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第118話 出発の準備

 皆、ダンジョンに入ると二階にある個室を選んでいく。一応、ボルトもハヤテもキューちゃんもパルも、全員に一部屋あてがった。


 使う使わないは本人の自由だからね。


 一階層目は食堂兼皆が集まる所。

 二階層目が個室。

 三階層目が訓練場とボス部屋。


 一階層目と三階層目は大きなワンフロアで、一辺が五十メートルぐらいある正方形の空間。

 二階層目は十五部屋あって、他は通路があるぐらい。

 二階層目は他と比べて、フロアの敷地面積は小さい。


 風呂とトイレは各部屋に追加で完備した。

 後で気付いてダンジョン核で調整できた。便利なもんだね、ダンジョンって。

 調整というと、部屋も十室足したから今は二十五部屋になっている。ゴッドゴブリン達の部屋も造ったんだ。


 それで気になっていた、ゴッドゴブリンの名前について聞いたら、初めは「滅相もございません」とか「過分な扱いでございます」とか断ってたけど、オレ達が呼ぶのにも困るし、用事やピンチの時に、オレが名前を呼ぶとオレの所まで転送されると説明したら、一も二もなく食い付いてきた。


 「お役に立てるのでしたら」とまぁ魔物の癖に欲が無いことで。


 ゴッドゴブリン達は全員男。

 見た目はホント可愛らしい男の子。小学二~三年生ぐらいに見えるよ。

 名前は一郎から十郎まで適当に付けちゃったけどね。だって十人だよ? 覚える方も急には覚えきれないだろ? 結果として良かったと思ってるよ。


 名付けのSP消費で進化するってやつ。今回はSP消費がいらなかったんだ。全部ダンジョン核が賄ってくれたんだ。だからオレは名前を付けるだけで、SP消費は全く無し。

 種族的には『ゴッドゴブリン』のままだったけど、ステータス平均がググっと上がって平均1500程になった。もし、今後戦闘をする事があってレベルが上がったら、どれだけ強くなるのかと思うと、味方で良かったと安心したよ。


 まずは、王都キュジャーグへ転送魔法陣を王都の外へ設置がてら、調度品を購入の為行く事にした。

 各自、欲しいものを聞いても特に無いと言うので、初めはオレが机、椅子、ベッドを買って、各部屋の分を揃えた。食堂には、王都の食事会で見たほどでは無いが長いテーブルを三つと、それに合う椅子を三十脚買い、魔道具屋で以前購入したデカいコンロも購入した。

 タンスもいるかなぁって考えたけど、皆には収納バッグを持たせてるからね。必要無いだろう。


 窓は無いからカーテンは必要無いし、ダンジョン内は明るく設定してあるから照明もいらない。

 ただ、消せないんだよね。と思ってたら、暗闇ランプって魔道具があって、明るい部屋を暗くすることができる魔道具を見つけた。

 これはいいと思って、一つ購入し、収納したら、【錬金】の項目に出てきた。

 ただ、素材が足らないみたいだ。項目の文字が光って無いから。

 『魔石(闇)』だって。闇属性の魔石ってどんな魔物が持ってるんだろ。これから旅もするし、どっかで見つかるかもしれないね。今回はシスターズの分だけでいいか。


 でも、闇属性の魔石ってアンデット系が持ってそうだと思うんだけどな……

 と思ったら、急に項目が光った。

 またか! またナビゲーターが魔石を出し渋ってたのか! なんなんだよ、その魔石フェチは。やっぱり持ってたのかよ。


 ゴッドゴブリン達の服も無かったので、子供服を大量に購入。

 あいつらの服ってボロボロなんだもん。ゴッドって付いててもその辺はゴブリンなんだよね。


 ある程度買い揃えたし、後はメキドナの外に転送魔法陣を設置して戻ろうかなと思ってたらメイビーが「お酒を購入していただけませんか?」と言って来た。焔鳥ホムラドリの差し金としか思えないけど、メイビーに言われたのなら仕方が無い。金貨を百枚渡して好きなお酒を買うといいよと酒屋を教えてあげた。

 もちろんオレにも造れるんだけどね。ウイスキー、ブランデー、スコッチ、ウォッカ、ワイン、ビール、日本酒などなど。

 【錬金】の項目にも【料理】の項目にも、どっちにも出てるよ。たぶん両方のスキルが合わさって造れるんだろうね。だから、両方に出てるんだと思う。


 お酒には好みもあるし、今後いつまでもメイビーと一緒にいる訳じゃ無いし、オレの造った酒が気に入ったら入手するのも難しくなるだろうから、あえてこの世界の酒を買いに行かせたんだ。


 オレが造った酒を販売する事になったら銘はどうなるんだろうね。『馬車酒』とか? 『BASHA』ってラベルになったりとか? 誰も飲まねーよ。でも一回試してみようかな。


 今日の目的は買い物だったけど、ミランダリィさんの事も気にはしてたんで、冒険者ギルドで聞く事にした。皆には買い物を続けてもらって【御者】だけで行く事にした。

 冒険者ギルドに行くと、イーサン事務長が対応してくれて、サークルフォー家が今どうなってるか教えてくれた。


 屋敷の修復は、もうほとんど終わっており、長男のユーヴェルト・サークルフォーが家長として再建を図っているそうだ。他の勇者の家も同様に世代交代で子供達が頑張っているそうだ。

 ただ、前回助けたデルタフォーとスクエアフォーの三人の子供達はレベルが上がった事で、更に我儘貴族ぶりが増長しているようで、二度と会うまいと心に誓った。


「ん? アリアさん。なんでそんなとこにいるの? こっちで一緒に座ればいいじゃん」

 ギルマスの秘書のアリアさんが少し離れた所で、こちらをジッと見ていたので声をかけた。


「なぜわかる。あれから更に鍛えた。あなたがいなければ私は王都で一番」

 え? まさかオレを狙ってた?


「弟子にしろ」

 は? 何言ってんのこの人は。できる訳無いじゃん。


 この場はイーサン事務長が取り繕ってくれたので、アリアさんも諦めてくれたが、また言って来そうだな。

 その後は、シャンプー&リンスの売れ行きや、ダンジョンの転送魔法陣の使用頻度が好調な事を教えてもらって、シャンプー&リンスの補充と、更に増設されたタンクにもリンスを満タンにした。どうやら当初の予想通りシャンプーよりリンスが多く売れるそうだ。


 それとさっき思いついた酒。ウィスキーとブランデーとワインをそれぞれ瓶に入れ、「これも試してみてください」と試飲用に渡しておいた。

 こういうのって商業ギルドのような気がするけど、今更開拓する気も無いし、イーサン事務長も少し飲んでみて目の色が変わったから自分達でやるだろう。

 また、独占契約書を出しかけたもん。オレには通用しないからね、その契約書。残念だけど。グスン


 冒険者ギルドを出ると皆と合流し、町の外からメキドナの屋敷の庭に描いておいた魔法陣に転移した。

 ミランダリィさんには会いたかったんだけどね。シスターズ達も会いたいと思ってるだろうけど、あの勇者の子がいる屋敷には行きたくないからね。また今度会う機会があれば馬車ダンジョンにお招きしてあげよう。


 メキドナでも冒険者ギルドに寄り、アーサー事務長を呼んでもらった。

 でも、出て来たのは秘書のマリーブラさんだった。


 アーサー事務長も来たんだよ、でもマリーブラさんに弾き飛ばされちゃって、マリーブラさんの後から来る事になってしまったみたい。

 マリーブラさんが慌ててる理由はシャンプー&リンスの在庫が切れそうだから。こっちも売れ行きは順調なんだね。

 メキドナでも王都ほどじゃないけど、リンスの方がよく売れるようで、リンスを多めに補充しておいた。こっちもタンクを増設していたよ。


 オレとしても有難い話なんだけどね。だって材料費はタダ、販売はやってくれる、利益によってライリィとルシエルにお金が入る、使ってる人も喜んでくれる。いい事だらけだよ。独占販売だけど、この商売で打撃を受ける業者もいないだろうしね。


 メキドナでの用事も終わり、山頂の馬車ダンジョンに戻った。もう馬車ダンジョンでいいよ、その方が分かりやすいんだろ? 皆も「馬車さんのダンジョン」だとか「ご主人様のダンジョン」「お館様のダンジョン」とか色々言い出したから馬車ダンジョンで統一するよ。


 ダンジョンの一階層目の邪魔にならない所に転送魔法陣を描いておいたから、そこに戻って来ると一郎が出迎えてくれた。一郎ってゴッドゴブリンの名前ね。

 この一郎が代表して話してくれる事が多かったから、そのままリーダーに任命してやったよ。そしたら他の奴らより、少し強くなって【統率】ってスキルが付いた。

 名前もゴッドゴブリンリーダーに変わってたね。


 買ってきた服をそれぞれ収納バッグに入れて渡してやったら感激して泣くやつが続出。

 今までどんな環境で育って来たんだか。あ、生まれたばっかりか、それにしちゃ色んな知識を持ってるね。

 その辺りは一郎が教えてくれた。一郎に聞いたところによると、ダンジョン核の知識を共有できたらしく、人間の知識も持っているそうだ。なぜダンジョンが人間の知識を持ってるかというと、ダンジョンに吸収された人間の知識もダンジョンが吸収するのだそうだ。


 ダンジョンも生きてるって事になるんだね。

 ダンジョンは本能のままに魔物や人間を誘き寄せ、殺して吸収するのが普通らしい。食虫植物みたいなもんかな? 人間を吸収して知恵を付ける事で罠や宝箱を設置するようになる。それによって更に多くの人間や魔物を誘き寄せるそうだが、町中にあるダンジョンって魔物を誘き寄せられないよね。その場合の事も教えてくれた。


 元々魔石は魔物の体内で生成されるもので、魔素を吸ってれば勝手に魔物が作るものだし、魔素にしたって、ダンジョンは生きてるだけで放出するものだから、魔物を倒して取られる魔石ってダンジョンにとっては何のダメージも無いらしい。


 やっぱり植物の光合成に似てるね。何を魔素に変換するんだろうね。


 それよりも魔物本体を取られる方がダメージが大きいので、さっさと吸収するみたいだ。


 そんな植物みたいなダンジョンだから普通は本能のままに人間を襲う魔物が生まれるんだけど、今回はオレのSPを吸収した事が大きく影響されてるようで、ゴッドゴブリン達がここまで知恵を付けている事に繋がったみたいだ。


 うーん、難しいけど、なんとなく分かったよ。

 で、こいつらは従者=奴隷って考えだったのかな? 普通はダンジョンにいいように使われるだけの存在なんだろうからね。

 これからは奴隷じゃ無くて召使いって感じでやってくれるといいんだけどね。一郎が執事って立場になってさ。

 見た目は子供だけど、優秀だし従順だからすぐに慣れてくれそうな気がするよ。その話もしておいたよ。



 さて、次の予定だね。

 エルフの里に行くんだよな。

 飯でも食いながら、皆と話そうかな。


 一階層に皆で集まって食事をする時に聞いてみた。

 もちろん料理はオレが出した。

 一郎達も一緒に座れと言ったが、それだけは聞き入れてくれなかった。「僕達は召使いですから」とかたくなに同席での食事を断られた。服も半ズボンの子供用スーツみたいなのを着てる。貴族の子供用であったね、そんなの。それをチョイスしたんだ、七五三か小学校の入学式の子供みたいだよ。あ、一人称は『僕』にしてもらった。見た目が男の子だから『私』とか『我』って言われると違和感があったからね。


 ボルトに助け船を求めたら『好きにさせてやれば宜しかろう』だってさ。人外組のリーダーなんだから、もっと言ってくれればいいのに。

 ま、あとで一郎達だけで食べてくれてもいいか。オレは二度手間なんだけどね。


 だって、一郎達は立ってるだけで何もする事が無いんだよ。

 料理はオレが出すし、片付けもオレかルシエルが【クリーン】を使ってその後収納。ボルト達の食べこぼしはダンジョンが吸収。

 ホント立ってるだけなんだ。それなら一緒に食ってくれた方が助かるんだけどね。


 だから【クリーン】だけは積極的に覚えてくれたよ。



 それで、エルフの里には明後日に出発する事にした。

 場所もだいたい分かってるし、近くまで行けばメイビーが案内してくれるって約束してくれたから、すぐに見つける事も出来ると思う。


 明日はシルビアを中心にシスターズはジョンボルバードと遊ぶ予定らしい。十体以上いるからね、ガンちゃんも雛からここまでよく育ててくれたよね。


 ボルトからはゴッドゴブリン達のレベリングの提案があったからオレもそれに付き合う事になると思う。人外組は東の森のダンジョン前だね。あそこに行くのも久し振りな気がするよ、この馬車ダンジョンからは近いんだけどね。だって、ガンちゃんのいる山頂からはすぐ下に見えるもん。


 それならと、ゴッドゴブリン達の為に装備を造ってやった。シスターズとは同じチームだけど、グループが違うと分かるように、柄は同じで色違いにするため、少し防御力は落ちるけど地龍の皮で造ってやった。初めにシルビアが来てたやつと同じレザーアーマーだ。

 いちいち泣かなくていいからね。


 明日は各自予定も決まったし、明後日はエルフの里に行ってメイビーとお別れだな。

 その後、エイベーン王国に行って北から大陸を回る予定だ。

 メイビーってハーベレイ・インダスタンスの意思を継ぐって言ってたけど、女王にでもなるのかな?

 それはエルフたちの事だからオレには関係ないね。



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