捌ききれなくなってダメージを負っていく。

 パルはクリスタルゴブリンにスピリット体を近づかせ、さっきと同じウィンドカッターの連射を全部のスピリット体から発射させ続けている。

 中央のゴールデンゴブリンはセンの高速接近に反応できず一刀の元に斬り伏せられた。一振りしか見えなかったのにゴールデンゴブリンは十字に斬られていた。

 返す刀でプラチナゴブリンもクリスタルゴブリンも斬り伏せていた。っていうか、もう倒された後だったかもね。立ってたけど、魔物の死骸って出た後だったよ。

 君ら無双すぎー


 あっ! この依頼ってゴールデンゴブリンを獲って来るじゃなかったか? あー、もうダンジョンに吸収されてしまったよー。魔石しか残って無い。

 これって依頼失敗になるのか? ヤバいなー、どうしよう。


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