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第69話 ユグドラシル

 目の前でバテバテでくたびれてるお爺さん妖精。


 ビービージョージョ:LV35って出てる。妖精の中では一番レベルが高いけど、パルには負けるね。妖精だし。パルは名付けの時に進化して精霊ってなってたよな、身体の大きさは変わらなかったけどね。

 でも、妖精が何かを倒してレベルを上げるって中々無い事だと思う。それでLV35まで行ったんなら、このお爺さんも大したもんだと思うよ。弱いけどね。


「それで、このお爺さんは何で出て来たんだろ。勇敢だとは思うけど、無謀なだけだよな」

「そうですね、確かに勇敢で無謀なお爺さんです。が、ご主人様の進路を妨げた罪は見逃す訳にはいきません。私が処分致しましょう」

 ルシエル・・・こういう時はイキイキしてるよね。

「そういう事ならわたしに任せるのニャ」

ライリィも乗って来なくてもいいから。

キュキュ『ボクもー』

 キューちゃんが行くと妖精が滅んでしまうって。


 シュランッ!


 おーい、シルビアは何で剣を出したんだ? ミランダリィさんはワイン樽? 今から剣劇するわけじゃないんだけど。


(おさ)! 大丈夫ですか!」

 ポポーポさんが、お爺さんの元に飛んで来た。

 いつの間にか皆も戦闘体勢を解除している。たぶんノリでフリをしてる分もあるよね。それを世間では悪のりって言うんだよ、もうそういうのは辞めてほしいんだけどね。


 オサ・・・(おさ)ね。たぶんそうだとは思ったけど、このお爺さんがパルのお爺さんなんだ。

 じゃあ、この人に話をすればいいのかな?


「ポポーポさん、その人が(おさ)なの?」

(おさ)! (おさ)! 大丈夫ですか。気をしっかり持ってください!」

 ダメだ、ポポーポさんも聞いちゃいないよ。

 お爺さんも「堪忍や、堪忍やで、ホンマ堪忍や・・・・」ってずっと呟いている。心が砕け散ったようだ。

 オレ達を無視しないで使者でも出せば良かったのに。パルは故郷に帰った方がいいとも半分は思ってたから、ちゃんと説明をしてくれたらこんな事にはなって無かったと思うよ。


 でも、このままじゃ話にならないし、何か気付け薬のようなものは無いかな? 辛いのを食べたり、アンモニア臭やハッカを嗅がせたりしたらいいんだよな。

 電気がピリっとするのも効きそうだよなぁ・・・ボルトか? いやいや、ボルトがやったら死んじゃうよ。ライリィは加減が下手そうだし、キューちゃんか? キューちゃんも中々やんちゃだからなぁ。

 あ、ミランダリィさんのワイン! これよくない?

 でも、飲んだ後、酔っぱらって話しにならない未来が見えて来た。うん、辞めとこう。


 何がいいのかなぁ、普通に回復でいいんじゃない?

「キューちゃん、そのお爺さん妖精を回復してあげてくれる?」

キュキュ『わかったー』


 特にHPが減ってたわけじゃないんだけど、キューちゃんがお爺さん妖精に回復魔法を使うとお爺さん妖精のビービージョージョの表情が柔らかくなり、周囲を見る余裕もできてきたようだ。


 精神的疲労にも回復魔法って効いたのかな? さっきまでとは様子が違うね。もう話し掛けても大丈夫かな?


「ビービージョージョさん。妖精達の(おさ)ですよね? 話を聞いてもらえる?」

 お爺さん妖精はボルトを見ていた視線を【御者】に移して1つ大きく頷いた。


「結界を壊して来たから説得力は無いかもしれないけど、オレ達に敵意は無いんだよ。信じてもらえる?」

 お爺さん妖精はウンウン頷いた。


「結界を壊した事は謝るよ、すみませんでした。でも、壊す以外に入って来る方法が無かったんだよ。パル・・・ディーディパルの事が気になって・・・。あいつがここに残りたいって言うんならオレ達は引き止めないんだけど、それならそれでお別れの挨拶ぐらいしたいしね。今、ディーディパルはどこにいるの?」


「・・・孫は屋敷におる」

 お爺さん妖精はようやく口を開いた。回復魔法が少しは効いたみたいだ。

「会わせてもらえない?」

「今は・・・無理や」

「なんで?」

「屋敷の特殊な部屋に放り込んどる」

 そうなんだ。パルなら閉じ込められても自分で出て来れる実力はあるのに変だと思ってたよ。念話で話し掛けても届かなかったみたいだし。


「それって監禁ってやつ?」

「・・・・・」

 お爺さん妖精は答えない。肯定したって事でいいんだろうな。


 ビキッ!


 え? 何の音? 誰も何もしてないよな?

あれ? ポポーポさんが倒れちゃった。気絶した? 屋敷の方で集結してる妖精達もなんか変だ。パタパタと倒れていってるよ。


「こっちの言い分も聞いてほしいんや。怒りを鎮めてくれへんか」

「いや、オレはなにも・・・・」

 あ、(みんな)の方か。全員すっごく怒ってるよ。もしかして殺気だけで妖精達が倒れたの?

 凄いな、これって達人の域まで行ってるんじゃない? 殺気だけで相手を倒すって・・・。

 全員で殺気を放ったら、弱い相手だとこうなるのね。覚えとこ。


「んー、怒りを鎮めてほしいんならディーディパルを連れて来てよ。(みんな)、パルを監禁したって事に怒ってるんだ。早く解放してやってくれない?」

「そう言われても、この状態やと・・・」

 お爺さん妖精は周りを見て、全員が気絶してるから行ってくれる者がいないと言いたそうだ。


イラッ!

「『お前が行けばいいんだろ! 誰のせいでこうなってると思ってるんだ! お前本当に(おさ)か? 責任の取り方ってやつを教えてやろうか? すぐに連れて来るのか、それとも責任を取るのかさっさと選べ!』」


 なぜこうなってるかって・・・それはオレ達が勝手に入って来たからです。それは分かってるからさっきは謝ったのに。でも、その原因を作ったのは間違いなくこのお爺さんだろ? こいつを見てるとイライラしてくるよ。

 だいたいオレだって怒ってるんだよ。パルを監禁って・・・・パルは奴隷屋で監禁されてたんだ。辛い思いをしてたんだ。それを身内であるお爺さんがやってどうするんだ。


「『さっさと連れて来い!!』」

「はいー!」

 お爺さん妖精は大急ぎで屋敷に飛んで行った。


 【御者】は話せるようになってるとはいえ、表情も豊かではないし話せるようになったとはいえ怒鳴る事もできない。さっきのオレの怒りの声は『念話』と合わせての『声』だったみたいだ。

 怒鳴ってて違和感があったので冷静に自分の事を分析できたよ。目の前で【御者】が普通のトーンで話してるんだもん、変な感じだったよ。



「ご主人様ー!」

 少し待ったらパルが屋敷から勢いよく飛び出して来た。どこも怪我はしていないようだ。

 パルはオレの周りを飛び回り、【御者】に抱きついている。だからそれはオレじゃないんだけどなぁ。横でルシエルがムスっとしてる、ライリィも何か変だ。

 「【瞬歩】!」

 ライリィが【瞬歩】を使ってパルに一瞬で詰め寄り、パルを鷲掴みにした。

「ちょっと抱きつきすぎなのニャ」

 ルシエルがウンウンしてる。


 別にいいんじゃないの? それ【御者】だし。【瞬歩】を使うほどの物でも無いと思いますが・・・・


 遅れてお爺さん妖精も出て来た。倒れた妖精達も徐々に復活してるようだ。ポポーポさんも今気が付いたみたいだ。


「それで、パル。お前、どうすんの? 残らないといけないの?」

「んーーーー!」

 パルはまだライリィに握られていた。

 慌ててライリィが離すと解放されたパルがライリィに文句を言っている。


 そういうのは後でいいから、先に話をしようよ。


「お嬢は、この集落に無くてはならない人です。この集落から出て行く事なんて考えられません」

 ポポーポさんが黙ってられずに口を挟んだ。


「無くてはならない人ってどういう事? 跡取りだから?」

「もちろんそれもありますが、お嬢がいないと(おさ)が仕事になりません。もうボケてしまったのではないかと思う程です」

 孫がいなくなったんだから、そうなるのかもね。でも、妖精に仕事ってあるの?


「オレはどっちでもいいんだよ。元々ある程度強くなったら帰してやろうと思ってたし。それはそっちで話をしてよ。ただし、監禁は無しだよ。今度監禁したら、もううちの連中を止めないからね」

 ポポーポさんはすぐに気絶したから何の事か分からない顔してるけど、(おさ)のお爺さん妖精は青い顔してコクコクコクコクと小刻みに高速で頷いている。

 これなら大丈夫だろうね。



『主殿、話しはもう終わりましたか』

『うん、後はあっちで話し合うでしょ。身内の話だからオレ達は口を挟まない方がいいと思うし』

『では、実を頂きに参りましょう』


 あっ! そうだね。そういう目的でここに来たんだよ。忘れてたね。

「ビービージョージョさん、ユグドラシルの実って貰ってもいいの?」

 ここまで力の差があったら断れないと思うけど、一応ね。オレ達は略奪者じゃないんだから。


「ホンマは試練を達成したもんだけが食べるのを許されるんやけど、試練っちゅうのは力を示すためのもんやからな。これだけの力を見せてもろたら断る理由はありまへんわ。どうぞお好きに食べて行きなはれ」

「ありがとう。それと気になってたんだけど、ビービージョージョさんとパルの話し方だけ違うのはなんで?」

「ここの(おさ)である証みないなもんや。この集落を創った精霊女王様と同じ話し方なんや」

 精霊女王が関西弁? 違和感が半端ないね。会いたくねー。



 パルは今から話し合いだから、パルを置いてユグドラシルの前までやって来た。

 それで、実って生ってるんだよな? こんなデッカイ樹なのにどうやって採るの?


「ほぉ、面白い奴がおるのぅ。お前さんは何者じゃ?」

 ユグドラシルがしゃべった! そういえばしゃべるって言ってたっけ。

 面白い奴って誰の事? うちは(みんな)特殊だから誰の事を言ってるか分からないよ。


 ボルトは雷獣だし、キューちゃんは新種だろ、ハヤテも他では見た事無いし、ライリィは雷獣との確執があるかもしれない存在だし、ルシエルは天人と魔人のハーフだし、シルビアは勇者の子。

 全員、面白い奴って言われてもおかしくないよな。


『面白い奴とは失礼な奴だ。我が少し(しつけ)てやろう』

「お主では無いわい、そこの馬車の事を言っておるのじゃ。儂は戦いは苦手じゃからお主の躾は遠慮願いたいのぅ」

 面白い奴という言葉に反応したボルトの念話を聞き取ったユグドラシルがオレを指名して来た。


 オレ? 分かるんだ。これで二回目だな、オレの事を分かってくれたのって。シルビアを連れて来たバーゲスト以来だよ。


『オレが分かるの?』

『ああ、勿論だとも。長生きをしてると色んな奴に出会うからのぅ。しかし、お前さんみたいな奴は初めてじゃよ。フォッホッホッホ』

 ユグドラシルがなんか上機嫌だ。

 でも、ボルトが毛を逆立てて雷を纏いだした。


『たかが樹の分際で、我が主を面白い奴だと? 消し炭にしてくれるわ!』

 バチバチバチ

『ボルト! ちょっと待って。さっきのは別に馬鹿にされた訳じゃないから。攻撃しなくていいから』


 なんとかボルトに攻撃を中止してもらい、ユグドラシルと話をする事になった。

 ボルトの後では皆、武器を構えていた。

 うちの連中って、そこまで武闘派だっけ? 違うよね?

 ホント油断できなくなってきたよ。


『フォッホッホ、お前さんの従者は中々面白い連中じゃの。今日は実でも食いに来たのかの?』

 従者っていうのも分かるんだ。しかも何か余裕だよね、攻撃されても対応できそうな雰囲気だよ。


『実ならほれ』

 そう言ってユグドラシルが少し震えると実が沢山落ちてきた。

『一個食うても二個食うても効果は同じじゃからな。余った実は持って行けばええ』


 この中で食べた事があるのはハヤテだけだから、皆一個ずつ食べた。余った分はオレが収納。何かの調合で使えるかもしれないしね。


『それよりもお前さんには面白い話があるんじゃがのぅ』

 まだ皆は食べてるところだから、話を聞いてみようか。

『話って?』

『お前さん、儂の試練を受けんか』

 なに? オレが試練を受けんの? どういう事?

 オレが試練を受けたら何かいい事があるのか? 人間になれるとか・・・・

 でも、攻撃力無しのオレに受けられる試練ってあるのかな?

 まずは話を聞いてからだね。


ちょっと抜けてましたので足したました。

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