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第68話 集落突入

 パルが戻って来ないけど、事情が分からないのでどうする事も出来ずに結界の外でずっと待っていた。


「馬車さん、どうするの?」

「うーん、事情が分からないからね。待つしかないけど・・・パルがどうなったかだけでも知りたいよね」


 小屋での商談は終わったようで、商人達も見張りに一人だけ置いて皆小屋の中に入っている。今日はこの小屋で一泊するようだ。


「明日になれば、また妖精のポポーポさん達が来るだろうから、その時に事情を聞いてみるしかないね。勝手に入る訳にもいかないしさ」

 魔物が入れないだけで、人間は入れるようなんだ。

 試しにシルビアが入ってみたら入れたから。ライリィとルシエルは微妙だった。入れるんだけど、苦痛に顔を歪ませていたから。

 ライリィもルシエルもハーフだからね。ただ、ルシエルは何か閃いたみたいで、何度か結界を往復しているうちにスムーズに通れるようになってしまった。

 結界を解読し、自分でも結界を発動し、触れた所だけ結界同士を融合させるようにして徐々に侵食して行く感じって言われたけど、意味不明です。


 夕食時になり、また商人と『カバ団』達がやってきたので、金貨一枚で腹いっぱい提供してあげた。七人で四十五人前、食い過ぎだ。

 うちの連中はいつも通りボルトが十人前、ハヤテが五人前、キューちゃんが三人前。

 シルビアとライリィは二人前でミランダリィさんが一人前と自前のワイン。意外にもルシエルは三人前食べる。皆、育ち盛りの年齢だからね、ドンドン食べればいいよ。



 夕食が終わるとミランダリィさんがルシエルの弓を試し射ちさせて欲しいと言うのでルシエルが『黒弓・(またたき)』を貸してあげた。

 攻撃力1800の弓だからミランダリィさんは弦を半分も引くことができなかった。が、その状態から放たれた矢でも、相当な威力があった。

 手前の樹の太めの枝をぶち折り、そのままの勢いで次の樹に突き刺さったから。

 ルシエルも、MAXで弦を引けてた訳じゃ無く、まぁまぁ引けてたかなって感じだったから、ミランダリィさんの力からすると、その威力が出るとこまで引けただけでも上出来じゃないかな。


 続いてシルビアがチャレンジした。

 弓はあまり得意じゃないみたいで、ルシエルと同等って感じだったが、上に向かってしか射れなかった。背が足らないんだ。


 最後にライリィが挑戦。ライリィは一番最後まで弦を引ききった。

 ただ、矢は狙いとは全然違う方向に飛んで行ってしまった。

 しかし、その威力は凄まじかった。樹に大穴が開いて、次の樹も貫通し、その次の樹に深々と突き刺さった。攻撃力1800、半端ないです。

 それを見たルシエルは燃えた! ライリィが引いた所まで弦が引けるまでが最終目標になった。更にお替わりをもう一人前要求されたよ。

 その時にオレは言ってやったんだ。「弦を引くのは呼吸とタイミングだよ、力だけでは引けないよ」って。

 なんでオレはこんな事言ってしまったんだろ? 弓の事なんか何にも知らないのに。


 予想通り、その日はパルが帰って来る事は無かった。


 次の日の朝、商人たちは妖精達が持って来た荷物と、自分達が持っていた荷物を交換して帰って行った。


 荷物を持って来た妖精の中にポポーポさんがいたので、パルについての事情を聞いてみると、「もう諦めてください」とだけ言われて、ポポーポさんは結界の中に帰って行った。


 オレ達だけ結界の外に取り残された格好になってしまった。


 どうしようか。パルは跡取りだから出られない状況になってるのかなぁとは思うんだけど、このまま行くのもなんかモヤモヤするし、かといって結界を壊すのは違うだろうし。どうしたらいいんだろうね。



「唐突ですが、ここで多数決をしたいと思います」

 決めきれないので皆に聞いてみようと思う。


「なに?」「え?」「はい?」「どうしたの?」

 (みんな)が注目してくれた。

「パルが戻って来ないんだけど、どうしたらいいか決められないんだ。(みんな)も一緒に考えて」

 魔物トリオからの返事は無かった。いつもの通り、考えるのは苦手のようだ。


「3つの選択肢があると思うんだけど、どれにするか迷ってるんだよ。パルを置いて帰るか、まだ待つか、結界に入るか。結界の中に入るとしても、入れる者だけで様子を見に行くか、結界を壊して全員で入るか。なんだけど」


 多数決の結果・・・・壊す事になりました。


 帰る0、待つ0、壊す6、中立1。


 中立というのはシルビアとミランダリィさんだけで様子を見て来るという案だった。手を上げたのはもちろんミランダリィさん・・・ではなくてシルビアだった。

 ミランダリィさんは、こういう時はイケイケです。


 結界というのは、オレの張る結界もそうだけど、結界の力を上回る力で攻撃されると壊れる。

 ここの結界もボルトの攻撃力には抵抗できないだろう。


 という事で、どうせ壊すなら穏便にという事にはならないだろうし、ボルトに派手に壊してもらう事にしました。


 さぁどうぞ! ボルトさん! やっちゃってください!


 攻撃力8000のネコパンチが炸裂!


 シャッ! ドン! バリイイイィィィィンンンン!!!


 妖精の森を覆う結界が全部壊れた。

 一部だけでいいのに・・・結界ってそういう訳にも行かないのかね?

 ルシエルに頼めば良かったか、いや、今更だね。


 結界が壊れて、『妖精の森・パルパ』の全容が明らかになった。大きな樹の前に大きな池があり、その池の周りに集落ができていた。

 

 大きな樹の前には、一番大きな屋敷があった。

 大きな屋敷と言っても、人間サイズなら平屋建て程度の高さだ。たぶんあそこが(おさ)がいるんだろうね。という事はパルもあそこかな?


 結界が壊れたから妖精達は大慌てで飛び回っている。

 結構多いね、集落って言うぐらいだから少ないと思ってたけど、500匹以上はいそうだな。でも妖精って小さいから全部合わせてもボルトの背中に乗れるんじゃない?



「みんな、離れちゃダメだよ。もう喧嘩を売った事になってると思うから、どこから攻撃して来るか分からないからね」


 布陣はいつも通り。ボルトが先頭、ハヤテに引いてもらって、みんなを荷台に乗せてオレが結界を張る。何かあれば、順次対応して迎撃していく。

 戦いたくは無いけど、もうやっちゃったからね。後は相手次第かな。


 先頭をボルトが歩いてるから、妖精は全く寄り付かない。

 飛び回っていた妖精達が、どんどん一か所に集まって行く。大きな屋敷の所に集結しているようだ。

 ボルトは構わず池の周りを屋敷に向かって歩いて行く。まったく慌てない、ゆっくりと歩いて行く。

 ハヤテも同じくボルトに離れず付いて行く。


 池の水際だと建物も無かったので、妖精の家を壊さず一番大きな屋敷の前まで攻撃をされずに辿り着いた。

 攻撃的な種族だったとしても、これだけ戦力差があったらかかって来ないよね。

 オレの【ズーム】に現れる文字では、一番レベルの高い妖精でレベル20だよ。

 ボルトだけでこの集落を全滅させる事ができてしまうよ。


「申し訳ございません!! どうか怒りを鎮めてください!」

 妖精が一匹飛んで来て謝罪の言葉を叫んでいる。

 ポポーポ:LV25って文字が付いている。ポポーポは目の前の大きな屋敷から今になってようやく出てきたようだ。

 小さいからどれも同じに見えるけど、商人の相手をしていたポポーポだった。


 別に怒ってないんだけど、結界を壊して雷獣が向かって来たらそう見えるよな。


「ポポーポさん、別に誰も怒って無いよ。放置されてて事情が分からないし、入って来る手段も無いから結界を壊しただけだよ」

「壊しただけって・・・・」

 集落全体を覆っていた結界を、壊しただけって言われたポポーポが言葉を失っている。


「オレ達はパルがどうなったか知りたいだけなんだ。ここに残るんならそれでもいいんだけど、状況が全くわからないからね。それでパルは?」

「・・・・パルとはお嬢の事でしょうか」

 あ、オレ達がパルって言ってるけど、ニックネームだったよ。

「そう、そのお嬢。ディーディパルの事」

「お嬢は・・・・」

 結界の外で事情説明してくれなかったように、今も言い難そうにしてるね。


「言ってくれないから不本意だったけど結界を壊したんだよ。まだ言ってくれないの?」

「・・・・私の一存では・・・」

「じゃあ、勝手に探させてもらう事になるけど・・・ボルト」

『御意』

 名前を呼ばれたボルトが更に屋敷の方へ歩み寄る。


「ちょちょちょちょちょっと待ってください!」

 ポポーポの言葉を聞いてもボルトは歩みを辞めない。


「待てやー!!」

 屋敷から大きな声を上げながらお爺さん妖精が出て来た。

 それでもボルトには関係ない。ボルトにとってはたかが妖精、人間にとっての羽虫程度の大きさだ。何の障害にもならない。


「ままま待てっちゅーとるやろが! お、おい! 待て。待って。なぁ、お願いや、待ってくれ。待ってください、お願いします」

 強気だったお爺さん妖精が段々弱気になりながらも、ボルトの鼻を押して必死で止めている。


「ボルト、待ってあげようか」

『御意』

 ようやく止まったボルトを見て、一瞬で滝のように汗を流してクタクタになっているお爺さん妖精だった。


 こっちは『ちょっと結界が邪魔なので、アレして入ってきちゃった』程度のノリなんだけど、相手の妖精は必死だ。無駄だったみたいだけど。


 そっちがちゃんと説明してくれなかったのが悪いんだよ。だって雷獣がいるのが分かってんのに無視した訳だろ? こうなるって予想はつくよね。

 まだオレが止めてたから少し遅かったぐらいだよ。

 だいたい結界を壊したのだって、多数決の結果だしね。オレは悪くないよ。オレは投票に入ってないもん。


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