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第173話 次の国

誤字報告ありがとうございます。



 あとのもう一件の依頼は魔物の討伐依頼。

 うちの連中の得意とする所だ。


 センの家があるセーバイの町から北へ広がる農作地帯に巣食う魔物の討伐依頼。

 オレが考えてたのは魔物討伐は二の次で、センの【豊穣】で豊作にしてやろうと思ってたんだ。

 この国も色々あったし、今年も不作のようだからセンに頑張ってもらおうと思ってね。センが今までやってきた事なんだし、十年以上やって無いんだったらこの国の人達も困るだろうと思ってね。


 センの気まぐれでもあるけど、オレの従者になった事でこの国に戻って来て無いんだから、ちょっと責任も感じてるんだ。放っておいて、あの超方向音痴のセンが戻って来れたかは別の話だよ。


 魔物は体長三十センチのいなごの群れだった。相当多かったみたいだけどオレ達が見る事は無かった。


 昨夜、張り切って出て行ったピピット達が、結局役立たずで終わってしまったため、オレ達の依頼を知って先に討伐を完了させてくれたみたいだ。

 まだテンションの低いセンに「家を作ってやるから」と言って奮い立たせてユニークスキル【豊穣】を使ってもらうと、農作地帯が一気に豊作になり、どれもこれもいつでも収穫できるまで実った。

 稲穂・麦穂は頭を垂れるほど実っているし、青果も瑞々しい実を実らせている。



「さ、この国はブレインが手を回してるようで旅を楽しむ事ができないようだし、次の国に行くか」

 もうどの国に行っても同じような気がするんだけど、他は内情までは知らないからね。気分的なものかもしれないけど、ここよりはいいと思う。


「それはもちろんわらわのランバルダル公国であろうの」

 別にクレオの所って訳じゃないだろうけど。

「どっちから回るかに寄るんだけど、このまま南下して行くと海沿いにぐるっと回るから迷う事もないんだけど、一度ワンワード王国を抜けてキュジャリング王国で前に乗った渡し船で内海を渡って南下する方が楽しめそうな気がするんだけどな」

 砂漠もあるみたいだし、今までと違った所に行ってみたいよな。


「それはならん! 他国を通ると寄り道が増えるではないか。このまま南下するのじゃ」

「それなら渡し船で渡った所の近くに転送魔法陣を作ってたから、そこまで転移して、その後南下すればいいかな」

「ふむ、それなら寄り道は無さそうじゃ。それでよいぞ」

「じゃあ、そうしようか…」


「お館様‼ しばし待たれい!」

 オレとクレオの会話にセンが割って入った。


「ど、どうしたのセン」

「某の家の件はどうなったのでござろう。もしやお忘れではあるまいか」


 あ。


「い、嫌だなぁ、そんなの忘れるはずが無いじゃないか。今から建築屋さんに頼んで、それから転移しようと思ってたんだよ」

「建築屋でゴザルか、否! 建築屋は結構でゴザル。メイドに建ててもらうでゴザル」

 ゴザルゴザルって、あの近代建築はダメだよ。ファンタジーじゃないもん。


「あれは辞めようよ。町並みが出鱈目になっちゃうよ」

「それはあのエロ市長がおる町の建物を言ってらっしゃるでゴザルか。そうではござらん、メイド達と検討した結果、某に相応しい建物を考えてくれたのでゴザル」

 またサプライズという名の悪だくみか? もう勘弁してほしいんだけど。

 ま、この町にはあまり来る事も無いだろうし、センの家だから好きにさせるか。


「わかったよ、今はメイド達も戻ってるみたいだし、頼めばいいよ。センも今はあんまり来ないんだから耐食性の高い建物にしてもらいなよ」

「タイショックでゴザルな。承知つかまつった」

 返事はいいけど、分かって無さそうだね。


 メイドはオレが呼べば来るんだったな。誰を呼ぶか、どうせ全員来ることになるんだろうから、一郎を呼んで指揮を執ってもらえばいいか。



 一郎を呼んで、事情を説明した。

 センは残って完成を見届けてから後で合流するか、このまま付いて来るか、思い悩んだ挙句、付いて来る事に決めた。

 家の方は完成した姿を見る楽しみにする事にしたようだ。


 家が建って行くのを見るのも楽しいけどね。


 余談だけど、獣王国から動けなかった時、メイド達はオレの代わりにあちこちと飛び回ってくれていた。

 メキドナの町や王都キュジャーグにはシャンプー&リンスやBASHA酒などを補充に行ってくれたり、アンエリーの所に蜜を取りに行ってくれたり、ガンちゃんに料理を持って行ってくれて長寿の水を貰って来たりと飛び回ってくれていた。

 転送魔法陣があるから、行くのは簡単なんだけど、オレが行くと話が長くなるから助かるんだよね。



 それから前言通り、港町ベイナンからガレー船で渡った港町フォッスルの近くに洞窟を作って据えた転送魔法陣まで転移してランバルダル公国を目指した。


 ワンワード王国って悪いイメージしか持って無いけど、殆ど関わり合いになった事が無いんだよね。

 初めの関わりは魔人の棲み処の山に行った時だけど、ワンワード王国内には入ったけど誰にも会って無いし、その後は……無いかな? あっ、獣人国だ。獣人国がワンワード王国領内にあったっけ。でも、誰とも会って無いし、今回も飛ばしちゃった事を思えばオレとはあまり縁の無い国なのかもな。



 港町フォッスルから少し森の中の街道を走るとすぐに砂漠が始まった。

 もうこの辺りは一度も来たことが無い場所だ。周りは殺伐とした風景だけど、なぜか心はワクワクしてる。


 砂漠を走る馬車。中々お目に掛かれない光景だけど、オレの足はほとんど砂に埋まらない。

 世間一般には車輪と呼ぶそうだけど、オレは足と呼びたいんだよ!


 ハヤテも砂地など全く苦にしてないから、いつも通りの速さで走行している。

 日差しがキツそうなので幌馬車モードになってるけど、荷台にいる仲間は快適なようだ。


 ここで上機嫌なのは三人。

 地元に戻ったクレオ。今はメイビーは内に隠れてしまってずっとクレオバージョンだ。

 一応、確認したら、メイビーがクレオに気を使ってクレオを優先して出しているそうだ。

 メイビーは優しいよなぁ。


 センも上機嫌だ。

 家ができるのを想像してるだけで楽しくなってくるらしい。

 偶に見かける魔物もセンが率先して倒している。ジッとしてられないそうだ。


 そしてボルトも上機嫌なんだ。

 ボルト以外の連中も総じて機嫌がいいんだけど、オレの機嫌がいいのとちょっと事情が違うようだ。


『主殿、もうすぐのようです』

「え?」

 なにが?


「そうなのニャ、もうすぐみたいなのニャ」

「え?」

 だからなにが?


「ご主人様の車輪が埋もれて沈んだ所らしいのですが、まだのようですね」

 どこの話をしてるの? それにルシエル、足だから。


キュキュ『あそこじゃないかな~?』

「そっすね、たぶんあそこっすね。急ぐっすよ~」

「うん、間違い無さそう。今回も馬車さんが一緒だね」

 なんか分かった。まだ分からないし分かりたくないけど、今のシルビアの言葉で分かったぞ。


 ダンジョンだろ!


 お前達全員グルか! なんで馬車なのに何度もダンジョンに入らないいけないんだよ! 却下却下! オレは行かねーぞ!


「ハヤテ、ストーップ。一旦止まって休憩しようか」

「え? は、はい。あ、いえ、無理っす、止まれないっす」

 なんだよ、その不自然な返事は! またボルトが威圧して来たのか?


「ボルト。お前、何企んでるの?」

『……』

『ボルトー!』

 【御者】だと叫べないから念話でボルトを怒鳴ってやった。

 だがボルトを怒るには少し遅かったようだ。


「ご主人様、到着したようです」

「今日もあたしが先頭なのニャ」

「うちの豪剣も黙ってへんで~」

「寄り道せずに早よぅ行きたいのじゃがのぅ」

「変な入り口」

 シスターズの言葉通り、何か変な感覚の地域に入ったようだ。

 さっきまでと違って、オレの足が砂に埋もれて行く。


 CHISSHAAAAaaa‼


 デカい虫の魔物が砂の中から現れた。

 このシュチエーション……あれって蟻地獄なんだろうな。

 パルの地元の森で見たデスキラーと似てるけど、こっちの方が大きいし毒々しい色をしてるな。黒に茶に緑って絶対毒持ちだよな。


「某にお任せでゴザル!」

 飛び出そうとしたセンに先駆けて、黒い魔力弾が蟻地獄を打ち抜く。ボルトだ。


 いつの間にか擂り鉢状になっていて、その中央に陣取る蟻地獄の魔物を倒すと流砂にそのまま流されて、蟻地獄がいた中央まで流されると、そのまま地中に飲まれていった。


 荷台を見ると全員笑顔だ。ここが何処が知ってるみたいだ。

 オレだけが知らなかったのかよ! 皆グルか! 



 砂に埋もれた感覚は初めのが埋もれた所まで。後は圧迫感も無く浮遊感も無かった。

 未だに痛みは感じないけど、最近触れてる感覚はあるんだよ。


 地上から風景が変わると、もうダンジョンの中だった。


 もう拗ねた。オレは拗ねたぞ。

 【御者】も消したし誰が何を言って来ても答えてやらない。

 料理も出してやらないし、宿泊モードにもなってやらない。

 もう拗ねる事に決めた。


 オレが拗ねてる事などお構いなしに嬉々としてダンジョン探索をする仲間達。

 グスン、だーれもオレに声を掛けもしねーよ。


 ここのダンジョンは砂漠らしく砂漠に相応しい魔物の宝庫だった。

 トカゲ系、ヘビ系などは毒が強めの魔物で、浅階層で出て来る小型ネズミ系の魔物は結構素早かった。多くは無かったが、タランチュラのような毒蜘蛛や百足の魔物もいた。

 いずれの魔物も総じてレベルが高かった。レベルアベレージが70。


 各フロアにはスコーピオン系のフロアボスが待ち受けており、ビッグスコーピオン、ダークスコーピオン、エルダースコーピオン、ワンダースコーピオン、ツインテールスコーピオンなどがいた。


 ラスボスのダンジョンマスターはゴールデンティアマト。

 下半身に三つ首の蛇なのか竜なのかよく分からない頭を持ち、上半身には半身半裸の女性が付いている。

 どっちが本体か分からないが、話す事はできないようだ。

 しかも全身金色だから、エロさが感じられない奴だった。


「やっぱりなのニャ!」

「やはりご主人様と来るとゴールドモンスターの出る確率が跳ね上がります」

「うちのおかげかも~」

「ブレインの言った通りね」

「どうでもいいのじゃ」

「では、某が」

『我がやるに決まっておる』

キュキュ『ボクだよ~』

「偶には自分も行きたいっす!」


『『『ご主人様!』』』『主殿』「主様!」「お館様!」『あるじ様~』キュキュー


 なんでこんな時だけオレに聞いて来るんだよ。

 そうだ!


「オレが決めるんだな?」

 皆が肯定するので決めてやった。


「ガンちゃーん」


『『『‼』』』


 ズズ――――――――ン!


 プチッ


「? ん? おお、殿ー!」


 へっ! オレだってガンちゃんとの合体技で倒せるんだよ。ハッハー

 ボス部屋って広い所が多いけど、ここは特に広いからね。


「それはないのニャ~」

「納得いかない」

「どうでもいいのじゃ」

「さすがはご主人様です」

「また出番なしっすか」

「そらないでぇ」

キュキュ『ざんねん~』

『……』

「では某がガンキ殿を討ち倒せば帳尻が合うのでゴザル」


 思い思いの言葉を言うが、オレだって嫌味の一つぐらい態度で示したい。だってオレは拗ねてるんだから。


「殿ー! これがダンジョンマスタールームというやつかぁ。やっとじゃのぅ、いや~嬉しいのぅ」

 ガーーーハッハッハッハー


 子供のように喜ぶガンちゃんに毒気を抜かれて生温かくガンちゃんを見守る仲間達。

 宝箱回収後は、ここで食事&宿泊して地上へ戻る事にした。


 因みに宝箱から出て来たのはやっぱり鍵で『毒系魔物の鍵』(L)だった。

 明け方にダンジョンマスターが再び現れた時は、全員が我先にと攻撃したため同じ魔物かどうかも判別できなかった。金色じゃない事ぐらいしか分からなかったよ。



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