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第77話 魔法陣

 ようやく今まで通りのパターンに戻り、一週間が過ぎた。

 屋敷で朝食を摂った後はシルビア達を学校に送り、午前中をダラダラと過ごす。

 アクセサリー屋のサンの所に行ったり、町の中を散策したり、冒険者ギルドに行って情報収集したりもした。


 シルビア達が学校から帰って来ると、東の森のダンジョン前まで行って周囲の魔物を倒してレベリング&食材や素材の確保。それが終わると各自の修練。

 シルビアの相手はセン、ライリィはボルト、パルはハヤテともっと風魔法の有効利用ができないか研究している。

 オレは『試練』で得た情報を元に、オレ自身が魔法を使えないかキューちゃんとルシエルに手伝ってもらっている。


 オレだって魔法は使えるんだよ、ショボいけど。『ライト』や『種火』が使えるし、MPも多い。

 知識も得たし、今ならオレにももっと強力な魔法が使えると思うんだよな。


 そこで考えたのが魔法陣。

 詠唱は真っ先に試したよ。【御者】に詠唱させたけど、何も起こらず。

 ただの厨二にしか見えない。


 恥ずかしかった・・・・【御者】のポーカーフェイスが更に厨二度を悪化させている。

 ・・・・もう二度とやるまい。


 それで魔法陣に目を付けた訳なんだけど、魔法陣を使ったものとして思い浮かんだのが、召喚魔法。

 オレの使える召喚魔法は偵察するやつを呼べるだけ。便利と言えば便利なんだけど、戦闘ではまったく役に立たない。

 魔法陣なら、描ければあとは魔力を通すだけで発動すると思ったんだけど、オレに発動させることはできなかった。


 なんでなんだろうね、魔法陣は完璧なのに何も発動しないんだ。

 試しに転送魔法陣も描いてみたけど結果は同じ。

 知識を得たのに、パーティの後衛ぐらい出来るかと思ったけど、後方支援から昇格する事はなかったよ。

 後衛ぐらいって言っちゃダメだね。うちの後衛は強力だからね。


 でも、収穫もあった。

 オレが描いた魔法陣はやはり正確な物だったので、キューちゃんが魔力を流すと発動したんだ。

 転送魔法陣はペアじゃないと役に立たないから、少し離れた所にもう一つ魔法陣を描いて試してみると、転送できたんだ。


 オレが描いてキューちゃんかルシエルが魔力を流すと発動する。オレが発動させられなかったのは残念だったけど、便利な魔法陣を描けるようになったのは嬉しかった。


 どうやって描いてるかって? 初期から持ってるハーネスだよ、オレが手と呼んでる引き棒に付いてる皮っぽい紐。

 今では30メートルまで伸ばせるようになってる。ただ、やはり力は無いので攻撃力は無い。巻き付ければ人間の一人や二人は引き寄せられるけど、攻撃には参加しないよ。だって魔物に巻き付けて引き寄せてどうすんの?


 オレがピンチになるだけじゃん。


 ハーネスが伸ばせるので簡単に地面に魔法陣が描ける。

 ナビゲーターが補正してくれてるんで定規で描いたように綺麗な魔法陣が描けている。

 ナビゲーターが更に補助してくれてるんみたいで、魔法陣を描いてるとMPが減って行くから、魔法陣を描くのにも魔力がいるんだろうね。

 それもオレの知識に入ってると思うんだけど、忘れてたみたい。そういう時にはナビゲーターがこうやって補助してくれてる。

 ナビゲーターも少し進化したんだろうね。いや、隠してただけかもしれないな。


 転送魔法陣が使えると分かると、ルシエルは魔法陣を描く練習ばかりをするようになった。「これでダンジョンに行けます。フフフフ」と呟いたのをオレは聞き逃さなかった。


 いつも言われてるんだよね、だって目の前にダンジョンがあるんだよ。

 オレは入りたくないから、「入ったら時間が掛かるから学校を休むことになるだろ」と言って、ダンジョンに入るのを許可しなかったんだ。


 この転送魔法陣をルシエルが使えるようになったら、どの階層からでもすぐに戻って来れるから、時間になったら転送で戻って来ればいいんだもんね。そこまでして入りたいもんなのかね、ダンジョンって。

 確かにオレが人間だったら、そこそこ強くなったら入りたいと思ったかもね。ラノベでも冒険者にはダンジョンは付き物だもんね。


 キューちゃんは魔法陣が描けないから、オレとセットだね。オレが描いてキューちゃんが発動する。使う時はあんまり無さそうだけどね。

 だってオレはダンジョンに入らないから。

《入る事になるでしょう》

 もうならねーよ。


 ルシエルは弓の方も大分上達してきた。魔法陣に興味を持つ前は、魔法の練習をせずに弓の練習ばっかりしてたよ。

 元々後方からの魔法攻撃だったけど、弓と魔法陣で完全に後衛職になっちゃったね。



 いつものようにダンジョン前にいると、(エリー)が報告に来た。

 沼の主とゴールデンゴブリンの確認が取れたという報告だった。

 沼の主はここから二日程の場所で、ゴールデンゴブリンは別方向で三日程。どちらにしても、蜂の魔物達の案内が必要だからハヤテに飛んで行ってもらう訳にはいかない。

 行くとなると、シルビア達を休ませなければならない。置いて行きたいけど、こいつらは絶対行くって聞かないだろうから。

 と思ってたら、あっさりと「留守番しまーす」だって。


 なんか怪しい・・・。


 でも、留守番してくれるんならオレ達だけで行けるんで、シルビア達には留守番してもらう事にして、クエスト依頼を受ける事にした。


 今回受けるのは、『××沼に棲む100メートル級の討伐&捕獲して持ち帰る。沼に巣があれば掃討する事』と『○○森に幻のゴールデンゴブリンが現れたので、討伐して持ち帰る』の二つだ。

 ××沼とか○○森っていうのは名前が無いから。人間が立ち入れない所にある沼や森だし、わざわざそんな危険な所に行く奴もいない。噂に上がってるだけで誰も本当の話だとは思ってないから適当なんだ。

 依頼を出している貴族ですら、本当にあるとは思ってないからね。


 今回は、そんなクエスト依頼を受ける。いつまでもシルビアが気にしてるし、目立つのは嫌だけど【御者】で受ければ依頼達成後に帽子を被らせれば皆忘れてくれるからね。

 だからシルビアじゃなくて【御者】で受ける方が都合がいいんだ。


 次の日、シルビア達三人に屋敷の留守番を頼んで冒険者ギルドに行き、二件のクエスト依頼を受けた。

 シルビア達には、料理を百人前渡して収納バッグに入れてもらった。昼食は学校で摂るように言って、マヨネーズやとんかつソースなど、調味料も瓶や壺に入れて渡しておいた。


 これで一週間は大丈夫だろ。収納バッグもオレが造ったやつは時間経過しないタイプだから、一週間後に出しても出来立ての料理のように美味しく頂ける。ホント便利なアイテムだよ。


 クエスト依頼の依頼書を持って行った時は、受付のミニッツさんには煩く止められたけど、渋々受付してもらった後に【御者】の帽子を被らせれば大人しくなった。


 出発したのはオレ、ハヤテ、ボルト、キューちゃん、パル、センの人外組。

 まず向かったのは『沼の主』いつものダンジョン前から北に向かって二日。沼があった。


 直径50メートル程の沼だったけど、その沼にいると案内してくれたエリーの配下のダンシングビッグビーが八の字ダンスでアピールしている。

 今回の案内にはエリーが配下のダンシングビッグビーを一匹付けてくれている。一匹で大丈夫かとも思ったけど、オレ達と一緒にいるんだし、やられてしまう事は無いだろうね。

 体長50センチ程度の大きさだけど、凄く素早いから危なくなったら逃げてくれるだろう。


さてと

「ボルト、この沼にいるらしいんだけど、どうやって調べよう」

『倒してしまえばいいのではないでしょうか』

 うん、確かにそうなんだけど、相手がどんな奴なのか、どこに潜んでいるのかも分からなければやっつけられないじゃないか。


「やっつけるってどうやってだよ。相手の場所も分からないのにさ」

『誘い出せばいいのではないでしょうか』

「誘い出せるの?」

『御意』

「じゃあ、誘い出して皆でやっつけようか」

『御意』

「沼の主は持って帰らないといけないから、できる限り粉々にしないでよ。後は別に殲滅でいいみたいだけどね」

『では』


「ほぉ、殲滅でごさるか。お館様、某にお任せください」

「いや、ここは自分の番でしょ」

キュキュ『ボクの番~』

「いやいや、うちに任せて~』


『むむ? ここは早い者勝ちか。主殿、殲滅で宜しいのですな』

「うん主だけ持って帰れればそれでいいよ」

『御意』


 ボルトが影から出て来て沼の前に立った。


グワラグワラドカーン!! バリバリバリー!!


 巨大な稲妻が沼に落ちた。

 沼の半分ぐらいはある大きな雷の柱が沼に突き刺さった。


 プッカ~~

 巨大なヘビみたいな魔物が浮かんで来た。


ーー魔物の死骸


「こいつか? こいつが主?」

 ダンシングビッグビーが超高速八の字ダンスで同意する。ダンシングビッグビーもボルトの雷魔法に驚いて、いつも以上の速さで飛び回っている。


 え~と・・・・確か誘い出して皆でやっつける。だったよね? これってもう終わり?


「キューちゃん! お主、回復魔法が使えたであろう。さっさと此奴を回復せぬか! 今から某が此奴を倒す所をお館様にお見せするのだ」

 センがキューちゃんに浮かんで来た魔物を回復しろって言ってるけど、もう死んじゃってるから無理だねー。さすがにキューちゃんでも蘇生はできないからね。


「えーと・・・・収納していい?」

「お待ち下さい! 今から某が格好いいところをお見せしますので」

「もう死んじゃってるから無理たね」

 ガックリと項垂れるセン。

 今のうちだね。

 さっさと収納。

 長さは百メートルどころではなかった。二百メートルは超えてるんじゃないだろうか。この沼にどうやって棲んでたんだ? 

 どう見ても沼より魔物の方がデカいんだけど。この沼って小さく見えて実は凄く深いとか? 底の方に行くと広がってるとか?


 沼に入る気もないからもういいんだけどね。

 他にも大量の魚や魔物が浮かんでたので収納。

 淡水魚ってあんまり好きじゃないんだよね、オレが食う訳じゃないけど、何かの素材になるかもしれないから収納はするけどね。


 先に皆の料理を出して、食べてる間に収納してるんだけど、収納してもしても下からドンドン浮かび上がってくる。

 どんだけいたの? ってこの沼どんだけ広いんだよ。

 ボルトー、お前の雷、威力ありすぎ~


微修正しました。

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